トランプ氏の政策に抗議し欧州からの米国旅行キャンセル相次ぐ
欧州の旅行者がドナルド・トランプ米大統領の政策などへの抗議として米国旅行を見合わせる動きが出ており、観光業や米欧関係への影響が国際ニュースとして注目されています。
米国旅行をやめたデンマーク人の葛藤
デンマークの旅行者ケネット・ブラスクさんは、2年前に米フロリダへの釣り旅行を満喫し、今年も再訪を計画していました。しかし、ホワイトハウスで行われたドナルド・トランプ米大統領とウォロディミル・ゼレンスキー氏の緊迫した会談の映像を見た後、その計画を取りやめたといいます。
ブラスクさんはロイター通信に「この会談を見て、トランプ氏が大統領でいるかぎり、二度とアメリカには行かないと思った」と語り、トランプ氏の態度について「とても失礼で、大人の振る舞いではなかった」と強い違和感を示しました。
グリーンランドを巡る発言とデンマークの反発
今年1月に就任した第47代米大統領トランプ氏は、モスクワとの関係改善の姿勢を見せる一方で、デンマークの自治領グリーンランドの「併合」に言及し、世界的な貿易戦争も仕掛けるなど、前任者とは異なる外交・通商政策を打ち出してきました。
とりわけグリーンランドを巡る発言は、デンマークの人々にとって極めて敏感なテーマです。デンマーク人のキム・クーゲル・ソレンソンさんはロイター通信に対し、家族ぐるみの友人の結婚式に出席するために予定していたカリフォルニア旅行をキャンセルしたと語りました。さらに、星条旗のタトゥーから旗の部分を消し、親米的だと思われたくなかったと明かしています。
アメリカ・ファーストが冷やす米欧関係
中国のCGTNが今月、38カ国の1万5,257人を対象に実施した調査によると、トランプ氏のアメリカ・ファースト政策は、米欧関係や米国への信頼に大きな影響を与えているとされています。とくに、米国の伝統的な同盟国に属する回答者の間で、ワシントンへの信頼感が急速に低下している様子がうかがえます。
多くの欧州の回答者は、この政策が他国の正当な利益を顧みていないと批判し、対米感情の悪化が進んでいることを示しました。こうした国際世論の変化が、個人レベルの旅行計画にも反映されていると見ることができます。
観光業界も打撃、旅行検索は減少
欧州から米国への旅行は、経済的にも大きな存在感を持っています。EUの統計によると、欧州の旅行者は2023年に米国で約1550億ドルを消費しました。しかしトランプ政権発足後、旅行会社やデータ分析企業は、欧州から米国行きの旅行検索件数の減少をすでに感じているといいます。
コペンハーゲンに拠点を置く旅行会社アルバトロス・トラベルのシニア・プロダクトマネジャー、ステーン・アルブレクセン氏はロイター通信に対し、デンマークやグリーンランドに対する現在の状況や姿勢、そして顧客からの反応の乏しさを踏まえ、米国ツアーのマーケティングには一切お金を使わないという決定を下したと述べました。民間企業レベルでも、米国への距離感を調整する動きが出ていることが分かります。
旅行ボイコットという静かな抗議
今回の欧州の動きは、デモや選挙ではなく、行かない・お金を落とさないという形で政治的な意思を示している点が特徴的です。旅行や消費といった日常の選択が、外交や国際世論にも影響を与えうる時代になっているとも言えます。
SNSの普及により、個々の旅行キャンセルやボイコットの決断は、写真やコメントとともに瞬時に共有されます。それに共感する人が現れれば、小さな個人の判断が大きな潮流へとつながる可能性もあります。
これからの米欧関係と私たちへの問い
トランプ政権は、就任から1年を迎えようとする中で、従来の枠組みにとらわれない外交・通商政策を次々と打ち出しています。その余波は、安全保障や貿易だけでなく、観光や人の往来といった生活に身近な領域にも広がりつつあります。
欧州の旅行者たちが示す行かないという選択は、米欧関係の緊張を象徴する一つのサインです。一方で、交流の減少は誤解を深めるリスクもはらみます。政治への違和感をどう表現しつつ、対話や交流の窓をどこまで保つのか──そのバランスが問われています。
国際ニュースを日常的に追う日本の私たちにとっても、海外旅行や留学、ビジネス出張といった自分自身の選択が、広い意味でどのようなメッセージを発しているのか、一度立ち止まって考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
Europeans cancel U.S. trip in protest against Trump's policies
cgtn.com








