国連事務総長「貿易戦争に勝者はいない」 米国の一律関税に懸念
米国によるほぼ全ての国への10%関税方針に対し、国連のアントニオ・グテレス事務総長が「貿易戦争に勝者はいない」と強い懸念を示しました。2025年12月現在、世界経済の不透明感が高まる中、この発言はなぜ重みを持つのでしょうか。
国連トップ「貿易戦争に勝者はいない」
グテレス事務総長は、今週行われた記者会見で、国連としての立場を改めて確認しました。米国のドナルド・トランプ大統領が、世界のほぼすべての国からの輸入品に対し、最低10%の関税を課す決定をしたことについて質問を受けた場面です。
事務総長は次のような趣旨のメッセージを発しました。
- 貿易戦争は「極めてマイナス」であり、誰も勝者にならない
- とくに、脆弱な開発途上国への影響を強く懸念している
- 景気後退(リセッション)が起きれば、世界の最も貧しい人々に壊滅的な結果をもたらし得る
国連トップがここまで明確に懸念を示したことは、今回の関税措置が単なる二国間の摩擦ではなく、国際経済全体に波及しかねない問題だと見ていることを示しています。
そもそも「貿易戦争」とは何か
今回の国際ニュースの背景にある「貿易戦争」という言葉は、しばしば耳にする一方で、その中身は分かりづらい概念でもあります。簡単に整理すると、次のような状態を指します。
- 一国が輸入品に高い関税(税金)をかける
- 相手国が対抗措置として、同じように関税を引き上げる
- 報復の応酬が続き、モノやサービスの流れが細る
グテレス事務総長が「誰も勝者にならない」と強調したのは、最終的に負担を背負うのが企業や労働者、消費者であり、各国の経済成長そのものが損なわれると見ているからです。
10%関税が世界経済に与えうる影響
今回、米国が「ほぼ全ての国」に対して最低10%の関税を上乗せする方針は、広い範囲に影響が及びます。具体的には、次のような経路が想定されます。
- 輸入品価格の上昇:関税分が価格に転嫁され、消費者の生活コストが上がる可能性がある
- 企業コストの増加:部品や原材料を輸入に頼る企業は生産コストが上昇し、利益圧迫や投資減少につながりやすい
- 貿易の萎縮:不確実性が高まることで、企業が取引を控えたり、サプライチェーン(供給網)の再編を迫られる
国連が問題視しているのは、こうした影響が積み重なることで、世界全体の需要が弱まり、景気後退の引き金となりかねない点です。
最も脆いのは「開発途上国」
グテレス事務総長は、とくに開発途上国への影響を「非常に心配している」と述べ、「壊滅的になり得る」とまで表現しました。なぜここまで強い言葉を使ったのでしょうか。
途上国の多くは、次のような構造的な弱さを抱えています。
- 少数の輸出品目や限られた貿易相手国に依存している
- 財政の余裕が小さく、景気悪化時に大胆な対策を取りにくい
- 貧困層の割合が高く、失業や物価上昇の影響を直接受けやすい
こうした国々にとって、大国同士の関税引き上げは、自国が直接の当事者でなくとも、輸出需要の減少や投資の減退という形で跳ね返ってきます。その結果、教育や医療などの予算が削られ、長期的な発展にもブレーキがかかるおそれがあります。
リセッションと「最も貧しい人々」への連鎖
グテレス事務総長は、「景気後退が起きないことを心から願う」とした上で、もしリセッションに陥れば「世界の最も貧しい人々に劇的な影響を及ぼす」と警告しました。
リセッションとは、経済活動が一定期間にわたって縮小する局面を指します。その際、真っ先に影響を受けやすいのは、社会的なセーフティーネットが十分でない国や地域に暮らす人々です。
- 雇用機会が減り、非正規や日雇い労働者が仕事を失いやすい
- 食料や生活必需品の価格が上がると、家計に直撃する
- 政府の財政が厳しくなり、社会保障や支援策が削減される危険がある
グテレス事務総長のメッセージは、関税や貿易の議論が数字や統計の問題に見えがちな一方で、その裏には具体的な生活や命がかかった現実があることを、あらためて思い出させるものです。
この国際ニュースから何を考えるか
今回の発言は、特定の国の立場を批判するというよりも、貿易をめぐる対立が「ゼロサムゲーム」ではないという国連の基本的なメッセージを再確認したものと言えます。
2025年12月の今、私たちが注視したいポイントは次のような点です。
- 各国が対話や協議を通じて、関税の応酬を避けられるか
- 開発途上国や脆弱な立場の人々への影響を和らげる国際的な枠組みが機能するか
- 自国中心の議論だけでなく、世界全体の持続可能な成長という視点が共有されるか
スマートフォン一つで世界中のニュースにアクセスできる今だからこそ、こうした国際ニュースを「遠い出来事」として流してしまうのか、それとも自分の仕事や生活、社会のあり方を考え直すきっかけにするのかが問われています。
「貿易戦争に勝者はいない」というシンプルな言葉の背景にある、複雑で人間的な問題に、私たち一人ひとりがどこまで向き合えるか。2025年の世界を読み解くうえで、重要な問いになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








