カナダがEU防衛協力を模索 米国依存見直しの狙いとは
カナダが防衛調達の米国依存を減らすため、欧州連合(EU)との防衛協力を本格的に模索していることが明らかになりました。カナダとEUが同時に防衛産業の自立化を進めようとする動きは、2025年の国際安全保障の構図にも影響を与えそうです。
カナダとEU、防衛調達での連携を協議
AP通信の報道によると、カナダ政府の高官は今週、カナダがEUと防衛調達に関する協議を進めていることを認めました。発言は匿名を条件としていますが、その中で戦闘機のカナダ国内生産といった可能性まで議論されているとされています。
こうした動きは、マーク・カーニー首相が掲げる防衛サプライチェーンの多角化戦略の一環です。カナダは従来、主に米国から装備を調達してきましたが、EUとのパートナーシップを通じて、調達先と安全保障上のつながりを広げる狙いがあります。
背景にある米国依存への不安
背景には、米国への過度な依存に対するカナダ国内の不安があります。ドナルド・トランプ米大統領の貿易政策や経済圧力を受け、カナダでは防衛装備まで一国に頼りすぎるのはリスクだという議論が強まっています。
メラニー・ジョリー外相はカナダ放送協会(CBC)の番組で「これは非常に重要です。私たちは防衛調達で協力するための議論を進めてきました」と語り、1カ月前に欧州を訪問してパートナーシップへの参加を働きかけたことを明らかにしました。そのうえで、カナダの軍事調達が米国に過度に依存している現状を指摘し、世界各地との多様な連携の必要性を強調しました。
F35見直しとグリペン案
具体的な議論の焦点の一つが、カナダ空軍の次期主力戦闘機計画です。ビル・ブレア国防相は、アメリカ製F35戦闘機の導入計画について、環境の変化を踏まえた再検討を進めるよう指示されたとされています。
カナダは2年前、F35を88機購入することで合意しましたが、現在までに法的に支出を確定させているのは最初の16機分にとどまっています。残りの発注については見直しの余地があり、スウェーデンのサーブ社によるJAS39グリペン戦闘機の提案も選択肢の一つとみられています。この案では、カナダ国内での組立や整備を行うことが含まれており、産業政策の観点からも注目されています。
カーニー首相の初外遊に透けるメッセージ
カーニー首相は就任直後の初の外遊として今週、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、イギリスのキア・スターマー首相と会談しました。欧州主要国との連携を早期に固めようとする日程は、防衛・安全保障分野での協力拡大を重視している姿勢の表れと受け止められています。
首相の一連の会談は、単なる関係構築の枠を超え、カナダが自らの安全保障戦略を米国一極から多極型へとシフトさせる意図を象徴しているとも言えます。
EU側の「Readiness 2030」戦略とは
一方のEUも、防衛産業の自立化を進めています。欧州委員会は今週、「Readiness 2030」と名付けた安全保障戦略を公表し、加盟国に対し、軍事装備をできるだけ欧州の企業から調達するよう求めました。
この戦略では、次のような方針が示されています。
- 加盟国が防衛調達の少なくとも65%をEU域内、ノルウェー、ウクライナの企業から行う場合、財政的な優遇措置を提供
- 米国製装備への依存を減らし、欧州の防衛産業基盤を強化
- ウクライナ支援を含む欧州自身の防衛責任を高める
これまでEU諸国は、軍事装備のおよそ3分の2を米国から調達してきたとされます。しかし、トランプ政権が先月、ウクライナ支援を含む欧州防衛について「欧州自身がより大きな責任を負うべきだ」とのメッセージを発したことで、欧州は自らの防衛力を自前で支えるべきだという機運が一段と高まっています。
米国依存見直しの連鎖と国際秩序
カナダとEUの動きは、どちらも米国との同盟関係を維持しながらも、防衛面での選択肢を増やすことを目指している点で共通しています。これは、単純な対立や決別ではなく、リスク分散と自立性強化の試みと見ることができます。
日本にとっても、これは他人事ではありません。安全保障環境が不確実さを増すなかで、
- どの国とどの分野で連携を深めるのか
- どこまで装備や技術を国内・地域内で賄うのか
- サプライチェーンをどう分散し、途絶リスクを抑えるのか
といった問いは、カナダやEUだけでなく、多くの国が直面している共通課題です。
読みやすいのに考えさせられるポイント
カナダとEUの事例から、次のような視点が見えてきます。
- 防衛調達は単なる買い物ではなく、外交・産業政策・安全保障戦略が交差する領域であること
- 同盟国に依存しつつも、自らの選択肢を持とうとする動きが、今後の国際秩序を静かに変えていく可能性があること
- 日本を含む米国の同盟国にとっても、どこまで依存し、どこから自立するのかという議論が避けて通れなくなりつつあること
カナダとEUの防衛協力がどこまで具体化するのか、またF35計画の見直しが実際の調達にどう影響するのかは、今後の交渉次第です。米国、カナダ、欧州の三者関係がどのように再構成されていくのか、引き続き注視する必要がありそうです。
Reference(s):
Canada explores EU defense partnerships to reduce U.S. reliance: media
cgtn.com








