米ロがイスタンブール協議 外交公館正常化へ前進
米国とロシアがトルコ最大の都市イスタンブールで、外交公館の機能正常化に向けた第2ラウンド協議を行い、銀行・金融サービスや外交不動産の扱いなどで前進があったと両国が表明しました。本記事では、その中身と意味を整理します。
イスタンブールで何が話し合われたのか
今回の協議は、ロシア・中央欧州担当のソナタ・クルター米国務次官補代理と、ワシントン駐在の新たなロシア大使アレクサンドル・ダルチエフ氏が率いる代表団によって行われました。2月の初会合に続く第2ラウンドで、場所はイスタンブールのロシア総領事館、協議は約5時間にわたり行われたとされています。
銀行・金融サービスの正常化で前進
ロシア総領事館の発表によると、今回は米ロ双方の外交公館が利用する銀行・金融サービスを確保する点で進展がありました。両国の代表団は合意した約束事項を正式な形にするため、外交文書を交換したとしています。
これらの約束は、次の点を目的としています。
- ロシアと米国の外交公館が、支払いなどに必要な銀行・金融サービスを妨げられることなく利用できるようにすること
- ロシア連邦による国連やその他の国際機関への拠出金を、滞りなく支払えるようにすること
近年の制裁や金融規制の強化により、外交公館が口座開設や送金で困難に直面するケースが増えてきました。公館の家賃や職員給与の支払いが滞れば、領事サービスや情報収集にも影響します。今回の合意は、こうした実務上のリスクを和らげる狙いがあるとみられます。
差し押さえ不動産の返還へロードマップ
さらに両国は、米当局が差し押さえた6件のロシアの外交関連不動産について、返還に向けたロードマップを策定することで一致しました。ロシア側は、これらの不動産はロシアが合法的に所有していると強調しています。
外交施設や職員用住宅などの不動産は、相手国へのメッセージ性が強い象徴的な資産でもあります。所有権をめぐる対立は、政治的な緊張を映す鏡となってきました。ロードマップ作成で、どこまで具体的な解決策が示されるかが今後の焦点です。
ビザと移動制限の緩和、直行便の再開も議題に
協議では、外交官などのビザ発給や渡航規制を緩和する可能性についても話し合われました。ロシア側は、米ロ間の直行便再開を進めるよう求めたとしています。
外交関係が冷え込むと、ビザ審査が長期化したり、外交官の移動範囲が制限されたりすることがあります。直行便の有無は、人の往来だけでなく、緊急時の対応能力にも影響します。今回の協議は、こうした実務面の障害をどこまで取り除けるかが問われています。
米ロそれぞれの視点:建設的だが課題も
米国の懸念は現地職員の雇用禁止
米国務省は声明で、今回の協議が2月27日の初会合で築かれた建設的なアプローチを継続するものだったと評価しました。一方で、ロシアが外交公館での現地職員の雇用を禁止する政策を続けていることに、改めて懸念を示しました。
現地職員は、ビザ受付や書類作成、通訳など、多くの日常業務を支える存在です。彼らを雇用できない場合、限られた人数の本国職員だけで業務を回す必要があり、領事サービスの速度低下や業務範囲の縮小につながりかねません。米側がこの点を問題視するのは、在外公館の実際の機能に直結するためです。
ウクライナ問題は議題外に
米国務省のタミー・ブルース報道官は、今回の協議でウクライナ情勢は議題になっていないと事前に説明していました。実際の協議内容も、金融サービスや不動産、ビザなど、主として外交公館の運営に関する技術的なテーマに絞られています。
安全保障や戦闘をめぐる大きな政治問題と、領事業務や外交施設の維持といった実務のレベルを切り分けることができるのか。今回の枠組みは、その一つの試みとも言えます。
相次いだ外交官追放、その後をどう修復するか
発表によると、近年、米ロ双方は相手国の外交官を多数追放してきました。その結果、両国の在外公館は必要な人員や機能を確保できず、通常の業務が大きく制約される状況が続いています。
外交公館が十分に機能しないと、次のようなリスクが高まります。
- 自国民へのパスポート更新や緊急支援などの領事サービスが滞る
- 相手国の社会や世論を把握する情報収集能力が落ちる
- 予期せぬ事故や事件が起きた際の連絡・調整が遅れる
今回のイスタンブール協議は、こうした機能不全を少しでも改善しようとする動きの一つです。次回の協議日程は現在調整中とされており、どの程度のスピードで合意事項が実行に移されるかはまだ見通せません。
2025年の国際情勢の中でどう見るか
2025年現在、米ロ関係は依然として厳しい局面にありますが、その中でも外交公館の運営を安定させる試みが続いていることは注目すべき点です。対立が深いほど、相手と直接対話し、緊急時に連絡を取り合うチャネルの維持は重要になります。
日本を含む第三国の視点から見れば、次のようなポイントが考えられます。
- 核保有国同士の意思疎通が途切れないことは、世界全体の安全保障にも直結する
- 外交公館の安定運営は、在外邦人への支援や多国間協議の円滑化にもつながる
- 対立する当事者同士でも、実務的な協力の余地を見出せるのかという、一つの試金石になる
政治的な立場の違いが大きい中で、どこまで実務協力を積み上げられるのか。イスタンブールでの米ロ協議は、そのプロセスを映し出す象徴的な場になりつつあります。
Reference(s):
U.S., Russia: progress made during 2nd round of talks in Istanbul
cgtn.com








