トランプ米大統領の相互関税 大統領令は「米国対世界」か
トランプ米大統領が相互関税と呼ばれる新たな関税方針に署名し、全ての輸入品に最低でも10%の追加関税を課す方針を打ち出しました。専門家は、この関税政策は米国が世界に背を向けつつあることを示していると見ています。
全輸入品に10%上乗せ 相互関税大統領令の中身
大統領令によると、例外的な扱いが明記される場合を除き、全ての輸入品に一律で10%の追加関税が課されます。この措置は来年4月5日に発効する予定です。
さらにホワイトハウスの文書によれば、米国との貿易収支で特に大きな赤字を抱える国や地域に対しては、個別により高い水準の相互関税を上乗せする方針が示されています。こちらは来年4月9日から適用されるとしています。
相互関税という考え方は、相手国が米国産品に課している関税水準に合わせて、米国も同程度かそれ以上の関税を課すという発想に基づくものです。トランプ政権は、これによって貿易条件の対等化を図ると説明しています。
専門家「米国は世界に背を向けた」
こうした動きについて、国際問題の専門家からは、今回の関税政策は米国が世界に対して自ら壁を築きつつあることを示すものだという厳しい見方が出ています。
中国社会科学院米国研究所の魏南枝研究員は、CGTNの取材に対し、米国にとって不公平だとされる現在の国際経済秩序は、実は長年にわたって米国の主導で形成され、米国自身が最大の受益者だったと指摘しました。
魏氏は、米国が今になってそのルールに異議を唱え、関税という形で一方的に圧力を強めることは、結果として米国が世界に背を向ける姿勢として映りかねないと懸念しています。
ドルの覇権と米国製造業のジレンマ
魏氏はさらに、ドルの覇権構造が米国の製造業労働者にとって不利に働いてきた側面にも言及しました。基軸通貨ドルの強さは、金融市場には恩恵をもたらす一方で、輸出産業の国際競争力をそぎ、工場の海外移転を促してきたと分析しています。
ただし、そうした構造的な問題に対して、今回のような相互関税だけで短期間に製造業を国内に呼び戻すことは難しいとの見方も示しました。企業の投資判断やサプライチェーンは長期の視点で構築されており、単発の関税措置だけで一気に逆転させることは現実的ではないという指摘です。
日本と世界経済への影響は
全ての輸入品に追加関税を課すという方針は、米国と深い経済関係を持つ各国や地域に広く影響を及ぼす可能性があります。米国向け輸出に依存する企業にとっては、価格競争力の低下や利益圧迫につながりかねません。
一方、米国内では輸入品価格の上昇を通じて、消費者物価が押し上げられるリスクもあります。関税は最終的に企業と消費者のどちらが負担するのか、分野や品目ごとに影響の出方は異なるとみられます。
各国が対抗措置として自国の関税を引き上げれば、報復の応酬となり、世界貿易全体が縮小する懸念もあります。今回の相互関税が、既存の多国間の通商ルールとの関係でどのような位置づけになるのかも、今後の注目点です。
これから考えたい三つの論点
今回の相互関税をめぐる議論は、日本の読者にとっても他人事ではありません。日常生活にも関わる問題として、次のような論点を押さえておくとよさそうです。
- 保護貿易と国際協調のバランスをどこで取るべきか
- 通貨体制や金融市場の構造と、雇用・賃金の問題はどのようにつながっているのか
- 日本企業や家計は、米国の通商政策の変化にどう備えるべきか
米国の相互関税政策は、単なる関税の引き上げにとどまらず、戦後続いてきた国際経済秩序そのものへの問いかけでもあります。今後の動きと各国の対応を、冷静に追っていく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








