ロシア・ウクライナ紛争3年:和平の夜明けは見えるか video poster
ロシア・ウクライナ紛争の開戦から約3年。数十万規模の死傷者と数百万人の避難民を生んだ戦争について、ようやく終わりが見え始めたのではないか――そんな見方が出ています。その背景には、ロシア側の戦況と、米国の対ウクライナ政策の転換をうかがわせる動きがあります。
ロシア・ウクライナ紛争3年、いま戦場で何が起きているか
ロシア・ウクライナ紛争は、2022年2月24日に始まって以来、ロシア軍とウクライナ軍の激しい攻防が続いてきました。この3年で、紛争はウクライナ国内だけでなく、エネルギーや食料を通じて世界経済にも大きな影響を与えています。
ロシア軍は現在、東部・南部で着実に領土支配を拡大しているとされています。ロシア軍参謀本部第一副総長のセルゲイ・ルツコイ上級大将は、ドネツク州のおよそ75%に加え、ザポロジエ州とヘルソン州の一部がウクライナ軍から解放されたと説明しました。ルガンスク州では、ウクライナ側の支配地域は1%未満にまで縮小しているとされています。
一方で、戦闘の激しさも増しています。最近、ロシアは一晩で200機以上の無人機(ドローン)をウクライナに向けて発射しました。ウクライナのゼレンスキー大統領は、これを紛争開始以降で最大規模の攻撃だと批判し、同盟国に対して支援継続と結束を強く呼びかけました。
米国のスタンス転換の可能性:支援から「早期終結」重視へ?
ここにきて注目されているのが、米国の対ウクライナ政策の変化です。これまで米国は、軍事・経済支援を通じてウクライナを強く後押しする姿勢を示してきました。しかし、現在のトランプ米大統領のもとで、ウクライナの利益よりも紛争の早期終結を優先する方向へと舵を切るのではないか、という見方が広がっています。
鉱物資源をめぐる米ウクライナ取引
ウクライナと欧州の一部では、米国とウクライナの間で取り沙汰されている鉱物資源をめぐる取引に対する警戒感が強まっています。ウクライナは豊富な鉱物資源を抱えており、戦後復興や安全保障の観点からも、その扱いは極めて敏感なテーマです。
トランプ大統領が主導するとされるこの鉱物取引は、米国側の経済的利益を優先し、ウクライナの主権や交渉力を弱めるのではないかという懸念につながっています。ウクライナ側から見れば、戦後の資源やインフラが、和平交渉と引き換えのカードとして扱われるリスクがあるということになります。
ゼレンスキー批判とリヤドでの米ロ和平協議
トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領に対しても厳しい言葉を投げかけています。ゼレンスキー氏を、選挙を行わないまま権力を握り続ける存在だとして、独裁者になぞらえるような発言を行い、両者の関係は険悪さを増しています。
さらに、サウジアラビアの首都リヤドでは、ウクライナや欧州連合(EU)が参加しない形で米ロの和平協議が行われました。紛争当事者であるウクライナ抜きで、そして影響を強く受ける欧州も同席しないまま議論が進んだことに、ウクライナと欧州諸国の間には強い不信感が生まれています。
もし米国がロシアとの直接交渉を通じて、ウクライナにとって不利な条件でも早期終結を優先するのであれば、これまでの「揺るぎない支援」という構図は大きく変わることになります。
ゼレンスキー氏の「退任も辞さず」発言の意味
こうした状況の中で、ゼレンスキー大統領は記者会見で、和平のためなら自ら職を辞することもいとわないという姿勢を示しました。
ゼレンスキー氏は、ウクライナの平和のために自らの地位を差し出す覚悟があると語り、もし自分が退くことで紛争の終結が近づくのであれば、その選択肢を排除しないと明言しました。
この発言には、少なくとも二つのメッセージが読み取れます。
- 国内向けには、個人の権力維持よりも国家の平和と安全を優先する姿勢を示したもの
- 国際社会、とくに米国や欧州に対しては、ウクライナ側に妥協の意志があることを伝え、和平プロセスを加速させたいというサイン
ただし、ゼレンスキー氏が仮に退任したとしても、それだけで和平が一気に進むとは限りません。ロシアとの間でどの領土をどう扱うのか、ウクライナの安全保障をどう担保するのかなど、根本的な争点はなお残るためです。
和平の夜明けは本当に近いのか
では、ロシア・ウクライナ紛争の和平は本当に近づいているのでしょうか。
一つの現実は、戦場でロシア軍が優位に立ちつつあるという点です。ドネツク州の約75%やルガンスク州のほぼ全域など、事実上の支配が進んでいる地域について、ウクライナ側がどこまで譲歩できるかは極めて難しい問題です。
同時に、米国のスタンスが変わりつつあるとすれば、ウクライナの交渉余地は狭まる一方で、停戦や和平合意に向けた圧力は強まる可能性があります。トランプ政権のもとで、米ロ間の直接対話が加速すれば、ウクライナは自国抜きで決められた条件をのまざるを得ない局面に追い込まれる懸念もあります。
しかし、どのような形であれ、紛争が続けば被害はさらに拡大します。エネルギー供給の混乱や食料価格の高騰、欧州経済への負担など、既に世界全体が大きなコストを支払っています。戦争の長期化に疲れを見せる声が各地で強まる中、政治指導者たちは、どのラインで妥協し、どこを譲れない一線とするのか、難しい判断を迫られています。
日本と世界は何を見ていくべきか
ロシア・ウクライナ紛争は、地理的には遠い出来事に見えても、日本を含む世界の安全保障や生活と直結する国際ニュースです。今後を考えるうえで、次のポイントに注目することが重要です。
- 米国の対ウクライナ政策が、本当に紛争の早期終結を優先する方向に転換するのか
- ロシア側の軍事的優位がどこまで続き、前線地図がさらに動くのか
- ゼレンスキー大統領の進退を含め、ウクライナ国内の政治がどう変化するのか
- ウクライナや欧州を蚊帳の外に置いた形の米ロ協議が、どこまで具体的な和平案に踏み込むのか
紛争から3年が過ぎ、世界は「勝者なき消耗戦」を続けるのか、それとも不完全でも現実的な和平を選ぶのかという岐路に立っています。どのような終結の仕方であっても、そのコストと影響はウクライナだけでなく、私たち一人ひとりの生活に跳ね返ってきます。
長期化するロシア・ウクライナ紛争の行方を見つめながら、私たちはどのような和平の形を望むのか――静かに考え続けることが求められています。
Reference(s):
Russia-Ukraine conflict three years on: Is the dawn of peace in sight?
cgtn.com








