トランプ米大統領、自動車関税を1カ月猶予 カナダ・メキシコと緊張続く
米国のドナルド・トランプ大統領は、カナダとメキシコを対象とした新たな関税のうち、自動車について1カ月間の猶予措置を設けると表明しました。米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)に基づく北米自動車産業はひとまず安堵しましたが、カナダのジャスティン・トルドー首相との協議では打開策が見えず、北米の通商関係はなお緊張した状態が続いています。
自動車は1カ月猶予 ビッグ3の要請受けて判断
猶予措置は、水曜日に行われたトランプ大統領と米自動車大手3社、いわゆるビッグ3(ステランティス、フォード、ゼネラル・モーターズ)との協議を受けて決まりました。
ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官は、北米の自由貿易枠組みであるUSMCAに言及しながら、自動車については「USMCAを通じて米国に入る全ての自動車に1カ月の免除を与える」決定をしたと説明しました。レヴィット氏によれば、この猶予はビッグ3側の要請に応じる形で認められたもので、大統領は要請を喜んで受け入れたとしています。
この発表を受けてウォール街では好感が広がり、ビッグ3の株価はいずれも6%前後上昇しました。自動車株高をきっかけに、米株式市場全体も反発しています。ビッグ3を代表する業界団体である米自動車政策評議会も、今回の猶予措置を歓迎する姿勢を示しました。
背景:25%関税が発動 狙いは不法移民とフェンタニル
一方で、自動車以外の分野では厳しい関税がすでに動き出しています。トランプ政権は火曜日、カナダとメキシコからの対米輸入品に対し、おおむね25%という高率の関税を発動しました(カナダ産エネルギーにはより低い税率を適用)。この措置は世界の金融市場に動揺を広げ、近隣諸国との関係にも大きな負担をかけています。
トランプ大統領は、こうした関税の理由として、不法移民対策と合成麻薬フェンタニルの密輸抑止を挙げています。関税の議論では、しばしば貿易不均衡への不満も繰り返し口にしており、安全保障、移民、貿易赤字といった複数の論点が、一つの関税政策に重ね合わされている形です。
カナダと米国の政府データによると、カナダが米国の違法フェンタニル供給に占める割合は1%未満にとどまるとされています。しかしトランプ大統領は、こうした数字を取り合わず、オタワが依然として十分な対策を講じていないとの認識を示しています。
カナダの対応:トルドー首相との電話会談も平行線
関税発動後、カナダ政府は素早く報復関税を発表しました。オタワは、自国の立場と産業を守るため、対抗措置を通じてワシントンに圧力をかける構えです。
トランプ大統領は、カナダのトルドー首相と電話で協議しましたが、トルドー氏の説明にもかかわらず、米側はフェンタニルの密輸対策についてカナダの取り組みが不十分だとする姿勢を崩していません。これにより、関税の本格的な撤回や広範な猶予措置への道筋は、現時点では見えていません。
カナダにとっては、実際のデータに基づき責任の所在を明確にしたい思惑がある一方、米国との密接な経済関係を損なえないというジレンマも抱えています。トルドー政権は、国内世論と対米関係の両方をにらみながら、難しい対応を迫られています。
メキシコの対応:シェインバウム大統領、日曜の大集会で姿勢表明へ
メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領も、トランプ政権の新関税にどう向き合うか、重大な判断を迫られています。報道によると、シェインバウム大統領は日曜日に予定されている大規模集会の場で、自国の対応方針を明らかにする考えです。
メキシコは米国向け輸出への依存度が高く、とくに自動車や部品、農産品などでサプライチェーンが深く結びついています。そのため、強い報復措置を取れば米国との摩擦が一段と激化する一方、弱腰に見える対応は国内世論の反発を招きかねません。シェインバウム政権がどのようなバランスを選ぶのかが、今後の北米経済の行方を左右する可能性があります。
日本にとっての意味:北米サプライチェーンと市場心理
今回の関税問題は、米国と近隣2カ国だけの話にとどまりません。カナダとメキシコには、日本の自動車メーカーや部品メーカーも多数進出しており、USMCAを通じて完成車や部品を米国市場へ供給しています。自動車に対する関税が本格的に適用されれば、日本企業にもコスト増や投資計画の見直しを迫る圧力となり得ます。
さらに、貿易政策が移民問題や麻薬対策など、非経済的な課題と結びつけられる流れは、国際ビジネスの不確実性を高めます。市場側がとりあえず自動車関税の猶予を好感した一方で、「1カ月後に再び同じ問題が持ち上がるのではないか」という警戒感もくすぶっています。
今後1カ月で注目すべきポイント
今回の決定はあくまで一時的な猶予にすぎず、北米の通商関係は流動的な状態が続きます。読者が今後フォローする際の視点を、いくつか整理します。
- 自動車関税の本格適用が回避されるのか、それとも1カ月後に再び強い圧力として浮上するのか
- トランプ政権がカナダに求めるフェンタニル対策の具体像と、それに対するオタワの追加措置の有無
- シェインバウム大統領が日曜の集会で打ち出す対抗策と、それが米墨関係やメキシコ経済に与える影響
- 関税をめぐる発言や政策変更に、金融市場がどこまで敏感に反応し続けるのか
関税は数字で語られがちですが、その背後には移民、安全保障、国内政治などさまざまな要素が絡み合っています。短期的な株価の動きだけでなく、北米のルール作りがどの方向に進むのかを丁寧に追うことが、今後の国際ニュースを読み解く鍵になりそうです。
Reference(s):
Trump pauses tariffs for autos as Trudeau call yields no breakthrough
cgtn.com







