マスク氏が連邦職員に再び解雇警告 米政府内で波紋広がる
米連邦政府の公務員に対し、自らの仕事を要約して報告しなければ解雇の可能性がある――。イーロン・マスク氏が出したメール指示をめぐり、ホワイトハウスなど米政府内で対応が割れ、混乱が続いています。2025年12月8日現在、この「メール騒動」は米国の行政運営と雇用不安、そして情報セキュリティをめぐる議論に発展しつつあります。
トランプ政権の「無駄撲滅」メール、何が起きたのか
マスク氏は、ドナルド・トランプ米大統領から「政府の無駄をなくす」役割を託され、新設の政府能率省(Department of Government Efficiency、略称DOGE)の長に就任しています。同省は、連邦政府の大幅な縮小を使命としています。
マスク氏は週末、多数の連邦職員に対しメールを送り、「自分の仕事の内容を要約して報告すること」「正当化できない業務に就いていると判断された場合には解雇の対象となる」と通告しました。メールには、職員に対し期限までに返信しなければ「職を失うリスクがある」と受け取られかねない内容が含まれていたとされています。
回答期限の月曜日が近づく中で、この指示の法的根拠や、マスク氏にどこまで人事権限があるのかについて、連邦政府内で疑問の声が上がりました。
OPMが「回答は任意」と通達、ホワイトハウスも距離
トランプ政権はすでに、職員に対して「メールに回答する義務はない」と説明しており、連邦人事を所管する米人事管理局(OPM)も月曜日、各機関の人事部門に向けたメモで同様の立場を示しました。メモでは、マスク氏のメールへの返信はあくまで任意であり、回答しなかったことを理由に解雇されることはないと明記されています。
OPMは同時に、職員に対し、機密性の高い情報やセンシティブな内容、機密指定された情報をメールで共有しないよう注意を促しました。マスク氏の指示に応じようとする職員の間で、具体的な業務内容を書き込みすぎることへの懸念が広がっていたためです。
一方で、マスク氏は月曜日、自身が所有するソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」に投稿し、「このメールの要求はばかばかしいほど簡単なものだった。数語を入力して送信ボタンを押すだけだ。それすらできなかった職員が大勢おり、上司がそうするよう促したケースもある」と不満を表明しました。
さらに同氏は「大統領の裁量に基づき、彼らにはもう一度チャンスが与えられる。2回目も回答しなければ解雇になる」と述べ、解雇の可能性を改めて強調しました。ホワイトハウスはこの新たな発言について、現時点でコメントしていません。
現場は割れる:各機関のバラバラな指示
OPMが「回答は任意」と明言したにもかかわらず、各省庁や機関の現場では対応が分かれています。
- 連邦政府の建物管理などを担う総務調達庁(GSA)の幹部は、職員に対し「返信は任意だが推奨される」とメールで伝えたとされています。
- OPMの代行トップも、職員向けのメールで「箇条書きでの回答は任意だが、強く推奨する」と呼びかけました。
- 保健福祉省(HHS)は、もし回答する場合は内容を一般的なレベルにとどめ、担当している具体的な医薬品名や契約名は書かないよう指示しました。
HHSからのメールには、「あなたが書いた内容は悪意ある外国の行為者に読まれると想定して回答を作成してほしい」との警告文も添えられていたと報じられています。マスク氏の指示に従いつつも、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクを最小化しようとする現場の苦心がにじみます。
DOGE改革の余波:企業と雇用にも広がる影響
マスク氏が率いるDOGEの「政府スリム化」方針は、すでに官庁の外にも影響を与えています。連邦政府と取引する企業の中には、契約削減や支払いの遅延に直面し、従業員のレイオフ(解雇)や支払いサイトの延長に踏み切るところも出てきているとされています。
連邦政府は米経済にとって巨大な顧客であり、政府支出の変化はサプライチェーン(供給網)や地域経済に波及します。DOGEの改革は、単なる「公務員削減」にとどまらず、民間企業の雇用や投資計画にも不確実性をもたらしているといえます。
問われる「効率化」と統治のあり方
今回のメール騒動は、次のような問いを投げかけています。
- トップダウンの「効率化」指示は、どこまで現場の信頼と協力を得られるのか。
- 政治任命された個人に、どこまで人事権や評価権限を集中させてよいのか。
- デジタルツールを通じた指示や評価は、情報セキュリティとどう両立させるべきか。
日本でも、行政のデジタル化や業務見直しが進む中で、「効率化」と「説明責任」「職員の安心感」をどう両立させるかは共通の課題です。米国連邦政府で起きているこの騒動は、遠い国の出来事であると同時に、私たち自身の働き方やガバナンスを考え直す材料にもなりそうです。
2025年12月8日現在、OPMの通達とマスク氏の強硬な姿勢の間で、現場の職員や企業は揺れています。今後、トランプ大統領がどのような判断を示すのか、そしてDOGEの改革がどこまで進むのかが、米国だけでなく世界の政治・経済を注視するうえでの焦点となっていきます。
Reference(s):
Musk doubles down on federal job threat despite White House pushback
cgtn.com








