韓国前倒し大統領選へ 最大野党が李在明氏を候補に選出
韓国(大韓民国)で実施される前倒し大統領選に向け、最大野党の民主党が李在明(イ・ジェミョン)前代表(61)を公式候補に選出しました。戒厳令宣言と現職大統領の弾劾という異例の政治危機の中で選ばれたこの新たなリーダー候補は、韓国の民主主義と朝鮮半島情勢の行方を左右する存在になりそうです。
最大野党が李在明氏を擁立 世論調査で二桁リード
韓国の最大野党・民主党(Democratic Party of Korea)は日曜日、前代表の李在明氏を、6月3日に予定される前倒し大統領選の公式候補に指名しました。
世論調査ではここ数週間、李氏が保守系のPeople Power Party(ピープル・パワー・パーティー)の有力候補に対し、二桁の支持率差でリードしてきました。People Power Partyは5月3日に党候補を選出する予定で、与野党の顔ぶれが出そろうのはそれ以降となります。
勝利演説で李氏は「今この瞬間から、私は民主党の候補にとどまらず、反乱の終結や危機の克服、統合と幸福を願うすべての人々の候補だ」と強調しました。そのうえで、韓国の防衛力を強化し、高度技術産業で世界をリードする国、文化大国、そして模範的な民主主義国家を目指すと訴えました。
戒厳令と弾劾が招いた前倒し大統領選
李氏は2022年の大統領選で、現職の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に韓国の民主化以降で最も僅差とされる票差で敗れました。その尹氏は今月、短期間に終わった戒厳令の布告をめぐり、憲法裁判所によって罷免されました。この弾劾を受け、6月3日に前倒し大統領選が行われることになっています。
尹氏は今月3日夜、戒厳令を宣言しましたが、李氏を含む国会議員らが国会に駆け付け、軍の命令を否決させました。李氏は別の演説で、尹氏の戒厳令の試みを過去の権威主義的指導者による乱用になぞらえ、政治と経済の危機から国を導き出すと約束しました。そのなかには、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)との緊張緩和も含まれます。
李在明氏とは:地方政治から国政の中心へ
李氏は61歳の弁護士出身の政治家です。これまでに城南市長や、韓国で最も人口が多い京畿道の知事を務め、地方行政で存在感を高めてきました。その後、2022年に民主党の代表に就任し、党の顔として国政の前面に立つようになりました。
2024年の国会議員選挙では、民主党を率いて地滑り的な勝利を収めました。今回の党内予備選でも、地方予備選で他の2候補を容易に退けるなど、李氏の候補指名は広く予想されていた展開です。
2024年には、韓国南部の都市・釜山で新空港建設予定地を視察し、記者や支持者と話していた最中に刃物で襲われる事件にも遭いましたが、一命を取りとめました。波乱に満ちた政治人生が、今回の大統領選出馬でさらに大きな節目を迎えることになります。
掲げるビジョン:防衛強化とハイテク・文化大国
李氏は、韓国を危機から救い出すとしながら、次のようなビジョンを示しています。
- 同盟関係なども踏まえた防衛力の強化
- 高度技術産業で世界をリードする経済の構築
- エンターテインメントなどを通じた文化大国としての発信力強化
- 模範的な民主主義の実現と社会の統合
- DPRKとの緊張緩和を含む政治・経済危機からの脱却
反乱の終結や統合、幸福を繰り返し語るメッセージは、分断と対立が続く社会をどこまで癒やせるのか。有権者が李氏のビジョンを現実的な出口と見るのか、それとも理想にとどまると受け止めるのかが、今後の焦点になります。
続く法廷闘争と「物議を醸す政治家」という顔
一方で、李氏は法的なリスクも抱えています。今年初め、選挙法違反の罪に問われた事件で、有罪判決を取り消す控訴審判決が出ましたが、この件については現在も韓国の最高裁判所が最終判断を審理中です。
さらに、約10億ドル規模の不動産開発事業をめぐる疑惑など、贈収賄を含む複数の裁判も抱えています。李氏自身も、2022年の党代表就任以降、さまざまな疑惑や捜査をめぐって度々ニュースの中心となってきました。
李氏は今月、大統領選出馬に向けて民主党代表を辞任しており、こうした経緯から「物議を醸す政治家」として強い支持と強い反発の両方を集める存在です。今後の審理の行方が選挙日程とどう重なるのか、有権者が法廷リスクをどう評価するのかは、選挙戦を左右する大きな不確定要因となりそうです。
これからの焦点:保守系候補と韓国民主主義の行方
保守系のPeople Power Partyは5月3日に大統領選候補を選出する予定で、本格的な選挙戦はそれ以降、いっそう激しさを増すとみられます。現時点の世論調査では、李氏がPeople Power Partyの有力候補に対して二桁の差をつけていますが、6月3日の投票日までにはまだ時間があり、情勢が流動的になる可能性もあります。
戒厳令宣言と大統領の弾劾という重い経験を経て、韓国の有権者はどのようなリーダー像を選ぶのか。6月3日に向けた韓国政治の動きは、日本を含む周辺国にとっても、民主主義と安全保障、経済の行方を考えるうえで注目すべきテーマとなりそうです。
Reference(s):
ROK's Lee Jae-myung elected as Democratic Party presidential candidate
cgtn.com








