フランスの核抑止力、欧州同盟国にも?マクロン氏が議論提案
フランスのマクロン大統領が、自国の核抑止力を欧州の同盟国にまで広げる可能性に初めて公に言及しました。ロシアの脅威と米国の姿勢への不安が高まるなか、ヨーロッパの安全保障のかたちが改めて問われています。
マクロン氏「欧州の同盟国の保護を議論する」
マクロン大統領は今週水曜日、国民向けのテレビ演説で、フランスの核抑止力を欧州のパートナーにどこまで提供し得るのかについて、議論を開く考えを示しました。
同大統領は「わたしたちの核抑止力は、完全で、主権的で、徹頭徹尾フランスのものだ」と強調したうえで、ドイツの次期首相に就任予定のフリードリヒ・メルツ氏の呼びかけに応じる形で、「欧州大陸にいる同盟国を、わたしたちの抑止力を通じてどのように守るかという戦略的議論を開く」と述べました。
ヨーロッパで核戦力を保有しているのは、フランスと英国の2か国のみです。これまでフランスの核戦略は、自国の「死活的利益」を守るための防御的なものと位置づけられてきましたが、その枠組みを欧州全体にまで広げるかどうかが新たな論点になりつつあります。
ドイツとNATOの将来不安が後押し
メルツ氏は、北大西洋条約機構(NATO)が6月まで現在の形を維持できるのか疑問を呈し、フランスと英国と協議して、両国の核抑止力による防護を拡大する必要性を訴えてきました。
背景には、米国の同盟国への関与に対する不透明感があります。マクロン大統領は演説のなかで、新しい米政権による国際秩序の揺さぶりに触れつつ、市民が抱く不安を理解すると語りました。そのうえで、「米国がこれからもわたしたちの側にいてくれると信じたい」としながらも、「もしそうでなくなった場合に備える必要がある」と強調しました。
ロシアの脅威とウクライナ支援
マクロン大統領はまた、「ロシアはフランスとヨーロッパにとって脅威となった」と述べ、「見ているだけで何もしないのは狂気だ」と警告しました。フランスは今後も国防費を増やし、ウクライナ支援を継続するとしています。
欧州各国は、ドナルド・トランプ米大統領がウクライナ向けの軍事支援を凍結し、欧州のNATO同盟国へのコミットメントに疑念が生じるなかで、防衛費の増額やウクライナ支援の維持に躍起になっています。先週には、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領との間で厳しいやりとりがあったとされる会談が行われ、その後、ワシントンとキーウの関係修復やウクライナ支援をめぐる欧州の外交が慌ただしく続いています。
こうしたなか、ロシアのメドベージェフ前大統領は木曜日早朝、マクロン氏の発言を冷笑するコメントを発表し、フランス側の警告を批判しました。ロシア側の強硬な発言は、欧州とロシアの緊張が続いていることを改めて印象づけています。
フランスの核抑止力とは
フランスの核抑止力は、空軍と海軍の二本柱で構成されています。ラファール戦闘機と原子力潜水艦に核兵器が搭載されており、フランス大統領の決断だけで、いつでも攻撃命令を下せる体制だとされています。
米国の非政府組織「アメリカ科学者連盟」の推計によると、米国とロシアが世界の核兵器の約88%を保有している一方で、フランスは約290発、英国は約225発の核弾頭を保有しているとみられています。規模では米露に大きく劣るものの、フランスの核戦力は依然として世界有数の抑止力であり、その一部を欧州の同盟国の安全にどう結びつけるかが議論の焦点になろうとしています。
- フランス:空軍・海軍に配備された核戦力、推定290発
- 英国:推定225発の核弾頭
- 米国・ロシア:世界の核兵器の約88%を保有
欧州防衛はどこへ向かうのか
フランスの核抑止力を欧州の同盟国にまで広げる議論は、ヨーロッパがどこまで自立した安全保障体制を構築できるのかという、より大きな問いにつながります。米国の関与に揺らぎが見えるなか、欧州が自前の抑止力と防衛力を強化すべきだという声は強まっています。
一方で、核抑止力の「欧州化」は、NATOの枠組みや、各国の安全保障政策、国内世論に大きな影響を与える可能性があります。フランスの核戦力をどの程度まで共有するのか、意思決定の仕組みをどう設計するのかなど、詰めるべき論点は少なくありません。
今後の焦点となりそうなポイントは、例えば次のようなものです。
- フランスと英国が、核抑止力の役割をどこまで欧州全体に広げるのか
- NATOと欧州独自の防衛構想をどのように調整していくのか
- ロシアとの緊張を高めずに抑止力を強化する方策をどう見いだすか
マクロン大統領が呼びかけた「戦略的議論」は、今後数か月から数年にわたり、欧州の政治や世論、そして日々の安全保障政策に大きな影響を与えていく可能性があります。ロシアの脅威と米国の姿勢変化という二つの現実を前に、ヨーロッパがどのような選択をするのかが問われています。
Reference(s):
Macron: France to consider extending nuclear shield to European allies
cgtn.com








