アルジェリアとフランス、安全保障・移民協力を再開へ 植民地「記憶」の溝は埋まるか
アルジェリアとフランスが、安全保障や移民、歴史認識をめぐる協力を「即時に」再開することで合意しました。ここ数カ月緊張が高まっていた両国関係は、修復に向けて新たな一歩を踏み出した形です。
月曜日の電話会談で合意されたこと
アルジェリアのアブデルマジド・テブブン大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、月曜日に電話で会談しました。アルジェリア大統領府によると、会談は「開かれた友好的な」雰囲気で行われ、最近の緊張を含む二国間関係全体について話し合ったとされています。
両首脳は、とくに次の点で一致しました。
- 安全保障分野での協力を直ちに再開すること
- 移民に関する協力を、信頼性があり、円滑で効果的な形でただちに再開すること
- 両国が「対等な対話」に戻る必要があること
この「対等な対話」という言葉には、かつて宗主国と植民地の関係にあった両国が、今後は対等な主権国家として向き合うべきだというメッセージが込められていると受け止められます。
植民地支配の「記憶の問題」と歴史家合同委員会
電話会談では、フランスによる植民地支配の「記憶の問題」に関する議論も改めて位置づけられました。両国は、歴史家で構成される共同委員会「歴史家合同委員会」の活動を即時に再開させることで合意しました。
この委員会は、
- 2022年に設置
- 「記憶の問題」、すなわち1830年から始まったフランスのアルジェリア支配と、8年に及ぶ独立戦争(1962年の独立)をめぐる認識のギャップを埋めること
- 両国の和解に向けた具体的な提案をまとめること
などを目的にしています。
大統領府によると、この歴史家合同委員会はフランスで近く会合を開き、今夏までに作業の成果と具体的な提案を示すことが期待されるとされました。植民地支配の評価をめぐる合意形成は容易ではありませんが、専門家レベルで事実を検証し、共通の土台を探る試みが続いています。
アルジェリア議会は「植民地支配を犯罪化」する法案作りへ
こうした歴史認識をめぐる動きは、アルジェリア側の国内政治とも密接に結びついています。3月23日、アルジェリア議会はフランスの植民地支配を犯罪として位置づける法律の草案づくりを進めるための委員会を設置しました。
この動きは「歴史的」と評価されており、議員や歴史家、法学者から幅広い支持を集めています。アルジェリアは、132年にわたるフランスの植民地支配期間に起きた行為を、フランス側が公式に「犯罪」として認めることこそが、過去のわだかまりを乗り越え、安定した建設的な関係を築くための前提だと主張してきました。
移民・司法協力の再開と閣僚級往来
今回の電話会談では、安全保障だけでなく、司法や移民をめぐる協力の再開も確認されました。アルジェリア大統領府によると、二国間の司法協力は再開されることになり、その一環として、ジェラルド・ダルマナン仏法相が近くアルジェリアを訪問する予定だと発表されました。
また、フランスのジャン=ノエル・バロ外相が、進展を具体化するために4月6日にアルジェを訪問することも伝えられています。両大統領は、対面での首脳会談を近い将来開催することで原則合意したとされています。
移民や安全保障、司法分野での協力は、国内政治とも絡むセンシティブなテーマですが、こうした分野での対話が途切れると、現場レベルでの摩擦や不信が一気に高まりやすくなります。今回の合意は、まず「話し合うための枠組み」を立て直す試みだと見ることができます。
経済協力とアルジェリアEUパートナーシップ協定の見直し
両首脳は、今後の「将来分野」における経済協力を深めることの重要性も確認しました。マクロン大統領は、アルジェリアと欧州連合(EU)とのパートナーシップ協定の見直しについて、フランスとして支持を改めて表明しました。
アルジェリア側はこの協定について、これまで「不均衡」であり、主に欧州側の利益に偏っていると批判してきました。今回の電話会談でフランスが見直しへの支持を再確認したことで、
- アルジェリアの経済主権や産業育成をどう位置づけるか
- 地中海を挟んだ南北の経済関係をどのようなバランスにしていくのか
といった点が、あらためて問われることになりそうです。
作家ブアレム・サンサル氏への恩赦要請
電話会談では、個別の人権案件も取り上げられました。マクロン大統領はテブブン大統領に対し、フランスとアルジェリアの二重のルーツを持つ作家ブアレム・サンサル氏への恩赦を改めて求めました。
サンサル氏は現在80歳で、「国家統一の侵害」に当たるとされる発言を理由に、5年の禁錮刑を言い渡されています。マクロン大統領は、その高齢と健康状態を理由に、寛大な措置を検討するよう呼びかけたと伝えられています。
人権や表現の自由をめぐる個別案件は、二国間関係を敏感に揺さぶることがありますが、首脳レベルの直接対話の場でこうしたテーマが取り上げられたこと自体、溝を隠さず議論する意思の表れとも言えそうです。
なぜ両国関係はこじれていたのか
今回の電話会談の背景には、ここ数カ月で一段と深まっていたアルジェリアとフランスの外交的な不協和音があります。報道によれば、その主な要因として次のような点が指摘されています。
- 移民政策をめぐる対立
- 植民地支配の歴史をどう評価するかという「記憶の問題」
- 西サハラ問題をめぐるフランスのモロッコ支持へのアルジェリア側の不満
- その他、象徴的な発言や外交上の行き違いが積み重なってきたこと
とくに移民と歴史認識は、どちらの社会にとっても感情に訴えやすいテーマです。国内世論を意識しながらも、相手国との関係を壊しすぎないようにするという、難しい舵取りが求められてきました。
これからの焦点:対話は実を結ぶか
今回の合意によって、アルジェリアとフランスの関係は「対話の再起動」という段階に入りました。ただし、具体的な成果が出るまでには時間がかかる可能性があります。
今後の注目ポイントとしては、例えば次のような点が挙げられます。
- 安全保障・移民・司法協力の再開が、実際の運用レベルでどこまで進むのか
- 歴史家合同委員会がどのような「共通認識」や提案を示すのか
- アルジェリア議会が進める「植民地支配の犯罪化」法案づくりが、国内外の議論にどう影響するのか
- 予定されている閣僚級訪問や首脳会談が、どのような新たな合意を生むのか
歴史、移民、安全保障、経済が複雑に絡み合うアルジェリア・フランス関係は、ヨーロッパとアフリカ、地中海地域全体の安定にも直結するテーマです。今後の対話の行方を追うことで、過去の清算と未来志向の協力を両立させることの難しさ、そして可能性について、私たち自身も考えるきっかけを得られそうです。
押さえておきたい3つのポイント
- 両国首脳が電話会談で、安全保障・移民・司法分野などの協力再開と「対等な対話」への回帰で合意した。
- 植民地支配をめぐる「記憶の問題」では、歴史家合同委員会が活動を再開し、アルジェリア議会も植民地支配を犯罪化する法案作りを進めている。
- 経済協力やEUとのパートナーシップ協定見直し、人権案件への対応など、今後の交渉の行方が両国関係だけでなく地域情勢にも影響を与える可能性がある。
Reference(s):
Algeria, France agree to resume security cooperation amid rift
cgtn.com








