フランス首相ベイルー、トランプ関税を「世界貿易へのサイクロン」と警告
フランスのフランソワ・ベイルー首相は、アメリカのドナルド・トランプ大統領が今月初めに発表した大規模な関税について、「世界貿易にサイクロンを解き放った」と強い表現で批判しました。パリで火曜日に行ったスピーチで、世界経済とフランス経済の現状を語りながら、巨額の公的債務と成長の停滞に危機感を示しました。
この国際ニュースは、世界貿易体制のゆらぎと欧州の大国フランスの行方を通じて、日本を含むアジア経済にも影響しうるテーマです。
トランプ関税は「世界貿易へのサイクロン」
ベイルー首相は、トランプ大統領が今月発表した一連の大規模な関税措置について、「世界貿易にサイクロンを解き放った」と述べました。サイクロンという比喩は、予測しにくく、広い範囲に被害を及ぼしうる急激な変化をイメージさせます。
首相は、パリでの演説で世界経済の不透明感に触れ、保護主義的な関税が各国の輸出入や投資の流れを揺さぶり、長期的な成長の基盤を損なうおそれがあると警戒感を示しました。
フランス財政の現状:一人あたり5万6,000ドルの借金
国内情勢について、ベイルー首相はフランスの財政を「厳しい状況」にあると表現しました。国全体の債務の規模は、フランス国民一人ひとりが約5万6,000ドルの借金を抱えているのと同じだと説明し、市民に対し問題の大きさを共有しようとしました。
フランスの統計当局によると、公的債務と財政赤字の指標は次のようになっています。
- 公的債務残高:3.7兆ドル(2024年第3四半期末)
- 国内総生産(GDP)に対する債務の割合:113.7%
- 2024年の財政赤字:1,930億ドル
- GDP比の財政赤字:5.8%
ここでいう「債務」はこれまでに積み上がった借金の総額、「赤字」は1年間の歳入と歳出の差を指します。債務と赤字がともに高い状態が続くと、将来の世代に負担が先送りされることになります。
「再産業化を執念に」フランス経済の課題
ベイルー首相は、「再産業化を私たちの執念としなければならない」と述べ、工業や製造業の立て直しを最優先課題として位置づけました。フランスが経済運営を誤れば、「国の信頼と、ひいては存続そのものが問われる」とまで語り、危機感の強さをにじませました。
そのうえで、フランスは「より安く、より効率的」な経済構造に変わる必要があると強調し、「私たちはこれから困難の山を登ることになる」と国民に覚悟を求めました。また、「債務はあまりに速いペースで増えており、政策の自由度は狭まっている」とも述べ、時間的な余裕が小さいことを示唆しました。
野党と労組は強く批判
こうした首相のメッセージに対し、野党や労働組合は一斉に反発しています。最大野党・国民連合の議会代表を務めるマリーヌ・ル・ペン氏は、ベイルー首相の演説について「深刻な危機のレベルに見合っていない」と批判しました。
ル・ペン氏は、国民連合として「フランスの人々に負担を強いるような措置には賛成しない」と述べ、緊縮的な政策には距離を置く姿勢を示しました。
フランス有数の労組であるCGTの書記長、ソフィー・ビネ氏も、首相のスピーチを「プロパガンダ」だと非難しました。ビネ氏は、政府が危機感をあおることで、人々の不安をさらに高めるだけだと懸念を表明しています。
7月14日までに新たな経済対策を提示へ
ベイルー首相は演説に先立ち、閣僚を集めた「危機会合」を開き、低迷するフランス経済への対応策を協議しました。そのうえで、フランスのナショナルデーである7月14日までに、新たな経済対策を提案すると表明しました。
具体策の中身はまだ示されていませんが、歳出の見直しと成長戦略をどう両立させるのか、政権と野党、労組の間で激しい議論が続くとみられます。
日本・アジアの読者にとっての意味
今回のフランスの動きは、日本やアジアの読者にとっても無関係ではありません。トランプ大統領の関税強化は、世界貿易の流れを変え、輸出入に依存する各国経済に波紋を広げる可能性があります。
また、巨額の公的債務と産業競争力の低下に悩むという構図は、日本を含む多くの先進国が抱える課題でもあります。フランスが「再産業化」と財政再建の両立をどう図るのかは、今後の国際ニュースとして注目しておきたいポイントです。
「世界貿易へのサイクロン」という強い言葉の背景に、何が賭けられているのか。フランスの議論を追うことは、自国の経済や社会のかたちを考え直すヒントにもなりそうです。
Reference(s):
French PM Bayrou: Trump 'unleashed a cyclone' on world trade
cgtn.com








