ノーベル文学賞作家バルガス・リョサ死去 ラテンアメリカ文学の巨人を偲ぶ video poster
ペルー出身のノーベル文学賞作家マリオ・バルガス・リョサが、2025年4月13日(日)に89歳で亡くなりました。ラテンアメリカ文学を代表する「巨人」の死は、世界の読書界に大きな空白を残しています。本記事では、国際ニュースとしての訃報を踏まえつつ、彼の文学と思想がいまの私たちに何を問いかけているのかを整理します。
2010年ノーベル文学賞が示した評価
バルガス・リョサは、2010年にノーベル文学賞を受賞しました。授賞理由では、権力の構造を精緻に描き出し、抵抗し、反乱し、ときに敗北する「個人」の姿を鋭く描いた点が高く評価されています。
この評価は、彼の文学が単なる物語やエンタメにとどまらず、社会や政治の力学を読み解く「地図」として機能してきたことを示しています。ラテンアメリカという地域で繰り返されてきた不平等や暴力、権力闘争を背景に、そこに生きる個人の葛藤に光を当ててきた作家だったと言えるでしょう。
「権力」と「個人」を描くということ
権力構造を描く文学は、ともすると抽象的で難解になりがちです。しかし、バルガス・リョサの作品は、権力をめぐる問題を、具体的な人物や物語を通して読者に体感させるスタイルで知られてきました。
- 権力の側にいる人々の論理と自己正当化
- その下で生きる人々の日常の不安や怒り
- 抵抗することの希望と、その限界や敗北の感覚
こうしたテーマは、ラテンアメリカだけでなく、現代のどの国や地域にも通じる普遍性を持っています。日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、自国の状況を相対化して見る手がかりになり得る視点です。
CGTNインタビューが映した「作家の顔」と「政治の顔」
生前、バルガス・リョサは国際メディアCGTNのダン・コリンズ記者のインタビューに応じ、自身の「書くこと」と「政治」について語りました。作家としての活動と、社会や政治への関わり方を自ら説明しようとした点が印象的です。
インタビューでは、おそらく次のような論点が中心になったと考えられます。
- 文学は、権力を直接批判するだけでなく、その仕組みや影響を読者に想像させる役割を持つこと
- 政治について語る作家であっても、文学作品そのものの自由と複雑さを守る必要があること
- 現実の政治状況に影響を受けながらも、作品の中では単純な善悪の図式に落とし込まない姿勢
「書くこと」と「政治」をどう結びつけるのかは、多くの作家や読者にとって悩ましいテーマです。バルガス・リョサは、その葛藤を引き受けながら創作と発言を続けた人物でもありました。
2025年の私たちにとっての「バルガス・リョサを読む意味」
2025年のいま、世界各地で民主主義や人権、格差や分断をめぐる議論が続いています。こうした時代に、権力と個人の関係を描き続けたバルガス・リョサの作品は、改めて読み直す価値があると言えるでしょう。
彼の作品から学べる視点
- 権力を地図のように見る視点:誰がどのように決定権を握り、その影響を誰が受けているのかを想像する力
- 少数派や弱い立場に立つ想像力:大きな物語の「周縁」にいる人々から世界を見る視点
- 勝利だけでなく敗北も描く誠実さ:抵抗が必ずしも成功しない現実を直視しつつ、それでも諦めない態度
これらは、ニュースやSNSの短い情報だけではなかなか得にくい、時間をかけて育まれる視点です。デジタルネイティブ世代の読者にとっても、バルガス・リョサの作品は「世界を見る別のレンズ」として機能するかもしれません。
日本語で国際ニュースを追う読者への問い
国際ニュースを日本語で追う私たちは、しばしば「何が起きたか」という事実の更新に追われがちです。一方で、バルガス・リョサのような作家は、「なぜそのような権力構造が生まれ、そこに生きる人々は何を感じているのか」という、より長い時間軸の問いを投げかけてきました。
彼の訃報は、次のような問いを私たちに残しているようにも見えます。
- ニュースでは見えにくい「構造」を、どうやって想像し、言葉にしていくのか
- 自分の社会の権力関係を、どのように批判的かつ冷静に読み解いていくのか
- 異なる地域の文学を通じて、自分の常識や前提をどう更新していくのか
ペルーから世界へ、そして日本語でニュースを読む私たちへ。バルガス・リョサが残した物語と問いは、2025年の今もなお、静かに読み手を揺さぶり続けています。
Reference(s):
Nobel prize-winning Peruvian novelist Llosa leaves lasting legacy
cgtn.com







