欧州各地で「Hands Off」デモ トランプ政権の関税政策に抗議
欧州各地で広がる「Hands Off」デモ
トランプ政権が導入した新たな関税政策に抗議する「Hands Off」運動が、欧州各地の在外アメリカ人や市民に広がっています。2025年4月5日には、ロンドン、パリ、ベルリン、リスボンなどでデモが行われ、米国の「相互関税」や市民的自由への懸念が一斉に訴えられました。世界の株式市場が大きく揺れるなか、経済と民主主義の行方を考える国際ニュースとして注目されています。
背景:世界市場を揺らす「相互関税」とは
今回のデモのきっかけとなったのは、トランプ政権が打ち出した新たな関税制度です。すべての輸入品に一律10%の「最低基準関税」を課し、そのうえで、米国と貿易赤字が大きい国や地域には、個別により高い「相互関税」を上乗せする仕組みとされています。
この措置により、世界の株式市場は急落し、各国の投資家や企業のあいだで不安が広がりました。関税の引き上げは、モノやサービスの価格、雇用、サプライチェーン(供給網)に影響しうるためです。欧州での抗議行動は、こうした経済的な不確実性に対する懸念と、ルールに基づく貿易への支持を象徴する動きとも言えます。
ロンドン:在英アメリカ人が示した連帯
ロンドンでは、トラファルガー広場に数百人が集まりました。その中には、米民主党の在英組織であるDemocrats Abroad UK(DAUK)のメンバーも含まれ、参加者は「No to MAGA hate」「Greenland is Not For Sale」「Hate Will Never Make America Great」といったメッセージを掲げました。
DAUKはSNS上で、自分たちの権利やコミュニティ、そしてよりよい未来のために抗議の声を上げ続ける必要があると呼びかけています。オンラインと街頭の行動を組み合わせ、米国発の「Hands Off」運動を欧州へと広げる狙いです。
参加者の一人である37歳の女性は、第二次世界大戦に従軍した祖父から受け継いだ星条旗を身にまとってデモに参加しました。彼女はトランプ政権への強い失望感を示しつつ、「世界を孤立させたくない。長い目で見て誰の利益にもならないと思う。米国内で行進している友人たちと連帯したかった」と話し,在外アメリカ人としての複雑な思いを語りました。
リスボン:年金と市民的自由への不安
ポルトガルの首都リスボンでも、数百人規模のアメリカ人が集まり、市民的自由や表現の自由を守るよう訴えました。現地在住のアメリカ人が中心となって企画したこの集会では、「Hands Off the Constitution」「What America Needs, Portugal Knows」といったスローガンが掲げられました。
デモに参加した活動家のCaryl Hallbergさん(73)は、長年の民主党支持者で、ヨーロッパ各地を4年間旅した後にポルトガルへ移住しました。Hallbergさんは、一部の米国人退職者の間ではすでに年金削減の影響が出ていると懸念を示し、関税政策やドル安の動きが生活に与える影響を心配していると語りました。また「権利はあらゆるレベルで奪われつつある」として、トランプ政権の経済運営と人権政策の両面に警戒感を表明しました。
ポルトガルの大学に所属する研究者で、ポルトガル人の配偶者を持つJaiy Conboyさん(72)は、自作の抗議歌「I Will Not Be Silent」を披露しました。彼は、現在の政策が混乱を生み、権力を握ることそのものが目的になっていると指摘し、黙らずに声を上げ続ける重要性を訴えました。
パリとドイツ:法の支配と「混乱の終わり」を求めて
フランスのパリでは、およそ200人が共和国広場に集まりました。参加者は、トランプ政権を批判するスピーチを行い、「Resist the Tyrant」「Rule of Law」といったプラカードを掲げました。集会では、ボブ・ディランの反戦歌「Masters of War」が演奏され、言葉と音楽の両面からメッセージが発信されました。
ドイツでも、ベルリンとフランクフルトで抗議行動が行われました。ベルリンでは、テスラのショールーム前や在ドイツ米国大使館前に人々が集まり、トランプ政権と実業家イーロン・マスク両者への批判の声が上がりました。参加者のプラカードには、米国で続く「混乱の終わり」を求めるメッセージも見られました。
全米1400件超の抗議とつながる欧州の動き
欧州での「Hands Off」デモの前には、今年1月以降、米国内でも抗議行動が相次いでいました。経済、移民、人権をめぐるトランプ政権の政策に反対するため、市民団体や労働組合、退役軍人団体など150以上のグループが連携し、全米で1,400件を超える抗議行動が組織されたとされています。
今回の欧州でのデモは、そうした米国内の動きと連帯する形で行われたもので、国境を越えた市民のネットワークが、同じスローガンのもとに結びついていることを示しています。オンラインで共有されるハッシュタグやメッセージが、物理的な距離をこえて共通の「場」をつくり出している点も、現在の抗議運動の特徴と言えるでしょう。
日本からこのニュースをどう読むか
今回の「Hands Off」運動は、単に米国と欧州のあいだの出来事ではありません。輸入品に広く関税をかけ、特定の国や地域により高い関税を課す仕組みは、世界の多くの経済に影響を与える可能性があります。株式市場の下落は、その不安を象徴的に映し出しています。
同時に、この動きは「経済政策は生活や権利と切り離せない」という認識の広がりも示しています。年金や物価、市民的自由、法の支配――今回のデモで掲げられたテーマは、どれも私たちの日常と無関係ではありません。
グローバル化とデジタル化が進むなかで、海外在住者や他国の市民が、ある国の政策に対して声を上げる場面は今後も増えていくと考えられます。2025年12月の現在、欧州での「Hands Off」デモは、国境を越えた連帯のあり方と、経済と民主主義をどう両立させるかという問いを、あらためて私たちに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








