トランプ政権の関税引き上げに各国反発 ブラジルが強く批判
トランプ米大統領による新たな関税引き上げ「互恵関税」に対し、複数の国が多国間主義や世界貿易機関(WTO)の原則に反すると批判し、対抗措置も取り始めています。なかでもブラジルのルラ大統領の発言と、ブラジル世論の変化が注目されています。
トランプ政権の「互恵関税」とは何か
トランプ政権は現在、いわゆる「互恵関税」と呼ばれる新たな通商政策を掲げています。これは、相手国が米国製品に課している関税に合わせて、米国も同程度の関税をかけようとする発想です。
こうした関税の引き上げに対し、複数の国が「多国間でルールを決める」という多国間主義や、WTOが定める原則に反するとして懸念を示し、反発しています。
ブラジル向けには、すでに鉄鋼やアルミ製品への関税が引き上げられているうえ、最近では幅広い品目に一律10%の追加関税が課されました。ブラジル側は、自国経済への影響だけでなく、国際貿易ルールそのものが揺らぐと見ています。
ブラジル・ルラ大統領「そんなやり方は機能しない」
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、サンパウロでのイベントで演説し、トランプ政権の新たな関税政策を厳しく批判しました。ルラ氏は、この関税が多国間主義の原則に反し、世界貿易のルールを一方的に書き換えようとする試みだと指摘しています。
一人の指導者が世界のルールを決めるのか
ルラ大統領は、突然一人の指導者が世界で起きるすべてのことのルールを決められると思い込んでいる、とトランプ氏を暗に批判しました。そのうえで、巨大な外洋船を一人で無理やり操舵しようとするようなもので、そんなやり方は機能しないと強調しました。
レーガン・サッチャー時代との対比
ルラ氏はまた、1980年代に米国のロナルド・レーガン大統領や英国のマーガレット・サッチャー首相が、保護主義に反対し自由貿易を掲げていたことを想起させました。当時の言説と比べると、現在の米国の姿勢は保護主義へ大きく舵を切っていると受け止めていることがにじみます。
ブラジル世論も米国とトランプ氏に厳しい評価
ブラジルの調査会社クアエストが最近公表した世論調査では、ブラジル国民の間での米国への見方が、この1年余りで大きく変化していることが明らかになりました。とくにトランプ大統領への評価が大きく割れていることがうかがえます。
調査結果の主なポイントは次のとおりです。
- 米国に否定的なイメージを持つ人は41%。2024年3月の24%から大きく増加
- 米国に好意的なイメージを持つ人は44%で、同じく58%から低下
- トランプ大統領について好ましくないと答えた人は、国民のほぼ半数に達する
これまでブラジルでは、米国に対する好意的な見方が否定的な見方を上回るのが通例でしたが、いまはほぼ拮抗するまでにバランスが変化しています。関税問題をきっかけに、対米感情そのものが揺れていることがうかがえます。
主要貿易相手・米国との関係に影
経済面で見れば、ブラジルにとって米国は2009年以降、中国本土に次ぐ第2の貿易相手国です。両国の経済は深く結び付いていますが、最近の関税引き上げは、その関係に新たな緊張を生み出しています。
トランプ政権はここ数週間で、ブラジルからのさまざまな輸入品に対し一律10%の追加関税を導入しました。すでに行われていた鉄鋼やアルミ製品への関税引き上げに続く措置であり、ブラジル側では輸出産業への打撃だけでなく、雇用や投資への影響も懸念されています。
多国間主義とWTOルールへの広がる懸念
今回の「互恵関税」は、単に米国とブラジルの二国間問題にとどまりません。複数の国が、トランプ政権の関税引き上げは多国間主義と世界貿易機関(WTO)のルールに反するとして、強い懸念と不満を表明しています。
多国間主義とは、本来であれば多くの国が話し合い、合意したルールに基づいて行動するという考え方です。WTOも、加盟国同士が一方的な関税引き上げや報復措置に走らないよう、ルールと紛争解決の仕組みを提供してきました。
一国が「自国第一」を掲げて関税を次々に引き上げれば、他国も対抗措置に踏み切らざるをえなくなり、結果として世界貿易全体が縮小するおそれがあります。各国が今回の動きを問題視している背景には、次のような懸念があります。
- ルールではなく力関係で貿易条件が決まる世界になりかねない
- WTOの役割が弱まり、国際貿易の予見可能性が低下する
- 貿易摩擦が長引けば、企業の投資や雇用決定にも悪影響が出る
日本・アジアの読者への問いかけ
今回の動きは、日本やアジアの国々にとっても無関係ではありません。米国と主要新興国との間で関税をめぐる対立が激しくなれば、サプライチェーンの見直しや市場の不安定化を通じて、間接的な影響が広がる可能性があります。
一国の通商政策が、他国の世論や国際ルールへの信頼をどのように揺さぶるのか。ブラジルのルラ大統領の発言や世論調査の結果は、その一端を示すものだと言えます。今後、関税引き上げがどこまでエスカレートし、各国の対抗措置がどのように展開するのかを注視する必要があります。
ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、「自国第一」と「多国間の協調」のどちらに軸足を置くべきかという問いは、決して遠い世界の話ではありません。今回のブラジルからの声を手がかりに、国際貿易と民主主義の関係について考えてみるきっかけにしてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Countries condemn Trump's tariff hikes, take countermeasures
cgtn.com







