王毅外相「中日韓で地域安定を」 第11回外相会合で協力強化を提唱
中国の王毅外相は、中国・日本・韓国(ROK)の3カ国が、揺らぐ国際情勢と世界経済の不透明感の中で、東アジアの安定に「プラスの要素」を加えるべきだと呼びかけました。中日韓協力を軸にした国際ニュースは、日本の読者にとっても今後の地域秩序を考えるうえで重要なテーマです。
第11回中日韓外相会合で示されたメッセージ
王毅氏(中国外相であり、中国共産党中央委員会政治局委員)は、第11回中日韓外相会合後に記者会見を行い、3カ国協力の現状と今後の方向性について説明しました。
王毅氏によると、中日韓は、第9回首脳会議以降の3カ国協力が「前向きな進展」を遂げていると評価しつつ、今のように国際情勢が複雑に入り組み、世界経済の回復が弱い局面だからこそ、
- 意思疎通を一層強化すること
- 相互信頼を高めること
- 協力を深め、地域の平和的発展に安定要因を加えること
が3カ国の「必要かつ責任ある役割」だという点で一致しました。
「協力のモメンタムを固める」6分野を軸に
王毅氏は、既に生まれている協力の流れを「モメンタム(勢い)」と表現し、その勢いを固めつつ新しい原動力を育てる必要があると強調しました。
その際の土台となるのが、昨年の中日韓首脳会議で確認された6つの重点分野です。詳細には触れていないものの、王毅氏はこの6分野の着実な実施を前提に、「新たなハイライト」となる協力プロジェクトを生み出したい考えを示しました。
また、節目となる第10回中日韓首脳会議について、3カ国の外相は「年内の開催」に向けた有意義な意見交換を行い、首脳会議が開けるよう、必要な条件と良好な雰囲気づくりに努めることで合意しました。
経済連携:FTA再開とRCEP拡大を視野に
経済分野では、中日韓が「地域経済統合を推進する」という点で共通認識に達したとされています。王毅氏によると、3カ国は今後、次のようなテーマで意思疎通を続けます。
- 中日韓3カ国による自由貿易協定(FTA)交渉の再開に向けた協議
- 地域的な包括的経済連携(RCEP)への参加国・地域の拡大を促す取り組み
- 地域の生産・供給網(サプライチェーン)の安定性と円滑な流れの確保
FTAは関税の引き下げなどを通じて貿易を自由化する枠組みであり、RCEPはアジア太平洋地域をカバーする広域の経済連携枠組みです。サプライチェーンの安定と自由貿易の維持は、日本企業にとっても事業戦略に直結するテーマであり、中日韓の動きは今後も注目されます。
アジアの「科学技術イノベーション拠点」をめざす
3カ国はまた、「時代の流れに歩調を合わせる」として、アジアにおける科学技術イノベーションの拠点づくりを進めていく方針を共有しました。
王毅氏は、先端技術やデジタル分野などを通じて「新しい質の生産力」を育成することが重要だと述べました。ここでいう「新しい質の生産力」とは、単に量の拡大ではなく、技術革新や人材の高度化を通じて付加価値の高い成長をめざす考え方を指します。
この分野での中日韓協力は、研究開発、スタートアップ支援、デジタル経済など、多くの可能性を含んでおり、東アジアの競争力にも影響を与えるテーマです。
2025〜26年は「中日韓文化交流の年」 人の往来4000万人を目標
人と人との交流については、2025〜2026年が「中日韓文化交流の年」に位置づけられていることが改めて確認されました。
王毅氏は、3カ国がこの2年間にさまざまな文化・交流イベントを企画し、相互理解を深めるとともに、2030年までに中日韓の人的交流(観光、留学、ビジネスなど)を年間4,000万人規模まで拡大することを目標に掲げました。
日本にとっては、観光、学生交流、若者の相互訪問などを通じて、近隣3カ国の距離をどう縮めていくかが問われる局面となりそうです。
社会・環境分野でも協力拡大へ
3カ国は、社会生活や環境に関わる分野でも協力を強める方針を示しました。具体的には、
- 人々の暮らしに直結する「社会民生」分野での連携
- 脱炭素や省エネを含むグリーンで低炭素な発展の推進
などを通じて、3カ国の人々に「より多く、より良い利益」をもたらすことをめざすとしています。高齢化、環境負荷の低減、エネルギー転換といった課題に取り組むうえで、中日韓がどのように協働するのかが今後の焦点になります。
多国間主義と自由貿易をめぐるメッセージ
今回の外相会合では、3カ国が「多国間主義」と「自由貿易」を維持・強化していく姿勢も強調されました。
王毅氏によれば、中日韓は、多国間の枠組みを重視しつつ、より開かれ、包摂的で、バランスが取れ、すべての国と地域に恩恵をもたらす経済のグローバル化を推進していくことで一致しました。
保護主義や分断の動きが指摘される中で、東アジアの主要プレーヤーである中日韓がどのようなメッセージを発するかは、国際社会の注目を集めるポイントでもあります。
日本の読者が押さえておきたいポイント
今回の中日韓外相会合で示された方向性は、日本の読者にとって次のような論点を投げかけています。
- 首脳レベルの対話:第10回中日韓首脳会議の年内開催に向けた動きが具体化すれば、3カ国関係の節目となる可能性があります。
- 経済とサプライチェーン:FTA交渉やRCEP拡大、供給網の安定は、日本企業のビジネス環境と地域経済の形を左右します。
- 人の交流と文化:「中日韓文化交流の年」と4000万人の人的交流目標は、観光や留学、文化イベントを通じた相互理解の機会を広げます。
- 環境・社会課題への共同対応:グリーン・低炭素発展や社会民生分野での協力は、東アジア全体の持続可能性と生活の質に直結します。
中日韓の枠組みは、個別の二国間関係とは別に、東アジア全体の安定と共通の土台をどうつくるかという視点からも重要になりつつあります。今回示された合意や目標が、今後どこまで具体的な成果へとつながるのか。日本としても、その行方を静かに、しかし確かに見ていく必要がありそうです。
Reference(s):
Wang Yi urges China, Japan, ROK to inject stability into the region
cgtn.com








