ウクライナ安全保障で米英に温度差 トランプ氏は軍事保証より鉱物ディール優先
米国のドナルド・トランプ大統領は、ウクライナの安全保障は軍事的な同盟条約ではなく鉱物資源をめぐる経済協力が支えるべきだと強調し、英国のキア・スターマー首相が求めた米軍による安全保障の確約を事実上退けました。ウクライナ支援をめぐる米英の温度差と、西側の対ロシア戦略の行方が改めて浮き彫りになっています。
木曜の米英首脳会談で何が話し合われたか
木曜日に行われたホワイトハウスでの初の首脳会談で、スターマー首相は、ウクライナにおける和平の可能性はトランプ大統領のおかげで開けたと持ち上げながら、長期的な平和のためには米国による明確な安全保障の保証が不可欠だと訴えました。
これに対しトランプ大統領は、ウクライナとの鉱物資源を中心とした経済パートナーシップこそがキーウにとっての実質的な安全保障になると主張しました。会談の背景には、ロシアとの協議の進め方や、トランプ政権が示す欧州への関税措置をめぐる摩擦も存在しています。
トランプ氏の狙いは鉱物ディールによる安全保障
トランプ大統領は、ウクライナとの鉱物取引を柱とする経済協力について、ロシアに対する安全保障上のバックストップ、つまり最後の支えになるものだと位置づけました。
大統領は「私たちはバックストップだ。現地で仕事をし、多くの人員がウクライナに入る」と述べ、軍事的な駐留ではなく、経済的な関与と人の往来によって安全保障に寄与できるとの認識を示しました。
この発想の根底には、防衛支出や兵力投入を増やす代わりに、資源や投資を通じて同盟国を支えるという、より経済重視の安全保障観がうかがえます。
スターマー氏は軍事的保証を重視
一方のスターマー首相は、ウクライナに長期的な平和をもたらすには、米国を含む確固とした安全保障の保証が不可欠だと主張してきました。会談前には「しっかりとした米国の安全保障の保証なしに、ウクライナに持続的な平和はあり得ない」と語っていました。
会談後の共同記者会見でも、スターマー首相は「重要なのは正しい合意を得ることだ。侵略者に報いるような和平であってはならない」と述べ、ロシアへの過度な譲歩につながる拙速な和平を強く警戒しました。
この発言には、もし不十分な条件で停戦が成立した場合、欧州全体の安全がかえって不安定になりかねないという懸念がにじみます。
進む米露協議と「急ぐか、まとまらないか」
トランプ大統領は、ロシアとの協議がかなりのスピードで進んでいると説明し、比較的近いうちにまとまるか、あるいはまったくまとまらないかのどちらかだと語りました。
一見すると前向きにも聞こえる発言ですが、欧州側からすれば、合意内容次第では自らの安全保障環境が大きく変わり得るため、慎重な姿勢は崩していません。スターマー首相が「どんな合意でもよいわけではない」と釘を刺したのも、この不安の表れと言えます。
NATOと欧州の役割
安全保障をめぐる議論の中で、トランプ大統領は北大西洋条約機構、いわゆるNATOの集団防衛義務について、米国の長年のコミットメントを改めて確認しました。たとえ欧州の平和維持部隊が将来ウクライナに派遣されることになっても、米国は同盟の防衛義務を支持するとしています。
ただし大統領は、そのような展開になる可能性は高くないとの見方も示し、米軍の直接関与には慎重な姿勢をにじませました。
スターマー首相は、条件が整い欧州の他国と歩調を合わせられるのであれば、英国軍がウクライナへの安全保障提供に参加することに前向きな姿勢も見せています。欧州が自らの安全をどこまで自力で担うのか、今後の大きな論点になりそうです。
通商でも続く米英の駆け引き
今回の会談では、安全保障だけでなく米英間の通商問題もテーブルに上がりました。両国は包括的な自由貿易協定の可能性について協議しましたが、トランプ大統領は英国への関税措置をちらつかせており、交渉は簡単ではありません。
大統領は「本物の貿易協定にたどり着ければ、関税は必要なくなる可能性が高い。どうなるか見てみよう」と述べ、合意が成立しない場合には関税も選択肢だと示唆しました。
スターマー首相は、関税の脅しを思いとどまるよう説得を試みたものの、大統領は「彼はよく頑張っていた」としつつも、姿勢の大きな転換には踏み込んでいません。安全保障と通商が絡み合う形で、米英関係の駆け引きは続いています。
日本から見るウクライナと米英関係
ウクライナをめぐる米英の議論は、地理的に遠い日本にとっても無関係ではありません。資源や経済協力を安全保障の柱に据えようとする発想は、エネルギーや重要鉱物の調達を重視する各国の戦略とも重なります。
一方で、軍事的な安全保障の保証をどこまで伴わないと平和は維持できないのかという問いは、同盟国との関係や防衛力のあり方を考える上で、日本の読者にも示唆を与えるものです。
今回の米英首脳会談は、ウクライナ支援の方法をめぐり西側の中にも多様な考え方があることを映し出しました。今後のロシアとの協議やNATOの議論がどのように進んでいくのか、引き続き注視が必要です。
Reference(s):
Trump dismisses Starmer's call for U.S. military guarantees in Ukraine
cgtn.com








