米移民裁判所がコロンビア大学院生の送還容認 親パレスチナ抗議が焦点に
アメリカの移民裁判所が、コロンビア大学の大学院生マフムード・カーリル氏について、トランプ政権による強制送還の方針を認めました。昨年の親パレスチナ系キャンパス抗議への関与が理由とされ、表現の自由と移民政策の境界があらためて問われています。
この記事のポイント
- 米移民判事が、カーリル氏の送還を求めるトランプ政権側の主張を認めた
- カーリル氏は永住権を持つコロンビア大学院生で、犯罪歴はないとされています
- 1952年制定の移民・国籍法の、めったに使われない条項が適用されたとされています
- 親パレスチナ系抗議に関わった留学生や研究者、約1000人の在留資格にも影響が出ていると報じられています
何が決まったのか
現地時間の金曜日、ルイジアナ州ジーナにあるラサール移民裁判所で開かれた審理で、移民判事ジャミー・コーマンズ氏は、トランプ政権が進める送還手続きについて「国外退去事由が成立すると判断する」とし、カーリル氏を送還可能とする判断を示しました。
同時に裁判所は、カーリル氏と弁護団が送還停止などの救済を求める申請を行うための期限として、4月23日までに書類を提出するよう求めています。今後、この申請が認められるかどうかが、送還の行方を左右することになります。
カーリル氏とはどんな人物か
対象となっているマフムード・カーリル氏は、名門コロンビア大学の大学院生で、アメリカの永住権を持つグリーンカード保持者だとされています。報道によれば犯罪歴はなく、問題視されているのは昨年、全米の大学で相次いだ親パレスチナ系のキャンパス抗議活動への関与です。
カーリル氏は、今年3月8日にニューヨーク市内の大学所有のアパートで逮捕され、その後、アメリカ南部の沿岸州にある移民収容施設へと移送されました。
今回の判断を受けて、カーリル氏は法廷で「適正手続きと根本的な公正さほど重要なものはない。しかし、きょうの審理にはどちらも存在しなかった」と述べ、手続きの公平性に強い疑問を示しました。
さらに「私が家族から約1000マイルも離れたこの裁判所に送られたのは、まさにそのためだ」とし、「この施設にいる何千人もの人々にこそ、同じ緊急性を向けてほしい」と訴えています。
トランプ政権の姿勢と1952年法の適用
カーリル氏の逮捕後、ドナルド・トランプ大統領は自身のSNSプラットフォームであるトゥルース・ソーシャルに投稿し、カーリル氏を『Radical Foreign Pro-Hamas Student』と呼びました。また「これは今後続く多くの逮捕の第一歩だ」とし、「われわれは、こうしたテロリストの共感者たちを見つけ出し、逮捕し、国外に追放する。二度とこの国に戻らせない」と投稿しています。
カーリル氏と弁護団は、ハマスへの支持や組織とのつながりを全面的に否定しています。一方、トランプ政権側は、1952年制定の移民・国籍法の中でも、めったに使われない条項を根拠として挙げています。
この条項は、外国人の存在がアメリカの外交政策を脅かすと判断される場合に、国務長官がその人物を国外退去させる権限を認める内容とされています。つまり、刑事事件としての有罪かどうかではなく、「外交政策への脅威」という政治的・外交的な評価が、送還の判断基準の一つになり得る仕組みです。
今回の事案では、この「外交政策への脅威」という抽象的な概念が、大学キャンパスでの抗議活動にまでどこまで拡大されるのかが、大きな論点となっています。
留学生・研究者への広がる影響
非営利の教育団体である国際教育者協会の最新データによると、昨年の親パレスチナ系キャンパス抗議活動に関わったとされる外国人の学生や研究者のうち、約1000人がビザを取り消されたり、連邦政府のデータベースであるSEVIS上で在留資格が「終了」とマークされたりしているとされています。
SEVISは、アメリカで学ぶ留学生や交換研究者の在留状況を管理するための仕組みで、この記録が変化することは、学業の継続や滞在そのものに直接影響を与えます。今回のケースは、特定の学生1人の問題にとどまらず、全米のキャンパスにいる外国人学生や研究者にとって、言動がどのように解釈され得るのかという新たな不安を生みつつあります。
表現の自由と在留資格のあいだで
アメリカでは、表現の自由が憲法上の重要な権利とされていますが、そこに「外交政策への脅威」という理由での送還権限が重なると、特に市民権を持たない人びとの行動はより慎重にならざるを得ません。
カーリル氏は「適正手続き」と「公正さ」が欠けていると訴えましたが、この声は、同じように収容施設にいる多くの人たちの現状にも重なります。どこまでが正当な政治的表現で、どこからが「外交政策への脅威」と見なされるのか。その線引きは、当事者にとっても、社会にとっても決してわかりやすいものではありません。
日本やアジアの読者にとっての意味
日本を含むアジアからも、多くの学生や研究者がアメリカの大学に留学しています。キャンパスで政治的なテーマに関心を持ち、抗議活動やデモに参加することは、民主主義社会における一つの学びでもあります。
しかし、今回のケースが示すのは、在留資格を持つ立場では、その行動が移民制度や外交政策の文脈で評価される可能性があるという現実です。留学や研究を考える人にとっては、次のような点をあらためて意識するきっかけになるかもしれません。
- 自分のビザや在留資格の条件を、事前によく確認しておく
- 抗議活動やデモに参加する場合、大学や自治体が定めるルールを理解しておく
- オンラインでの発信も含め、自分の発言や行動がどのように解釈され得るかを意識する
表現の自由を守ることと、安全に学び・働き続けること。そのバランスをどう取るのかは、アメリカ社会にとっても、海外から来る学生や研究者にとっても、これからしばらく議論が続くテーマとなりそうです。
カーリル氏のケースは、今後の審理や救済申請の行方によって、アメリカの移民政策と大学キャンパスのあり方に、さらに大きな影響を与える可能性があります。国際ニュースとしての動きだけでなく、私たち自身の学び方や発言の仕方を考え直すきっかけとしても、注視していきたい事案です。
Reference(s):
U.S. judge allows Trump admin to deport Columbia University student
cgtn.com








