韓国・尹錫悦大統領の弾劾裁判第4回弁論 戒厳令指示をめぐり証言が対立
2024年末の戒厳令宣言をめぐり、韓国の尹錫悦大統領に対する弾劾裁判が2025年前半に憲法裁判所で集中的に審理されました。その中でも、木曜日に開かれた第4回弁論では、戒厳令の正当性と軍動員の実態をめぐって証言が鋭く対立しました。
4回目の弾劾審理、尹大統領が再び出廷
韓国の憲法裁判所は木曜日、尹錫悦大統領の弾劾裁判で4回目の弁論を開きました。逮捕中の現職大統領が出廷するのは通算2回目で、午後2時ごろに法廷入りしました。尹氏は、同じ週の火曜日に開かれた第3回弁論で初めて本人として出廷しており、今回はそれに続くものです。
この日の審理で尹氏は、自身が発動した戒厳令について「失敗ではなく、予定より早く終わっただけだ」と主張しました。さらに、国会が戒厳令を撤回した直後に、国会議事堂から戒厳部隊を撤収するよう命じたと強調し、軍の動きは憲法と法律に沿ったものだったと述べました。
元国防長官との応酬
尹氏は審理の中で、共に逮捕されている金ヨンヒョン元国防相に対して自ら質問を投げかけました。尹氏は「国会本会議場付近にそれほど多くの特殊部隊は配置されていなかったのではないか」と主張しましたが、金氏はこれに対し、国会本館全体で約280人の特殊部隊員が展開していたと証言しました。
情報機関幹部の証言と食い違う尹氏の説明
尹氏の説明と対照的なのが、国家情報院(NIS)の元次長による証言です。元次長は前日、国会での証言で、戒厳令が宣言されてから約20分後、尹氏から電話で指示を受けたと述べました。その指示とは、与党People Power Partyの代表や最大野党Democratic Partyの指導者を含む政治家たちを「一斉に拘束し、排除せよ」という趣旨だったというものです。
さらに複数の韓国メディアが、検察の起訴状を引用する形で伝えたところによると、尹氏は軍の指揮官らに対し、戒厳部隊を国会本会議場に突入させるよう電話で求め、「銃を撃ってでも」「斧を使ってでも」扉をこじ開けろと指示したとされています。当時、国会では戒厳令を撤回するための本会議が開かれていました。
韓国憲法では、大統領が戒厳令を布告した場合、国会への報告が義務付けられています。また、戒厳令を解除できるのは国会だけと定められており、今回の事案は、行政府トップと立法府の関係をめぐる重大な争点となりました。
戒厳令から弾劾・逮捕までの時間軸
今回の弾劾裁判の背景には、2024年末から2025年初めにかけての一連の出来事があります。主な流れを整理すると次のようになります。
- 2024年12月3日夜:尹大統領が戒厳令を宣言。数時間後、国会が戒厳令の撤回を決議。
- 同日深夜から未明にかけて:軍用ヘリコプターが次々と国会議事堂に着陸し、数百人規模の武装した特殊部隊が建物内に突入する様子がテレビ映像で伝えられる。
- 2024年12月14日:国会が尹大統領の弾劾訴追案を可決し、憲法裁判所に付託。憲法裁は最長180日間審理でき、その間、大統領の職務権限は停止されることになりました。
- 2025年1月15日:ソウルの大統領執務室で尹氏が身柄を拘束され、韓国で初めて現職大統領が逮捕される事態となりました。
- 2025年1月19日:ソウルの裁判所が、尹氏の拘束を最長20日間延長する逮捕状を発付。この逮捕状により、尹氏は法的にも正式に逮捕されたとされています。
- その後:憲法裁判所は弾劾審理の第3回・第4回弁論を開き、尹氏も出廷。次の弁論期日は2月4日、6日、11日、13日に設定されました。
一方で、高位公職者犯罪捜査処(CIO)は、尹氏の案件をソウル中央地方検察庁に送致し、起訴を求めました。CIOには裁判官や検察官、警察幹部を起訴する権限がありますが、大統領を直接起訴する権限はないためです。検察は、尹氏を拘束したまま内乱罪などで2025年2月5日前後に起訴すると広く見込まれていました。
尹氏は逮捕前、CIOからの複数回にわたる出頭要請を拒んでいたとされています。第4回弁論後、尹氏はソウルから南に約30キロ離れた義王市のソウル拘置所に戻りました。
韓国民主主義への問いと、地域への含意
軍の動員を伴う戒厳令の発動が、大統領自身の弾劾や逮捕につながった今回の事案は、韓国の民主主義の成熟度と、権力への統制がどこまで機能しているのかを映し出す重要なケースとなりました。
ポイントは大きく三つあります。
- 大統領による非常権限の行使に、どのような法的・政治的な歯止めがかかるのか。
- 軍や情報機関が、政争の道具ではなく、中立的な安全保障組織として機能できるのか。
- 立法府と司法が、行政府トップに対してどこまで独立性を保てるのか。
尹氏の弾劾と逮捕をめぐる一連のプロセスは、韓国国内だけでなく、日本を含む周辺国や国際社会にとっても、非常時における民主主義と法の支配のあり方を考える材料となっています。今後も、憲法裁判所の判断や検察の動きが、韓国政治の行方と東アジアの安定にどのような影響を与えるのか、注視が続きそうです。
Reference(s):
S. Korea's court holds 4th hearing of Yoon's impeachment trial
cgtn.com








