DPRK金正恩氏「戦争対応態勢を強化」朝鮮半島情勢への影響は
朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の最高指導者、金正恩氏が、朝鮮人民軍の創建77周年にあわせて「戦争対応態勢」を一段と強化する方針を打ち出しました。国営メディアの朝鮮中央通信(KCNA)が、国防省での演説内容として伝えています。
朝鮮人民軍創建77周年で「戦争対応態勢」を強調
KCNAによりますと、金正恩氏は朝鮮人民軍の創建記念日「建軍節」に関連した行事の一環として国防省を訪問し、演説を行いました。そこで金氏は、どのような安全保障状況にも対応できるよう、自国軍の「戦争対応態勢」を改善・強化する必要があると強調しました。
金氏は、朝鮮半島と周辺地域を取り巻く安全保障環境が一段と厳しくなっているとしたうえで、自国の軍事力を「実戦に即した形」で整えることが不可欠だと訴えました。
米韓日と「アジア版NATO」への強い警戒感
金正恩氏は演説の中で、米国が朝鮮半島に核戦力を継続的に展開していることや、米国主導による二国間・多国間の核戦争シミュレーション演習を強く批判しました。また、韓国と日本を巻き込んだ米韓日3カ国の軍事同盟、さらには「アジア版のNATO(北大西洋条約機構)」とも言える枠組みの形成が、朝鮮半島と北東アジアに軍事的な不均衡を招き、自国の安全保障に深刻な脅威となっていると指摘しました。
その一方でDPRKは、地域情勢の「不必要なエスカレーション(緊張の激化)」は望まないとしつつも、朝鮮半島の新たな戦争勃発を防ぎ、平和と安全を確保するために、軍事バランスを維持する「持続的な対抗措置」を取っていく考えを示しました。
核抑止力を含む「全ての抑止力」を迅速に強化
KCNAによれば、金正恩氏は演説で、核戦力を含む「全ての抑止力」を迅速に強化するための新たな計画に繰り返し言及しました。核抑止力とは、報復能力を示すことで相手に攻撃を思いとどまらせる仕組みを指します。
金氏は、自国の核戦力をさらに高度な段階へと発展させていく方針は「揺るがない政策」だと改めて強調し、核戦力の質・量の両面での強化を続ける姿勢を明確にしました。
ロシアへの「一貫した支持」を表明
今回の演説では、ウクライナ情勢をめぐる米国・欧米諸国への批判と、ロシアへの支持も大きな位置を占めました。金正恩氏は、米国と西側諸国が「ロシアに戦略的打撃を与える」という実現不可能な夢のもとで戦争の長期化を意図的に促していると非難し、その「無謀な行動」に深い懸念を示しました。
そのうえで、DPRKの軍と人民は、朝鮮民主主義人民共和国とロシアの「包括的戦略パートナーシップ条約」の精神に基づき、ロシア軍とロシアの人民が主権と安全、領土保全を守るために進める「正義の事業」を、変わることなく支持し、励ますと述べたと伝えられています。
朝鮮半島と北東アジア情勢に何を示すか
今回の金正恩氏の発言は、朝鮮半島と北東アジアの安全保障環境が、軍備増強と同盟関係の再編を通じてさらに複雑化している現状を映し出していると言えます。DPRKは、米韓日との軍事的な緊張と欧米とロシアの対立が重なるなかで、自らの立場と同盟関係をより鮮明に打ち出している形です。
発言から読み取れるポイントを整理すると、次のようになります。
- 朝鮮半島周辺での米韓日などの軍事活動を「軍事的不均衡」と捉え、それに対抗する形で自国の戦争対応態勢の強化を正当化していること
- 核戦力を含む抑止力の高度化を「揺るがない政策」と位置づけ、長期的な核・軍事力の強化路線を続ける意思を明示したこと
- ロシアへの一貫した支持を公言することで、欧米と対立する陣営との連携をアピールしていること
こうした動きは、周辺国による防衛力・同盟体制の強化をさらに後押しする可能性があり、結果として地域全体の安全保障リスクが高まる懸念もあります。一方で、危機管理のチャンネルや対話の場をいかに維持するかは、朝鮮半島の安定にとって今後も大きな課題であり続けます。
Reference(s):
cgtn.com








