国連安保理、ウクライナ巡る米国起草決議を採択
ロシア・ウクライナ紛争を巡り、今年、危機の全面的な激化から3年を迎える中、国連安全保障理事会(安保理)は米国が起草した決議を採択しました。紛争の早期終結とロシアとウクライナの間の恒久的な平和を呼びかける内容で、国際社会の注目を集めています。
何が決まったのか:責任追及より「早期終結」と追悼を優先
今回の決議は、ロシア・ウクライナ間の戦闘の「迅速な終結」を求めるとともに、戦争で失われた多くの命を悼む趣旨を盛り込んでいます。一方で、紛争の責任を特定の当事者に帰する文言は盛り込まれておらず、ロシアを名指しで非難する表現も避けられました。
決議は、ロシアとウクライナの「恒久的な平和」の実現を求めるものであり、今後の和平プロセスの政治的な枠組みを示すものといえます。安保理決議は国際法上の拘束力を持つとされており、その文言のバランスが大きな意味を持ちます。
投票結果:中国・米国・ロシアを含む10カ国が賛成
安保理はこの米国起草の決議を、賛成10票で採択しました。賛成した中には、中国、米国、ロシアが含まれます。一方で、フランス、英国、デンマーク、ギリシャ、スロベニアの5カ国は棄権しました。
ロシアは、当初この決議案の修正を図りましたが、修正案が否決された後、最終的には賛成に回りました。その過程で、ロシアはウクライナを支持する文言を追加しようとした欧州側の試みを拒否し、欧州案に対しては拒否権を行使しています。
採決に先立ち、フランス、英国、ギリシャは、米国案の採決を2月25日午後まで延期するよう求めましたが、米国が強く反対し、そのまま採決が行われました。
欧州とロシアが求めた修正案はなぜ通らなかったのか
米国案に対しては、欧州諸国とロシアの双方から複数の修正案が提出されました。欧州側は、前文に「ウクライナの主権、独立、統一および国際的に承認された国境内での領土的一体性(領海を含む)へのコミットメントを再確認する」との文言を挿入することなど、3つの修正を提案しました。
さらに、決議本文の「ロシア連邦とウクライナの間の恒久的な平和の達成」という表現を、「国連憲章および国家の主権平等と領土的一体性の原則に従った、公正で、恒久的かつ包括的な平和の達成」という文言に差し替えることも提案しました。しかし、いずれの修正案も必要な賛成票を得られず、採択には至りませんでした。
ロシアも、紛争の「根本的な原因」に言及するなど、2つの修正案を提示しましたが、いずれも十分な支持を得られず否決されました。結果として、最終的な決議文は米国が起草した原案に近い形で採択されています。
先に否決された欧州案と安保理内のねじれ
米国案が採決される前には、欧州諸国が提出した別の動議が採決にかけられていました。この欧州案には、中国を含む6カ国が賛成し、米国を含む3カ国が反対、ロシアを含む6カ国が棄権しました。しかし、安保理で決議を採択するために必要な9票の賛成に届かず、否決されています。
その後に米国起草の決議が採択され、中国、米国、ロシアはいずれも賛成に回る一方、フランスや英国など一部の欧州諸国は棄権にとどまりました。安保理内部でも、和平を求める点では一致しつつも、どこまでウクライナ支援や主権尊重を前面に出すかで立場の違いが鮮明になった形です。
米国・ロシア・フランスの発言が示すもの
採択後、国連で米国の代理大使を務めるドロシー・シェイ氏は、この決議について「平和への道筋をつける第一歩」であり、「ウクライナ、ロシア、そして国際社会にとって平和な未来を築くために活用すべきだ」と強調しました。
ロシアのネベンジャ国連大使も、米国の姿勢に「建設的な変化」が見られたと認めつつ、この決議は「理想的ではない」が、「将来の和平への取り組みに向けた出発点だ」と述べました。
一方、フランスのド・リビエール国連大使は、フランスは「ウクライナにおける平和に全面的にコミットしている」としつつも、「求めているのは被害者の降伏ではなく、公正で、恒久的かつ包括的な平和だ」と強調しました。ここには、単に戦闘を止めるだけでなく、国連憲章や主権・領土的一体性の原則を踏まえた「公正な和平」を求める欧州側の問題意識がにじみます。
同日に国連総会が採択した別の決議
同じ日に、国連総会でもウクライナ情勢に関する議論が行われました。総会は米国案を退け、ウクライナと欧州の同盟国が提出した別の決議を採択しました。
この総会決議は、ウクライナの主権、独立、統一および領土的一体性を支持し、国連憲章に沿った「公正で、恒久的かつ包括的な平和」を求める内容です。安保理決議に比べて、ウクライナへの支持と主権尊重をより明確に打ち出した形といえます。
ただし、国連総会の決議は政治的な重みはあるものの、安保理決議のような国際法上の拘束力は持ちません。一方で、安保理決議は法的拘束力を伴う代わりに、全会一致に近い合意形成を図る必要があり、文言がより中立的・包括的になりやすいという側面があります。
問われるのは「早期終結」と「公正な和平」の両立
今回の安保理決議は、紛争の迅速な終結と恒久的な平和を掲げながらも、責任の所在やウクライナの主権尊重をめぐる表現をどう位置づけるかで各国の温度差が浮き彫りになりました。
- 戦闘を一刻も早く止めることを優先するのか
- 主権や領土的一体性の回復をどこまで和平の条件とするのか
- 「公正な和平」とは何を意味するのか
これらの問いに、単純な正解はありません。安保理と総会の二つの決議は、国際社会が模索している妥協点と緊張関係の両方を映し出しています。今後、ロシアとウクライナ、そして関係国がこの決議をどのように活用し、具体的な対話と信頼醸成のステップにつなげていけるかが問われています。
Reference(s):
UN Security Council adopts U.S.-drafted resolution on Ukraine conflict
cgtn.com








