トランプ政権、裁判所命令に反して迅速送還を拡大 video poster
米国のトランプ政権が、裁判所による制限にもかかわらず移民の迅速送還を拡大していると報じられました。司法との対立が深まるこの動きは、米国の移民政策と民主主義のあり方をめぐる議論を一段と熱くしています。
裁判所の「待った」を押し切るかたちで拡大
米国のドナルド・トランプ大統領の政権は、いわゆるファストトラック・ディポーテーション(迅速送還)の適用をさらに広げました。これは、戦時権限を使った迅速な国外退去措置の利用を禁じる裁判所の命令が出されている中での決定だと伝えられています。
国境政策を統括するボーダー・ツァーとされるトム・ホーマン氏は、米メディアのフォックスニュースの番組で、裁判所からの反発を意に介さず、今後も送還便を増やしていく考えを示しました。中国国際テレビ局CGTNのトニー・ウォーターマン記者がこの動きを報じています。
迅速送還とはどのような仕組みか
迅速送還とは、通常の裁判手続きを経ずに、短期間で自国以外の人を国外退去させる仕組みの総称です。対象者に対して、移民裁判所での審理や長い異議申し立てのプロセスを省略できる点が特徴です。
こうした制度は、
- 国境での拘束者数が急増したときの負担軽減
- 審理にかかるコストや時間の削減
- 抑止力の強化
などを目的として導入されることが多い一方で、人権や法の適正な手続き(デュープロセス)を損なうおそれがあるとして、常に議論の対象となってきました。
戦時権限の利用をめぐる司法との攻防
今回のケースでは、裁判所が戦時権限を根拠とする迅速送還の運用に制限をかける命令を出しているにもかかわらず、政権側が措置の拡大に踏み切ったとされています。
戦時権限とは、本来は戦争や緊急事態の際に行政府に与えられる、強い権限を指します。これを移民の迅速送還にどこまで適用できるかは、司法と行政府の間で解釈が分かれやすい分野です。
行政府が強い裁量権を主張し、司法がそれに歯止めをかけようとする構図は、米国の民主主義にとって繰り返し現れてきたテーマでもあります。今回のトランプ政権の対応は、その綱引きが一段と強まっていることを示しているとも言えます。
ホーマン氏「送還便をさらに計画」
トム・ホーマン氏は、フォックスニュースでの発言の中で、司法の反対を退ける姿勢を明確にし、今後もより多くの国外退去便を計画していると述べました。
この発言は、
- 裁判所の判断よりも、行政としての治安・国境管理を優先する
- 強硬な移民政策を支持する層に向けて、政権の行動力をアピールする
というメッセージとも受け取ることができます。一方で、司法との対立が深まることで、現場の運用が不安定になるリスクも指摘されています。
移民コミュニティと社会への影響
一般に、迅速送還の対象が広がると、移民コミュニティに次のような影響が出る可能性があります。
- 拘束された人が、弁護士へのアクセスや家族との連絡を十分に取れないまま送還されるおそれ
- 難民申請や保護を求める声が、短期間の手続きの中で十分に検討されないリスク
- 地域社会で暮らす移民の間に、不安や不信感が広がること
こうした懸念があるため、移民政策をめぐっては、安全保障や法執行の観点と、人権や法の支配の観点をどうバランスさせるかが、常に重要な論点となります。
日本の読者にとっての意味
今回のトランプ政権の動きは、米国という遠い国の話に見えるかもしれません。しかし、人口減少や外国人労働者の受け入れが議論される中で、日本もまた移民・外国人政策のあり方を問われています。
国家がどこまで強い権限を行使してよいのか。裁判所はその権限にどう歯止めをかけるのか。そして、社会は多様な人の移動とどう向き合うのか。米国の事例は、日本社会が今後考えていくうえで、多くの示唆を与えてくれます。
移民をめぐる議論は、治安や経済だけでなく、私たちがどのような社会でありたいのかという価値観の問題でもあります。今回のニュースをきっかけに、国境管理と人権のバランスについて、自分なりの視点を持ってみることが求められているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








