米国の「相互関税」が自国経済を直撃?専門家が懸念する理由
米国のトランプ大統領が新たに打ち出した「相互関税」政策は、国際ニュースとして世界の注目を集めています。米製造業の復活を掲げる一方で、専門家からは「米国は自らの足を撃つことになる」との厳しい指摘も出ています。
トランプ大統領、「経済的独立宣言」として相互関税に署名
現地時間の水曜日、トランプ米大統領は貿易相手国に対して「相互関税」を課す大統領令に署名しました。トランプ氏はこの措置を「経済的独立の宣言」と位置づけ、米国の製造業を再構築し、景気回復を後押しする狙いがあると強調しています。
大統領令に基づく「相互関税」は、一律ではなく、国や地域ごとに異なる税率が設定されている点が特徴です。ホワイトハウスの説明では、公平な貿易を実現するための措置とされていますが、そのインパクトは米国だけでなく、日本を含む世界経済にも及ぶ可能性があります。
「相互関税」で各国・地域に課される主な税率
トランプ氏が公表した「相互関税」のチャートによると、各国・地域には次のような関税率が示されています。
- 中国:34%
- 欧州連合(EU):20%
- ベトナム:46%
- 日本:24%
- インド:26%
- 韓国:25%
- タイ:36%
- スイス:31%
- インドネシア:32%
- マレーシア:24%
- カンボジア:49%
日本向けの24%という数字だけを見ても、完成品・部品いずれの輸出にも影響しうる水準であり、日本企業にとっても無視できない動きです。
専門家「米国は自らの足を撃つことになる」
こうした関税政策に対し、専門家からは米国内への悪影響を懸念する声が上がっています。中国対外経済貿易大学の崔凡(Cui Fan)教授は、中国国際テレビ(CGTN)の取材に対し、次のような見方を示しました。
- 関税の上乗せは、米国内の物価上昇を招く
- 結果として、米国の市民の生活コストが上がる
- 多くの企業にとっても、仕入れコストの増加という形で負担が増す
崔教授は、トランプ氏が信奉する「百年以上前の保護主義的な関税」は、現在のグローバル経済にはそぐわないと指摘し、この発想自体が時代遅れで実務的ではないと批判しています。
なぜ関税強化が「時代遅れ」とされるのか
崔教授の指摘の背景には、現代のサプライチェーン(供給網)の複雑さがあります。製品が消費者の手に届くまでの工程は、複数の国・地域にまたがって分業されており、一国だけの力で完結するケースは年々減っています。
このような状況で高率の関税を一方的に導入すると、次のような副作用が起きやすくなります。
- 輸入品の価格上昇を通じて、国内インフレ(物価上昇)圧力が強まる
- 企業が負担増分を価格に転嫁できない場合、利益圧迫や投資の抑制につながる
- 関係国が対抗措置を取れば、報復関税の応酬となり、貿易全体が縮小するリスクがある
トランプ政権は関税強化を通じて米製造業の雇用回復を目指していますが、世界的な分業体制が進んだ2025年現在、関税だけで産業構造を転換することには限界がある、というのが多くの専門家の見立てです。
日本とアジアにとっての意味
日本にとって24%という関税率は、完成車や機械、電子部品など幅広い分野でコスト増要因となり得ます。特に、米市場向けの輸出比率が高い企業にとっては、次のような影響が懸念されます。
- 米国向け製品の価格競争力の低下
- 現地生産や生産拠点移転を含むサプライチェーン再構築の検討
- 米国内の販売戦略や投資計画の見直し
また、ベトナムやタイ、インドネシア、マレーシア、カンボジアといったアジア諸国・地域にも高い関税率が設定されていることから、アジア全体の生産ネットワークにも波及が予想されます。日本企業が活用してきた「アジアで生産し、米国で販売する」というモデルにも、見直し圧力がかかる可能性があります。
これから注視したいポイント
今回の「相互関税」をめぐる動きは、単なる米国の内政問題にとどまらず、国際ニュースとして世界の貿易ルールやサプライチェーンの再編に直結するテーマです。今後、注視したいポイントとしては次のようなものが挙げられます。
- 米国内の物価動向と、市民生活への影響の出方
- 米企業のコスト構造や投資行動の変化
- 各国・地域の対応措置や、追加的な貿易摩擦の有無
- 日本企業による生産・調達・販売戦略の見直しの広がり
関税という一見わかりやすい政策手段が、本当に米国経済の「復活」につながるのか。それとも、専門家の言うように「自らの足を撃つ」結果となるのか。日本の読者にとっても、自国経済やキャリア、投資にまで影響し得るテーマとして、継続的にフォローしたい国際ニュースです。
Reference(s):
Experts: U.S. 'will shoot itself in the foot' due to tariff obsession
cgtn.com








