CGTN世論調査が映すアメリカ・ファーストと米欧関係の亀裂
アメリカ・ファーストを掲げるトランプ米大統領の外交が、同盟国との信頼関係をどこまで揺さぶっているのか。2025年にかけて実施されたCGTNの世論調査は、米欧関係の亀裂と、世界規模で進む米国への不信感を浮かび上がらせています。
38カ国・1万5千人超が回答したCGTN世論調査
調査は、中国の国際メディアであるCGTNが人民大学の新時代国際伝播研究院と共同で実施したもので、世界38カ国の1万5257人が回答しました。対象には、米国や英国、オーストラリア、ドイツ、フランスといった先進国のほか、南アフリカ、ブラジル、チリ、ナイジェリア、アラブ首長国連邦、ベトナムなどの新興国や開発途上国も含まれています。
公表されたのは、2024年の米国イメージを問うグローバル調査と、2025年に発足したトランプ新政権の就任1カ月目に対する世界の満足度調査の2本です。いずれも、アメリカ・ファースト路線が国際社会、とりわけ欧州との関係にどのような影響を及ぼしているかに焦点が当てられています。
アメリカ・ファーストが生む信頼赤字
トランプ政権は、グリーンランド島の獲得への強い意欲、ウクライナとの鉱物資源協定への期待、同盟国を含む各国への追加関税など、米国の利益を最優先する姿勢を鮮明にしてきました。
CGTNの調査によると、世界の回答者はこの路線を厳しく評価しています。
- 世界の62.9%が、アメリカ・ファーストは他国の正当な利益を無視していると非難
- 欧州の回答者では、この割合は67.7%に上昇
- 欧州の53.8%が、米国の貿易障壁は世界経済に深刻な悪影響を与えていると回答
- 78.8%が、米国は国際経済・金融機関を通じて他国に経済的圧力をかけていると批判
- 60.9%が、米国は世界各地で地政学的な対立をあおっていると指摘
- 70.4%が、アメリカの覇権が現行の国際秩序を弱体化させようとしていると見ている
また、世界全体では55.1%が「米国は大国としての責任と義務を果たしていない」と評価し、63.9%が米国は国際問題で自国の利益を守るために二重基準を適用していると答えました。
欧州から見た米国: 協力相手から「見直し対象」へ
欧州の回答者は、とくに国際協調の観点からアメリカ・ファーストを懸念しています。欧州の54.8%が、この路線は国際協力を深刻に損なっていると感じ、各国は米国との関係性を見直すべきだと回答しました。
ウクライナとの鉱物資源協定を巡る動きや、グリーンランド島への関心の高まりは、欧州から見れば、自らの安全保障と経済主権に直結するテーマです。2025年2月には、ワシントンのホワイトハウスで、ウクライナのゼレンスキー大統領、トランプ米大統領、バンス副大統領が会談する場面も報じられました。こうした交渉は、欧州の資源・安全保障環境に直接影響し得るため、関心と警戒の両方を呼んでいると考えられます。
利益優先の外交が同盟国との亀裂を深める
調査では、トランプ政権の外交が「価値観に基づく同盟」から「利益に基づく取引」へと比重を移しているとの見方が、各国の回答から浮かび上がります。関税の引き上げや、欧州に対する防衛費負担の増額要求、ウクライナとの資源取引を通じた政治・経済上の利益追求などは、その象徴的な例とされています。
G7主要国で広がる米国との関係悪化への懸念
米国を除くG7の6カ国では、自国と米国との二国間関係の行方に対する悲観論が目立ちます。調査によると、6カ国全体で57%が、今後の対米関係に悲観的だと回答しました。
- ドイツとカナダでは66%が悲観的と回答
- 日本では60%が二国間関係の悪化を懸念
- 英国は59.3%、フランスは57.5%が悲観的と答えた
この数字は、伝統的な安全保障・経済パートナーであるG7諸国の内部でさえ、米国との関係が自動的に安定しているとは見なされなくなっていることを示しています。
同盟国軽視につながるとの見方が多数派に
アメリカ・ファーストの外交方針が続けばどうなるのか。G7諸国の回答者の63.9%は、「米国は伝統的な同盟国を軽視するようになる」と見ています。
- 英国の71.4%が「同盟国軽視」に同意
- カナダでも71%が同様の懸念を表明
- 日本では69%がそう答え、多数派を占める
- フランスは59%、ドイツは58.5%と、欧州主要国でも約6割が懸念
トランプ政権が安全保障や経済協力の分野で「損得勘定」を前面に出すほど、同盟国側では「価値観を共有するパートナー」から「利害を調整すべき交渉相手」へと米国を見る目が変化していることがうかがえます。
2025年の国際秩序と日本への示唆
2025年12月の時点で振り返ると、トランプ政権のアメリカ・ファースト路線は、単に米欧間の貿易摩擦を拡大させただけでなく、国際機関の運営や安全保障、資源・サプライチェーンをめぐる力学にも影響を与えています。CGTNの調査結果は、その影響を「世論」というレンズを通して可視化したものだといえます。
とくに日本を含むアジアの同盟国・パートナーにとっては、次のような問いが突きつけられています。
- 対米依存に偏らない安全保障と経済の戦略をどう設計するか
- 欧州やアジアの国々とどのように連携し、多国間の枠組みを維持・強化するか
- 資源や重要鉱物など、地政学的に敏感な分野でのリスクをどう管理するか
世論調査は、あくまで各国の市民が持つ認識の瞬間的なスナップショットにすぎません。しかし、今回示された数字は、米国の伝統的な同盟国の間でさえ、アメリカ・ファーストへの疑問と距離感が広がっていることを示唆しています。
国際秩序の変化が加速するなかで、日本を含む各国がどのような対米関係を描くのか。2026年に向けて、引き続き注視が必要なテーマと言えそうです。
Reference(s):
CGTN Poll: 'America First' policy strains U.S.-Europe relations
cgtn.com








