エジプト、パレスチナ人の強制移住を拒否 トランプ発言に警戒強める
エジプト外務省が、パレスチナ人を自国やヨルダンへ移住させるべきだとするトランプ米大統領の発言を受け、ガザなどからの強制移住を明確に拒否しました。2023年10月に始まったイスラエルとハマスの戦争から15カ月が経過する中で示されたこの姿勢は、パレスチナ人の権利と「二国家解決」の行方をめぐる議論の焦点となっています。
エジプト外務省「パレスチナ人の土地からの追放は認められない」
エジプト外務省は日曜日の声明で、パレスチナ人が自らの土地にとどまり続ける権利への「継続的な支持」を表明しました。
声明は、次のような行為を一括して拒否するとしています。
- 入植活動(ユダヤ人入植地の拡大)
- 土地の併合
- 住民の追放や移転による、土地から人を「空にする」こと
とくに、パレスチナ人を一時的・長期的を問わず土地から引き離すことや、移住を促したり強要したりすることについて、「譲ることのできない権利の侵害」だと強い表現で批判しました。
トランプ米大統領の「ガザを一掃」発言とは
こうしたエジプト側の反応のきっかけとなったのが、トランプ米大統領の最新の発言です。戦争開始から15カ月が経過した段階で、トランプ氏はガザについて「demolition site(解体現場のような場所)」だと表現しました。
そのうえで、ガザ地区の住民について「ガザをclean out(掃除する、一掃する)したい。エジプトに人々を受け入れてほしいし、ヨルダンにも受け入れてほしい」と述べ、ガザの人々をエジプトやヨルダンへ移動させる案に言及しました。
これに対し、エジプトとヨルダンは、2023年10月の戦争開始当初から、パレスチナ人をそれぞれの領土に移す構想に繰り返し警戒感を示してきました。エジプト側の声明は、この懸念をあらためて明文化した形です。
スィーシ大統領が示す「レッドライン」と安全保障
エジプトのシーシ大統領も、ガザやヨルダン川西岸からパレスチナ人を移住させる案に対し、一貫して強い警告を発してきました。
シーシ大統領は、こうした動きが「パレスチナ国家樹立という大義そのものを根絶することを目的としている」と繰り返し指摘しています。つまり、パレスチナ人がガザやヨルダン川西岸といった自らの土地から追い出されれば、将来のパレスチナ国家の地理的な基盤が失われてしまう、という懸念です。
さらにシーシ大統領は、パレスチナ人の大規模な流入を「エジプトの国家安全保障を脅かすレッドライン(越えてはならない一線)」だと位置づけています。もしガザから大量の人々がシナイ半島側へ移動すれば、エジプト国内の治安や社会の安定に大きな影響が出かねない、という認識が背景にあるとみられます。
エジプトとヨルダンが恐れる「パレスチナ人の外への押し出し」
声明によると、エジプトとヨルダンは、戦争が始まった2023年10月以来、次のようなシナリオを警戒してきました。
- ガザの住民をエジプト側へ移す案
- ヨルダン川西岸の住民をヨルダン側へ移す案
このような「外への押し出し」がもし現実になれば、パレスチナ人の生活基盤が周辺国へ分散し、ガザや西岸に戻ることが事実上困難になるおそれがあります。エジプトとヨルダンは、それが長期的に見てパレスチナ問題をより複雑化させると懸念しているといえます。
二国家解決がなぜ焦点になるのか
エジプト外務省は今回の声明で、「二国家解決」の実現に向けた取り組みの必要性をあらためて訴えました。二国家解決とは、イスラエルと将来のパレスチナ国家という二つの国家が、それぞれの領土と統治を持ちながら共存する構想です。
エジプトは、パレスチナ人が自らの土地から引き離されれば、この二国家解決は「不可能になる」と警告しています。パレスチナ人がガザやヨルダン川西岸に居住し続けることが、将来の国家樹立の条件だと位置づけているためです。
今回の声明からは、エジプトが次の3点を特に重視していることが読み取れます。
- パレスチナ人を土地から追放しないこと
- 入植や併合など、現状を固定化・拡大する動きへの反対
- 二国家解決という枠組みを維持すること
何が問われているのか
ガザを「demolition site」と表現し、「clean out」することを提案したトランプ大統領の発言と、それに対するエジプトやヨルダンの強い警戒は、パレスチナ問題をめぐる根本的な問いを浮かび上がらせています。
それは、戦争によって荒廃した地域の住民を、国境を越えて移動させることが、短期的な安全確保や負担軽減につながるのか、それとも将来の国家樹立や地域の安定をむしろ遠ざけるのか、という問いです。
エジプト外務省の声明とシーシ大統領の発言は、「人々が土地に根ざして生きる権利」と、「長期的な政治解決としての二国家解決」という二つの視点から、その問いに明確な否定的メッセージを発しているといえます。
パレスチナ人の強制移住をめぐる議論は、中東情勢だけでなく、難民や国境、国家主権といった幅広いテーマとも結びついています。今後の交渉や各国の対応が、パレスチナ問題の出口と地域の安定にどう影響していくのか、引き続き注視が必要です。
Reference(s):
cgtn.com








