EU首脳会議、米国頼み見直しで防衛費増額を協議 なお残る深い溝
EU首脳が最近の会議で、防衛費の増額と自前の防衛力強化について集中的に議論しました。背景には、米国の将来の防衛コミットメントへの不安と、ロシアによる攻撃への警戒感がありますが、加盟国の間にはなお深い溝が残っています。
EU首脳会議で浮き彫りになった「米国頼み」見直し
今回のEU首脳会議では、欧州がどこまで自らの防衛を担うべきかが大きなテーマとなりました。米国のドナルド・トランプ大統領によるウクライナやロシアとの recent な関わり方をめぐり、「これまで通りNATOと米国に安全保障を頼り続けられるのか」という不安が、EU各国の間で強まっているためです。
こうしたなか、EUとして防衛能力を強化し、リスクを分担する枠組みづくりが求められていますが、各国の立場や脅威認識の違いが明確になりました。
欧州委員会の防衛提案:「再軍備」と共同プロジェクト
議論の中心となったのは、欧州委員会が提示した一連の防衛提案です。主なポイントは次の通りです。
- 欧州各国が防衛力強化のための資源を「共同でプール」し、共通の軍事プロジェクトを進めること
- 装備調達の際には、なるべく欧州製の兵器・装備を購入し、欧州防衛産業を支えること
- 財政規律(財政ルール)を一部緩和し、防衛目的で最大6,500億ユーロ(約€650 billion)の追加支出を可能にすること
- さらに1,500億ユーロ(約€150 billion)規模の低利融資プログラムを新設し、共同借り入れで資金を確保すること
欧州委員会は、こうした仕組みによって「欧州としての再軍備」を進めたい考えです。
「再軍備」という言葉への温度差
しかし、この「再軍備」というキーワード自体に対しても、加盟国の受け止め方は大きく分かれています。
リトアニアのギタナス・ナウセダ大統領は、「私たちは再軍備しなければならない。さもなければ、ロシアの侵略の次の犠牲者になるだろう」と強い危機感を表明しました。ロシアに地理的に近い国ほど、軍事的抑止力を急いで高める必要があるという認識が共有されています。
一方、スペインのペドロ・サンチェス首相は、欧州委員会が多用する「再軍備」という表現そのものに難色を示し、「『再軍備』という言葉は好きではない」と述べました。そのうえで、「私たちが直面している南側の近隣地域の課題は、東側の前線が直面している課題とは少し違う」と指摘し、南欧が抱える安全保障上の優先課題は別にあると強調しました。
東に近い国と南欧のあいだに横たわる溝
今回の議論からは、EU内部での「地理的な立場の違い」が、防衛観や負担意識の違いとして表れていることも見えてきます。
ロシアに地理的に近い国々は、ウクライナへの支援も自国経済規模に対して相対的に多く拠出してきました。そのため、ロシアの脅威をより切実に感じており、防衛費の増額や再軍備を急ぐべきだという声が強くなっています。
一方、南欧の首都の中には、防衛費増額に慎重な姿勢を崩していないところもあります。彼らは、移民・難民問題や中東・北アフリカ情勢など、「南側の近隣」で起きている課題への対応も同時に求められており、「東の脅威」だけを軸に防衛政策を決めるべきではないという立場です。
防衛費は誰がどこまで負担するのか:財政をめぐる攻防
欧州委員会の提案の中でも、もっとも意見が分かれたのが「どう財源を確保するか」という点でした。6,500億ユーロの追加防衛支出と1,500億ユーロの低利融資プログラムをどう位置づけるかは、各国の財政事情と直結します。
ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相は、EUが防衛支出の資金面でさらに踏み込むべきだと主張し、「融資だけでなく、加盟国に対する給付金(グラント)も検討すべきだ」と求めました。つまり、「借金」ではなく「実質的な支援」を増やしたいという考えです。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相も、各国の公的債務を直接膨らませない形での共通の欧州ツールを重視し、「各国の債務を直接的に増やさない、本当に共通の欧州の手段が望ましい」と述べました。
これに対し、オランダのディック・スホーフ首相は、共同債(いわゆるユーロボンド)には依然として強く反対していると表明しました。スホーフ氏は、1,500億ユーロ規模の融資プログラムこそが自らが容認できる上限だと強調し、これ以上の共同借り入れには応じない姿勢を示しています。
問われる「欧州としての防衛」のかたち
今回の会議で、EU首脳たちは「米国頼み」の安全保障を見直し、自ら防衛力を高めていく方向性について一定の共通認識を持ち始めています。しかし、
- どの脅威を優先するのか(ロシアの軍事的脅威か、南側の不安定要因か)
- 防衛費をどこまで増やすのか
- その負担をどのような財政ルールの下で、誰がどのように負うのか
といった論点では、依然として加盟国の立場は大きく割れています。
今後のEU内の議論では、
- 「再軍備」という言葉に象徴される軍事的な強化と、外交・開発など非軍事的なアプローチのバランス
- NATOとの関係を保ちつつ、どこまで「欧州独自」の防衛能力を構築するのか
- 財政規律と安全保障のどちらをどのように優先するのか
といった点が注目されることになりそうです。
EUがこの防衛・安全保障の議論でどのような妥協点を見いだすのかは、ウクライナ情勢やロシアとの関係だけでなく、国際秩序全体の行方にも影響を与える可能性があります。今後の首脳会議や欧州委員会の具体的な制度設計に、引き続き目が離せません。
Reference(s):
cgtn.com







