米国の新関税で住宅価格が上昇へ 関税のツケを払うのは誰か
アメリカのトランプ新政権が、鉄鋼とアルミニウムの輸入に25%の関税を導入し、さらに複雑な相互関税の導入も検討していると報じられています。住宅建設に欠かせない資材のコストが上がることで、最終的に住宅価格が上昇し、負担はアメリカの住宅購入者に跳ね返るとの懸念が強まっています。
トランプ新政権の25%関税と相互関税構想
今週、アメリカ新政権は鉄鋼とアルミの輸入に25%の関税を課す方針を決めました。あわせて、貿易相手国がアメリカ製品にかけている関税に応じて税率を調整する、いわゆる相互関税の導入も検討しているとされています。
世界の投資銀行や主要産業の代表者は、こうしたトランプ政権の関税政策によって、アメリカ国内の消費者物価がほぼ確実に上昇すると指摘しています。とくに、鉄鋼やアルミは多くの産業の基礎となる素材であるため、影響は広い分野に及びます。
関税は誰が払うのか 消費者に転嫁されるコスト
形式的には、関税を支払うのは輸入業者です。しかし、企業は負担したコストを販売価格に上乗せしやすく、最終的には消費者が高い価格という形で支払うことになります。今回の関税も例外ではなく、アメリカでは住宅購入者がそのツケを払う可能性が高いとみられています。
建設資材から家庭用電化製品まで、多くの品目が国際取引に依存しているため、関税によるコスト増は住宅産業全体に波及します。鉄鋼やアルミを使った建材、住宅設備、家電製品などが軒並み値上がりすれば、新築住宅の総コストも押し上げられます。
住宅建設コストは1軒当たり最大2万9千ドル増の試算
こうした影響を、アメリカの現場はすでに数字で試算しています。ウィスコンシン州の住宅建設業者デービッド・ベルマン氏は、今回の関税措置によって、典型的な一戸建て住宅1軒あたりの建設コストが最大2万9千ドル増える可能性があると見積もっています。
そのうち、およそ1万4千ドルはカナダからの輸入材にかかる関税によるものになるといいます。ベルマン氏によれば、同氏の仕入先が扱う木材の8割はカナダ産であり、カナダはアメリカにとって最大の外国産木材の供給元となっています。
アメリカはすでに昨夏から、カナダからの木材輸入に対する関税引き上げに直面しており、今回はそこに鉄鋼やアルミの関税が重なる形になります。建築資材が多方面で値上がりすれば、住宅価格への圧力はさらに強まります。
全米ホームビルダー協会が鳴らす警鐘
全米ホームビルダー協会(NAHB)は、トランプ政権による鉄鋼とアルミの輸入関税は、政権自身が掲げる住宅の手頃な価格を実現するという政策目標に逆行すると警告しています。
NAHBは、この政策が建設コストを引き上げ、住宅の新規開発や再建・再開発の妨げになると懸念しています。その結果、アメリカの消費者は、より高い住宅価格という形で関税を負担することになると指摘し、建設資材に対する関税の免除を求めています。
現場から見える関税のリアル
ベルマン氏の試算は、関税の議論が抽象的な数字ではなく、実際の住宅購入者の家計にどう影響するかを具体的に示しています。1軒あたり2万9千ドルのコスト増は、多くの家庭にとって住宅購入のハードルを大きく引き上げる可能性があります。
建築会社にとっても、コスト増をどこまで自社で吸収し、どこから販売価格に転嫁するのかという難しい判断を迫られることになります。利幅を削れば企業の採算が悪化し、価格に転嫁すれば販売が伸び悩むリスクが高まります。
前回の貿易戦争から見える教訓 2018年の事例
今回の関税をめぐる動きは、2018年の貿易摩擦を想起させます。当時、アメリカの家電メーカー、ワールプールは鉄鋼価格の高騰により、予想外のコスト増が3億5千万ドルに達したと報告しました。
この事例は、関税が原材料価格を押し上げ、製品コスト全体を大きく増加させる可能性があることを示しています。鉄鋼やアルミを大量に使う企業ほど、その影響は避けられません。
そして、そのコスト増の多くは、最終的に消費者が支払う製品価格に組み込まれていきます。住宅分野では、建材と家電の双方でコストが上がることになり、ダブルパンチとなるおそれがあります。
日本の読者が押さえておきたい視点
今回のアメリカの関税政策は、単に一国の問題にとどまりません。住宅や家電、自動車など、生活に密接した分野において、国際的なサプライチェーンと貿易政策がどれほど価格に影響するのかを考えるきっかけになります。
日本でも、資材や部品を海外に依存する産業は少なくなく、他国の関税政策が間接的にコストに跳ね返る場合があります。アメリカの住宅市場で起きていることは、グローバル経済の連動性を映す一つの鏡と言えるでしょう。
関税は一見、海外の企業に負担を押し付ける政策のように見えますが、その影響は複雑な経路をたどって国内の消費者に返ってきます。アメリカの住宅購入者が直面するかもしれない価格上昇は、関税の本当の「支払者」が誰なのかを問い直す事例になっています。
Reference(s):
Who pays for tariffs? U.S. homebuyers likely to face higher prices
cgtn.com








