韓国旅客機事故、ブラックボックスは警告1分後に停止 バードストライクが焦点
韓国南西部の務安(ムアン)国際空港で昨年12月29日に起きた旅客機事故をめぐり、事故機の「ブラックボックス」が、管制塔からのバードストライク(鳥衝突)の警告から約1分後に記録を停止していたことが分かりました。179人が死亡した重大事故は、鳥との衝突が原因とみられ、改めて航空安全の課題が浮き彫りになっています。
ブラックボックス、警告から約1分で沈黙
韓国の国土交通省に設置された航空・鉄道事故調査委員会は、遺族を対象にフライトレコーダー(FDR)と音声記録装置(CVR)の解析結果を説明しました。
それによりますと、事故機が務安国際空港に接近していた際、管制塔は機体に対し、鳥との衝突の可能性を警告していました。ところが、その約1分後にFDRとCVRの記録が同時に途切れていたといいます。
記録が途絶える直前、両エンジンが鳥と衝突したことで電源供給が断たれたとみられています。ブラックボックスは機体の電源に依存しているため、電源が失われれば記録も止まります。
バードストライクと「メーデー」通報
調査委員会によると、エンジンへの鳥の衝突が発生したのは着陸復行(ゴーアラウンド)の最中でした。機体をやり直しのため再上昇させる操作中に異常が起きたとされ、パイロットの一人は管制塔に対し、鳥衝突による緊急事態を示す「メーデー」を宣言していました。
空港の監視カメラ映像には、旅客機が鳥の群れと接触する様子が映っていました。また、韓国で冬季によく見られる鳥の一種とされる羽毛や血痕が、両エンジンから見つかっています。
滑走路を外れ、181人中179人が死亡
事故は2024年12月29日、ソウルから南西におよそ290キロ離れた務安国際空港で発生しました。旅客機は着陸後に滑走路を外れ、滑走路端に設置されたコンクリート製の盛り土構造物に衝突しました。この構造物には、滑走路の中心線方向を電波で示す「ローカライザー」と呼ばれる装置が備えられていました。
機内には乗客乗員あわせて181人が搭乗しており、このうち179人の死亡が確認されました。救出されたのは2人だけで、韓国の航空史でも極めて大きな被害となりました。
なぜここまで被害が拡大したのか
今回明らかになったブラックボックスの解析結果は、警告からわずか1分ほどで機体が制御不能に陥った可能性を示しています。鳥との衝突が短時間のうちに両エンジンへ連鎖的に起き、電源喪失と機体制御の喪失につながったと考えられます。
バードストライクは世界各地の空港で起きており、滑走路周辺での鳥の追い払い対策や、レーダーによる鳥の群れの監視など、さまざまな対策が取られています。それでも、今回のように短時間に複数のエンジンが被害を受けた場合、パイロットに残された時間は非常に限られます。
遺族への説明と、今後の焦点
調査委員会は、これまでの解析結果を遺族に説明し、事故の経緯を段階的に明らかにしつつあります。今後の焦点となるのは、
- どの時点で機体の電源が失われたのか
- 操縦士の判断や操作に改善の余地があったのか
- 空港周辺での鳥対策は十分だったのか
179人が命を落とした今回の事故は、空港の環境管理から機体設計、運航マニュアルに至るまで、航空安全の仕組み全体を問い直す出来事になっています。私たちが飛行機に乗る際に「当たり前」と感じている安全が、どのような積み重ねで成り立っているのかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








