欧州、防衛費増額で一致もウクライナ和平案で分裂
欧州各国の指導者がパリで緊急会合を開き、防衛費の増額と防衛力強化にはおおむね足並みをそろえつつも、ウクライナ和平をめぐる対応では依然として割れています。米国の関与が読みにくくなるなか、ヨーロッパの安全保障は新たな局面を迎えています。
この記事のポイント
- パリで開かれた欧州首脳の緊急会合で、防衛費増額と防衛力強化で一致
- ウクライナに平和維持要員を派遣する案には賛否が分かれたまま
- ウクライナ停戦を和平合意抜きで結ぶのは危険だとの認識を共有
- 米国の支援水準に応じて、欧州としてウクライナへの安全保障上の保証を検討する構え
- トランプ米大統領がロシアとの二国間協議を主導し、欧州とウクライナは蚊帳の外からの対応を迫られている
パリ緊急会合で何が話し合われたか
会合はフランスのマクロン大統領の呼びかけで、今週月曜日にパリで開かれました。ウクライナで続く戦争と今後の和平プロセスをめぐり、欧州としてどこまで主体的に関与し、自らの防衛力を高めるべきかが主な議題となりました。
欧州の当局者によると、出席した指導者たちは、ヨーロッパの防衛能力を高めるために防衛費を増額する必要性で一致しました。また、単なる停戦合意だけを急ぎ、政治的な和平合意が伴わない形で戦闘を止めるのは危険だとの認識も共有したとされています。
そのうえで、欧州側はウクライナに対する安全保障上の保証を提供する用意があるものの、その具体的な中身や範囲は、今後の米国の支援水準を見極めながら判断していく考えだといいます。
ウクライナ停戦と平和維持要員派遣をめぐる溝
一方で、停戦後のウクライナに欧州が平和維持要員を派遣するかどうかについては、意見の一致には至っていません。会合に参加した指導者たちは、停戦合意を現場で支える手段として平和維持要員の派遣案を協議しましたが、その是非をめぐって立場は分かれたままです。
一般に、平和維持要員の派遣は、紛争当事者間の合意を監視し、違反を抑止する役割を担いますが、派遣側にとってはリスクも伴います。ウクライナのように戦線が複雑で、ロシアが関与する紛争では、どの範囲にどの国の要員を送るのか、指揮系統や任務の範囲をどう定めるのかが大きな争点となります。
欧州内には、紛争当事者に近すぎる形で関与することへの慎重論と、ウクライナの安全を確保するうえで一定の現地関与は避けられないとする積極論が併存しており、その調整は今後の大きな課題です。
米国主導のロシア協議と欧州の危機感
今回のパリ会合の背景には、米国の動きがあります。トランプ米大統領は先週、ロシアのプーチン大統領に直接電話をかけ、ウクライナでの戦争終結に向けた協議を進める考えを表明しました。この際、欧州の同盟国やウクライナ側には事前に相談がなく、突然の発表はウクライナと欧州諸国に衝撃を与えました。
トランプ政権は、まずは米国とロシアの二国間で交渉を進め、その初期協議がサウジアラビアで今週火曜日から始まる予定だとされています。欧州やウクライナは、この初動段階からは外れた位置に置かれるかたちです。
こうした状況を受け、マクロン大統領は欧州首脳をパリに招き、緊急会合を開きました。会合に先立ち、マクロン氏とトランプ氏は電話で協議しており、米ホワイトハウスの当局者は、この電話を友好的な会話だったと説明しています。
しかし、ウクライナと欧州の安全保障に直結する和平交渉の初期段階から外される可能性が浮かび上がったことで、欧州各国には「今後、米国の保護がこれまでほど当てにできないかもしれない」という現実が重くのしかかっています。
「力による平和」と欧州の選択
欧州の当局者は、匿名を条件に「われわれはトランプ大統領の掲げる『peace through strength』の考え方に賛同している」と述べています。直訳すれば「力を通じた平和」であり、軍事力や抑止力を高めることで相手に戦争を思いとどまらせ、結果として平和を維持しようとする発想です。
今回の会合で欧州が防衛費増額に踏み込んだ背景には、この発想が色濃く反映されています。一方で、単に軍事支出を増やすだけではなく、どのような形でウクライナの安全保障を支え、ロシアとの関係悪化を管理していくのかという政治的な設計も欠かせません。
また、欧州側がウクライナへの安全保障上の保証を米国の支援水準に応じて調整するとしている点は、ヨーロッパが依然として米国との同盟関係を前提に動いていることを示しています。自前の防衛力を強化しつつも、米国との関係をどう位置付け直すのかが、今後の大きなテーマとなりそうです。
日本から見る論点:同盟と自立のバランス
今回の国際ニュースは、日本にとっても他人事ではありません。日本もまた、米国との同盟を安全保障の柱としつつ、自国の防衛力をどこまで強化するのかという議論を深めているからです。
- 同盟国が突然、重要な安全保障交渉を主導し、他の当事者が事後的に知らされる状況をどう受け止めるべきか
- 防衛費増額や抑止力の強化は、どこまでが「平和のための力」と言えるのか
- 停戦と和平合意を同時に進めるために、どのような国際的なルールや枠組みが必要か
ヨーロッパの議論は、距離のある地域の出来事であると同時に、日本がこれから直面するかもしれない選択肢を先取りしているようにも見えます。ウクライナ情勢をめぐる欧州の動きを追いながら、自国の安全保障や外交のあり方を考え直すきっかけとして捉えてみてもよさそうです。
Reference(s):
Europe talks up defense spending amid Ukraine peace plan divisions
cgtn.com








