メキシコ物流サミットで見えたAI革命 揺らいだ世界サプライチェーンの次の一手 video poster
新型コロナウイルスのパンデミックで世界のサプライチェーンが大きく揺れたあと、物流業界はAI(人工知能)を本格的に取り入れ始めています。最近メキシコシティで開かれた「Logistics World Summit & Expo」では、その最前線が集中的に議論されました。
パンデミックで浮き彫りになったサプライチェーンの脆さ
2020年前後の新型コロナ流行期、港の閉鎖やフライト減便、コンテナ不足などが重なり、世界中でモノが届かない状況が続きました。多くの企業が「一部の地域や少数のサプライヤーに頼りすぎている」という現実を突きつけられました。
この経験をきっかけに、グローバル企業はサプライチェーンの可視化とリスク管理を最優先課題として位置づけています。そこで注目を集めているのが、膨大なデータを処理し、変化を素早く検知できるAIです。
メキシコシティの「Logistics World Summit & Expo」とは
メキシコの首都メキシコシティで開かれた「Logistics World Summit & Expo」は、物流・サプライチェーン分野の企業や専門家が集まる国際イベントです。海運・陸運・航空輸送、倉庫業、EC(電子商取引)企業など、幅広いプレーヤーが参加し、AIを含む最新テクノロジーの活用事例を紹介しました。
中国の英語ニュースチャンネルCGTNのAlasdair Baverstock記者は、会場から、AIがすでに実際のオペレーションの中で使われている様子や、各社の挑戦を伝えています。
現場で使われるAIの具体的なイメージ
サミットでは、AIがどのように物流現場を変えているのか、具体的なイメージが共有されました。代表的な応用分野は次のようなものです。
- 輸送ルートの最適化:渋滞情報や気象データ、港の混雑状況をAIがリアルタイムに分析し、最も早く、コストの低いルートを自動で提案する。
- 需要予測と在庫管理:過去の販売データに加え、SNSのトレンドやイベント情報なども取り込み、「どこで、いつ、どれだけ売れそうか」を高精度で予測し在庫を配置する。
- リスク検知とリアルタイム対応:港湾ストや自然災害といったリスク情報を常に監視し、想定ルートが止まる前に別ルートや別の拠点に切り替える。
こうした仕組みは、これまで人の経験と勘に頼っていた部分を補い、判断のスピードと精度を上げることを狙っています。
世界のサプライチェーンはどこまで「賢く」なるのか
AI導入が進むと、サプライチェーンは「起きた問題に対応する」から、「起こりそうな問題を先に読む」方向へと変わっていきます。いわば予測するサプライチェーンです。
例えば、ある地域で感染症や政治的な緊張が高まりつつあるとき、AIがニュースや各種データからその兆候を検知し、「数週間後にサプライチェーンが止まるリスク」を早めに示せるようになります。企業はそのサインをもとに、調達先の分散や輸送経路の変更といった対策を前倒しで打てるようになります。
なぜ今、メキシコと中南米が注目されるのか
メキシコは、北米市場と中南米、さらに中国本土やアジア各国との間を結ぶ重要な物流ハブとして存在感を高めています。メキシコシティで開かれる国際物流サミットが注目される背景には、次のようなポイントがあります。
- 北米市場との近接性:米国・カナダ向けの輸送拠点として、メキシコの港湾や物流インフラの重要性が増している。
- 生産拠点の多様化:企業が生産や調達先を分散させる中で、中南米を含む新たなサプライチェーン網の構築が進んでいる。
- デジタル化への投資:物流のデジタル化やAI導入に積極的な企業が集まり、新しいビジネスモデルが生まれつつある。
メキシコシティのサミットは、こうした動きがどこまで進んでいるのかを示す「ショーケース」の役割も果たしています。
AI導入のメリットとリスク
AIは世界のサプライチェーンを効率化する強力なツールですが、メリットだけではなく、リスクも伴います。
- メリット
- 輸送コストの削減とリードタイム(発注から納品までの時間)の短縮
- 在庫の持ちすぎや欠品の減少
- リスク発生時の被害を最小化するための早期対応
- リスク・課題
- データが偏っていると、AIの判断も偏ってしまう危険性
- システム障害やサイバー攻撃が起きた場合の影響が大きくなる
- 現場の働き方やスキルをどうアップデートしていくかという人的課題
サミットでは、AIを「魔法の杖」としてではなく、人と組織の変革とセットで進める必要性が強調されました。
日本とアジアの企業にとっての意味
日本を含むアジアの企業にとって、メキシコシティでの議論は決して他人事ではありません。アジアと北米、中南米を結ぶ物流網の中で、日本企業も重要なプレーヤーだからです。
特に2025年現在、企業が考えておきたいポイントは次のようなものです。
企業が今から準備できる3つのポイント
- データを集めて整理する
AIを活用するには、まずデータが必要です。輸送実績、在庫、販売、遅延の原因など、バラバラに管理されている情報を統合し、分析しやすい形に整えることが第一歩になります。 - 現場と経営が一緒にAIの役割を考える
AI導入は、システム部門だけでは進みません。ドライバーや倉庫スタッフ、調達担当者など、現場の知見をどうAIに反映させるか、経営層と一緒に議論することが重要です。 - サプライチェーン全体で協力する
自社だけがデジタル化しても、取引先がアナログのままでは効果が限られます。取引先や物流パートナーとデータ共有のルールを話し合い、全体でレベルアップしていく視点が求められます。
「人間とAIの協働」がこれからの標準に
メキシコシティでの物流サミットが示したのは、AIがサプライチェーンの主役になるというより、人間とAIが協働する新しい標準が生まれつつあるという姿です。
AIは、膨大な情報を処理し、リスクを早く知らせてくれる存在です。一方で、最終的にどのリスクをどこまで取るのか、どの市場にどれだけ投資するのかといった判断は、人間が担う必要があります。
パンデミックを経た2025年の今、世界のサプライチェーンは大きな転換点に立っています。AIをどう使いこなすかは、日本を含む各国・各地域の企業と社会にとって、これから数年を左右する重要なテーマになっていきそうです。
Reference(s):
AI revolutionizes global supply chains at Mexico City summit
cgtn.com







