メキシコ自動車産業が好調な理由:米輸入関税とグローバル供給網の現実 video poster
メキシコの自動車産業が、米国の輸入関税や「アメリカ製」志向の議論の中でも成長を続けています。その背景には、国境を越えて張り巡らされたグローバルなサプライチェーンの存在があります。
「アメリカ製の車を買えば節約できる」発言
米国のドナルド・トランプ大統領は、世界から米国への輸入品に関税を課す大統領令に署名する数日前、米国の消費者に対して「米国内で生産された車を購入すれば、お金を節約できる」と呼びかけました。
狙いは、国内製造業を守り、海外からの輸入、とくに自動車や鉄鋼などの品目を抑えることでした。自動車産業は雇用規模も大きく、政治的にも象徴性の強い分野です。
専門家「完全な米国製の車はほぼ存在しない」
しかし、グローバルな自動車産業の専門家たちは、実際には「すべてが米国で作られた車」を購入するのは、ほぼ不可能だと指摘します。メキシコシティから伝えるCGTNのフランク・コントレラス記者の報道も、この点を強調しています。
現代の自動車は、数万点もの部品から構成されます。その部品は、エンジン、電子制御装置、ワイヤーハーネス(車内配線)、シート、生産用の金型に至るまで、多くが国境をまたいで調達されています。
- 設計は米国でも、電装部品はメキシコやアジアで生産
- ボディは一国で組み立てても、部品は複数の地域から供給
- 物流や在庫管理も、複数の国や地域が連携して成立
こうした現実の中で、「完全に米国だけで作られた車」を探すのは、ほとんど意味をなさない問いになりつつあります。
メキシコ自動車産業が成長する理由
こうしたサプライチェーンの網の目の中で、メキシコの自動車産業はむしろ成長しています。タイトルが示すように、メキシコの自動車産業は、世界の供給網との結びつきによって「好調さ」を維持しています。
背景には、次のような構造的な要因があります。
- 米国市場に近く、陸路での輸送コストが比較的低いこと
- 多国籍メーカーにとって魅力的な生産拠点となる人材と産業基盤
- 部品メーカーが集積し、調達から組立までを一体で行える体制
その結果、1台の車が「設計は米国」「主要部品はメキシコと他の国や地域」「最終組立は米国またはメキシコ」といった形で生まれるケースが一般的になっています。
「国産」の意味が問い直される
自動車に限らず、スマートフォンや家電、半導体など、複雑な製品はほぼすべて、グローバルなサプライチェーンに依存しています。ある国にとっての「国産品」とは何を指すのか、その意味は2020年代の今、大きく問い直されています。
最終的にどこの工場で組み立てられたのか。どの国や地域で付加価値(利益)が多く生まれているのか。それとも、消費者に届くまでの全体のネットワークを一つの「共同プロジェクト」としてとらえるべきなのか。メキシコと米国の自動車産業の関係は、その象徴的な事例と言えます。
日本の読者にとっての示唆
日本の自動車メーカーやサプライヤーも、北米やアジア、欧州などに工場と部品供給網を張り巡らせています。メキシコと米国の事例は、日本にとっても他人事ではありません。
- 「どこ製か」ではなく、「どう作られたか」に目を向ける
- 貿易政策の変化が、サプライチェーン全体に及ぼす影響を意識する
- 国境を越えた協力関係が、製品の品質や価格にも直結することを理解する
メキシコの自動車産業が示すのは、対立構図ではなく、国境をまたいだ分業と協力の現実です。日々ニュースに触れる私たちも、「国」と「モノづくり」の関係を、一段深いレベルで考えてみるタイミングに来ているのかもしれません。
Reference(s):
Mexico’s auto industry thrives amid global supply chain ties
cgtn.com







