鉄鋼・アルミ25%関税のツケは誰が払う?米国の缶詰・ビールに波紋
トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入に一律25%の関税を課すと発表したことで、米国では缶詰やビールなど「缶」に依存する食品・飲料の値上げ懸念が広がっています。関税は誰が支払い、その負担はどこに回るのでしょうか。
何が起きているのか:鉄鋼・アルミに一律25%関税
今回発表されたのは、原産国にかかわらず、米国に輸入される鉄鋼とアルミニウムに対して25%の関税を課すという方針です。トランプ米大統領は、今後は「例外も免除も認めない」と強調しており、特定の国や企業だけが関税を回避することは想定されていません。
トランプ氏は2018年の第1期政権時にも、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を導入していました。当時は安全保障上の懸念を理由としており、その後、カナダ、メキシコ、ブラジルなど一部の貿易相手には関税なしの輸入枠が認められました。また、多くの缶メーカーは個別の「適用除外」を勝ち取り、実際の負担を避けることができていました。
しかし、今回の新たな方針では、そうした例外が認められない可能性が高く、鉄鋼・アルミを多く使う産業ほど影響を受けやすい構図になっています。
誰がコストを負担するのか:缶詰メーカーの懸念
米国の缶メーカーを代表する業界団体、カン・マニュファクチャラーズ・インスティテュート(CMI)によると、米国内で食品用の金属缶を製造する際に使われる鉄鋼の約7割は輸入に依存しています。主な供給元はドイツ、オランダ、カナダなどです。
CMIのロバート・バッドウェイ会長は、今回の関税に例外がなければ、米国内で生産される缶詰食品の価格が上昇する可能性が高いと警告します。バッドウェイ氏は、トランプ大統領が鉄鋼産業を守ろうとしている一方で、「こうした関税は、米国人の生活を支えている缶詰食品の食料安全保障と供給の強靭性を損なう」と懸念を示しています。
関税自体は輸入企業が支払いますが、そのコストは最終的に次のような形で転嫁されやすいとみられます。
- 缶メーカーが原材料費の上昇分を製品価格に上乗せ
- 食品・飲料メーカーが仕入れ価格の上昇分を小売価格に転嫁
- 結果として、消費者が店頭でより高い缶詰・缶飲料の価格を支払う
飲料業界への影響:コカ・コーラとクラフトビール
コカ・コーラはプラスチック増加も検討
世界的な飲料メーカーであるコカ・コーラも、アルミ缶への関税強化が収益に影響しかねないとして注視しています。同社のジェームズ・クインシー最高経営責任者(CEO)は、缶のコストが上昇した場合でも、消費者が手に取りやすい価格帯を維持するため、さまざまな包装形態を組み合わせる戦略を続けると説明しています。
その一方で、もしアルミに対する関税が実際に発動すれば、米国市場ではプラスチック容器の使用割合を増やさざるを得ない可能性にも言及しました。これは価格面の対応策であると同時に、環境負荷とのバランスという新たな課題も突きつけることになります。
クラフトビール業界「小さな醸造所が代償を払う」
CNNは、鉄鋼とアルミへの関税が米国のクラフトビール業界にも打撃を与えると指摘しています。小規模な独立系醸造所で構成される業界団体、ブルワーズ・アソシエーションの2025年初めの販売データによると、クラフトビールの約75%はアルミ缶入りの製品で売上を上げています。
ビール缶の多くはカナダから輸入されており、鉄鋼全体でもカナダとメキシコが米国の輸入量の約4割を占めているとされています。こうした国からの供給に一律で高い関税がかかれば、缶そのものの価格が上昇し、特に規模の小さい醸造所ほど影響を受けやすくなります。
米国のビール業界団体ビア・インスティテュートによれば、2018年から2022年までに課されたアルミ関税によって、飲料業界全体で約17億ドルの追加コストが発生しました。今回の新たな関税が導入されれば、同様のコスト増が再び生じるとの見方も出ています。
イリノイ州のクラフトビール業界団体であるイリノイ・クラフト・ブルワーズ・ギルドは、SNS「X」で「小さなビール醸造所のオーナーと顧客がその代償を払うことになる」と警鐘を鳴らしました。大手企業より価格転嫁の余地が小さい小規模ブルワリーほど、打撃が大きくなりやすいと見られます。
2018年の関税との違い:今回は「例外なし」が焦点に
2018年に導入された関税では、一部の国に対する免除や、個別企業に対する適用除外が認められていました。そのため、名目上は高い関税率であっても、実務上の影響は限定的だった側面があります。
これに対し、今回トランプ米大統領が打ち出した方針は、原則として例外や免除を設けないというものです。カナダやメキシコ、ブラジルといった主要な貿易相手も含め、すべての輸入鉄鋼・アルミが対象となれば、2018年よりも広範囲な産業に波及する可能性があります。
特に、輸入材への依存度が高い缶メーカーやクラフトビールのようなニッチな産業は、短期間で代替調達先を見つけるのが難しく、コスト上昇をそのまま抱え込むリスクが高いといえます。
家計と環境への含意:私たちが考えるべきポイント
関税は表面的には「輸入品に課される税」ですが、実際には次のような形で私たちの生活にも影響してきます。
- 缶詰や缶飲料など、日常的に購入する商品の値上げ
- クラフトビールなど嗜好品の価格上昇や品ぞろえの変化
- アルミ缶からプラスチック容器への切り替えによる環境負荷の変化
「誰が関税を払うのか」という問いに対しては、形式上は輸入業者である一方、実質的には企業や消費者が負担を分け合う構図になりがちです。特に、価格交渉力の弱い小規模事業者や、節約志向の強い消費者ほど、影響を感じやすくなるかもしれません。
鉄鋼・アルミ関税をめぐる議論は、単なる貿易政策にとどまらず、食料安全保障や中小企業の存続、環境政策とも密接に結びついています。今後、米国の動きが世界のサプライチェーンや物価にどのような波紋を広げるのか、引き続き注視する必要がありそうです。
Reference(s):
Who pays for tariffs? Price of canned goods in U.S. could rise
cgtn.com








