トランプ大統領がバイデン側近らの安全保障クリアランスを撤回 米政治に波紋
アメリカのドナルド・トランプ大統領が、バイデン前大統領の側近を含む複数の民主党関係者の安全保障クリアランス(機密情報へのアクセス資格)を取り消したと報じられました。情報へのアクセスをめぐる「慣例」が、2025年のいま大きく揺れています。
ブリンケン氏ら民主党中枢の資格を一斉撤回
複数の米メディアの報道によると、トランプ大統領は最近の土曜日、元国務長官のアントニー・ブリンケン氏など民主党の有力者の安全保障クリアランスを取り消したと語りました。保守系タブロイド紙ニューヨーク・ポストが独占インタビューとして伝えています。
トランプ氏は同紙に対し、ブリンケン氏について「悪い人間だ。通行証を取り上げろ」と発言したとされており、この決定によりブリンケン氏は今後、機密情報や連邦政府施設へのアクセスができなくなると報じられています。
トランプ氏は、ブリンケン氏以外にも計7人の民主党関係者の資格を同様に取り消す方針を示しており、その中にはジェイク・サリバン氏の名前も含まれています。サリバン氏は、バイデン前大統領の大統領補佐官(国家安全保障担当)を務める前、2016年大統領選でトランプ氏と争ったヒラリー・クリントン氏の外交顧問でした。
さらに、標的となった人物のリストには、ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官、マンハッタン地区検事のアルビン・ブラッグ氏、そしてバイデン政権で副司法長官を務めたリサ・モナコ氏も含まれています。いずれも、過去にトランプ氏に関連する捜査や訴追に関わった人物です。
バイデン前大統領のクリアランスも剥奪
報道によれば、トランプ大統領は先週の金曜日、バイデン前大統領本人の安全保障クリアランスも取り消しました。これに伴い、バイデン氏に対して慣例的に実施されていたとされる「元大統領向けの日次情報ブリーフィング」も中止されたと伝えられています。
日次情報ブリーフィングとは、国家安全保障に関わる最新の機密情報を、要約してトップに伝える説明のことで、現職大統領だけでなく、退任後の元大統領にも一定の範囲で共有されることが「一種の礼遇」とされてきたとトランプ氏は主張しています。
安全保障クリアランスとは何か
安全保障クリアランスとは、軍や政府、関係機関が保有する機密情報にアクセスするための資格です。どのレベルの情報まで閲覧できるかは細かく区分されており、職務や役職に応じて付与されます。
- 機密情報への接触が前提となる外交・安全保障の要職には不可欠
- 退任後も、後継政権から助言を求められることを想定して資格が維持される場合がある
- 資格がなくなると、情報へのアクセスだけでなく、一部の連邦施設への立ち入りも制限される可能性がある
こうした資格を現職大統領が政治的な相手に対して一括して取り消す動きは、慣例の面でも注目を集めています。
トランプ氏が持ち出した「2021年の前例」
トランプ氏は今回の決定について、バイデン氏が2021年にとった対応を「前例」として挙げています。報道によれば、トランプ氏は、バイデン氏が就任直後の2021年、情報機関に対し、当時の前大統領であったトランプ氏本人に国家安全保障に関する詳細情報を提供しないよう指示したと主張しています。
トランプ氏は、この措置によって「元大統領に対しても国家安全保障の情報を共有する」という礼遇が覆されたとし、「その前例に倣っただけだ」との立場を示しています。
一方で、バイデン氏は2021年当時、トランプ氏の「予測不能な行動」や、敏感な情報を他者に漏らす可能性への懸念から、情報ブリーフィングへのアクセスを認めるべきではないと語っていました。今回、トランプ氏はその発言をあらためて取り上げ、自身の判断を正当化している格好です。
情報アクセスの「政治化」が進むのか
今回の一連の動きが注目されるのは、単に特定の人物の資格が取り消されたという事実だけではなく、安全保障クリアランスや情報ブリーフィングといった安全保障上の仕組みが、政争の文脈の中で語られている点にあります。
対象者の多くが、トランプ氏に対する捜査や訴追に関わってきた人物であることから、情報へのアクセス権限をめぐる決定が政治的な対立と結びつきやすい構図も見えてきます。こうした動きが続けば、
- 政権交代のたびに、前政権や政敵の情報アクセスが見直される
- 長期的な安全保障運営や外交の「連続性」が損なわれる
- 専門家や元高官が経験を生かして助言するパイプが細る
といった懸念が強まる可能性があります。
2025年のアメリカ政治を見る一つのレンズに
2025年12月の時点で、トランプ大統領は自らに厳しい姿勢を取ってきたバイデン前大統領やその側近、そして自身に対する捜査に関わった司法関係者の安全保障クリアランスを次々と取り消しています。この動きは、アメリカの情報制度そのものよりも、むしろ政治的な対立の深まりを映し出していると言えるかもしれません。
安全保障クリアランスという一見テクニカルな制度に注目してみると、アメリカ政治における「信頼」と「対立」のバランスが、いまどの方向に傾いているのかが見えてきます。今後、議会や世論の中でどのような議論が起きるのか、引き続き注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com







