米国イエメン攻撃計画がチャットで漏えい トランプ政権に波紋
米国で、イエメンのフーシ派への軍事攻撃計画が、国防長官や副大統領らが参加するグループチャット経由で著名ジャーナリストに誤送信されていたことが明らかになりました。ホワイトハウスは月曜日、このやり取りが本物とみられると認め、前代未聞の安全保障上の情報漏えいとして波紋が広がっています。
トランプ大統領が今年3月15日に発表したイエメンへの攻撃について、雑誌『The Atlantic』編集長のジェフリー・ゴールドバーグ氏は、複数の米高官が参加するメッセージアプリのグループチャットで、数時間前から詳細な情報を受け取っていたと明かしました。
どんな情報が漏えいしたのか
ゴールドバーグ氏によると、国防長官のピート・ヘグセス氏はチャット上で、攻撃対象の候補地、使用される兵器の種類、攻撃の順序といった具体的な内容を共有していました。さらに、最初の爆発が起きるおおよその時刻として、米東部時間の午後1時45分ごろ、つまりチャット送信から約2時間後になると記していたとされます。
このタイムラインは実際のイエメンでの爆撃の発生時刻と一致していたといい、チャット上で交わされた内容が単なる一般的な説明ではなく、極めて具体的な作戦情報だった可能性が高まっています。
ゴールドバーグ氏は、問題のグループチャットに2日前から参加させられており、他の政府高官からも、この問題を担当する代表者の名前などを伝えるメッセージを受け取っていたとしています。それでも氏は、攻撃が始まる前はもちろん、攻撃後であっても、チャットで知り得た作戦の詳細を公表しませんでした。
なぜ記者がチャットに含まれたのか
今回の情報漏えいは、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のスポークスマン、ブライアン・ヒューズ氏が認めました。ヒューズ氏は、問題のメッセージスレッドは本物とみられ、誤って別の番号がチャットに追加された経緯を調査していると説明しました。
つまり、ヘグセス氏やトランプ政権の高官らが参加する、極めて機微なやり取りの場に、記者の電話番号が誤登録されていたことになります。それだけでなく、今回のやり取りは、軍や政府が通常用いる専用の暗号通信システムではなく、一般市民も広く利用する商用アプリ上で行われていました。
軍事作戦に関する高度な機密が、このような場で共有されていたことについては、仮に相手が記者でなかったとしても、情報管理の甘さが強く疑問視されています。
トランプ政権とヘグセス国防長官の対応
ホワイトハウスは、トランプ大統領が国家安全保障チームに対して「最大限の信頼」を持ち続けていると強調しました。一方で、大統領自身は今回の件について「何も知らない」と述べており、政権のメッセージには温度差もにじみます。
元テレビ司会者であり、大規模な組織運営の経験が乏しいと指摘されてきたヘグセス国防長官は、月曜日の取材対応で、今回の情報漏えいについて自らの責任を認めませんでした。それどころか、ゴールドバーグ氏への批判を展開し、「誰も戦争計画をテキストで送ってはいない」と主張しました。
しかし、ホワイトハウスがチャットの存在と誤送信の事実を認めている以上、ヘグセス氏の説明と公的な認定との間には明らかな食い違いがあります。このギャップは、政権内部での危機対応や説明責任のあり方にも疑問を投げかけています。
民主党の強い反発と政治的波紋
今回の安全保障上の失態に対し、野党・民主党は強く反発しています。上院少数党(民主党)トップのチャック・シューマー上院議員は、「自分が読んだなかで、きわめて驚くべき軍事情報の漏えいの一つだ」と述べ、徹底した調査を求めました。
上院軍事委員会で影響力を持つジャック・リード上院議員も、トランプ政権の閣僚たちが示した「軽率さ」は「驚くべきものであり、危険です」と厳しく批判しています。
さらに、国務長官在任時の私用メール利用をめぐり、トランプ氏から繰り返し攻撃されてきた経験を持つヒラリー・クリントン氏は、X上で今回のAtlanticの記事を紹介し、「You have got to be kidding me(冗談でしょう)」と皮肉を込めて投稿しました。かつてのメール問題と現在のグループチャット問題を対比し、政権の情報管理姿勢を問い直す意図がにじみます。
デジタル時代の戦争と機密管理という問い
今回の事件は、単なる一度きりの「誤送信」として片付けられるものではありません。暗号化されたメッセージアプリは利便性が高く、多忙な高官同士の連絡手段として重宝されますが、その一方で、連絡先の登録ミスや端末の紛失といった人的ミスが、致命的な情報漏えいにつながりかねないことを浮き彫りにしました。
特に、軍事作戦や国家安全保障に関わる情報が、個人のスマートフォンや商用アプリでやり取りされることの是非は、多くの国に共通する課題です。利便性と安全性、スピードと慎重さをどう両立させるのかという問いが改めて突きつけられています。
- 最高レベルの軍事作戦情報を、どこまで民生アプリで扱うべきなのか
- 誤送信が起きた場合に、どのようなチェック体制や二重・三重の防御策を設けるべきなのか
- 政治家や高官の説明責任を、与党と野党がどう共有していくのか
こうした論点は、米国だけでなく、デジタル化が進む各国の行政や軍、企業にも共通する問題といえます。
日本にとっての示唆
日本でも、行政や企業、メディアの現場で、グループチャットやメッセージアプリは欠かせない連絡手段になっています。今回の米国の事例は、たとえ技術的に高度な暗号化が施されていても、人為的なミス一つで情報が外部に流出し得ることを改めて示しました。
重要な情報をどのツールで扱うのか、そのツールにどのレベルの情報まで載せてよいのか、そして万が一の誤送信が起きたときにどう対応するのか。日常的にスマートフォンでやり取りを行う私たち一人ひとりにとっても、他人事ではないテーマです。
イエメン攻撃計画のグループチャット漏えいをめぐる今後の調査と議論は、軍事と外交だけでなく、デジタル時代の情報リテラシーや組織の危機管理を考えるうえでも、注視しておく価値がありそうです。
Reference(s):
U.S. officials' Yemen strike plans leaked in security breach
cgtn.com







