国連機関、移民7万2千人超が死亡・行方不明 2014年以降の10年
2014年以降、この10年余りで世界の移民ルート上で少なくとも7万2,000人以上が死亡または行方不明になった──国連の国際移住機関(IOM)が公表した最新の報告書が、移動の陰で続く深刻な人道危機を浮き彫りにしています。
2014年以降、7万2,000人超が死亡・行方不明
IOMによると、世界各地の国境越えや海上航行など「移民ルート」で確認された死亡・失踪は、2014年以降で少なくとも7万2,000件を超えました。その多くは、紛争や治安悪化、自然災害などの危機に直面している国や地域で起きています。
報告書が対象とした直近の年には、少なくとも8,938人が移動の途中で命を落としており、統計開始以来、年間としては過去最多となりました。
危機にあえぐ国から逃れる中で集中する犠牲
報告書は、2014年以降に記録された移民の死亡・失踪のほぼ4分の3が、治安の悪化や紛争、災害といった人道危機から逃れる過程で起きていると指摘します。
また、犠牲者の4人に1人は、人道危機が深刻な国や地域の出身で、アフガニスタン出身者やロヒンギャ、シリア出身者など、すでに長年の危機にさらされてきた人々の死が多数記録されています。
全体のうち5万2,000人以上は、国連が危機対応計画や人道対応計画を展開している40の国のいずれかから脱出を試みる中で命を落としました。危機そのものから逃れようとして、さらに命の危険にさらされるという二重のリスクが浮き彫りになっています。
最も危険な中央地中海ルート
IOMによると、アフリカ北部から欧州方面へ向かう中央地中海ルートは、この10年余りで最も多くの命が失われた移民ルートのままです。このルートでは、少なくとも約2万5,000人が海で行方不明になったとされています。
そのうち1万2,000人以上は、紛争の影響が続くリビアを出発してから海で消息を絶っています。報告書はまた、サハラ砂漠を横断する途中で姿を消した人も数え切れないと指摘しており、公式に確認された数字以上の犠牲が出ている可能性を示唆しています。
アフガニスタンとロヒンギャに集中する犠牲
危機が長期化するアフガニスタンからの脱出を試みる人々の犠牲も深刻です。この10年余りで、アフガニスタンを離れようとして少なくとも5,000人以上が死亡しており、その多くは2021年にタリバンが権力を掌握して以降に起きたと報告されています。
ミャンマーの少数民族ロヒンギャの人々もまた、安全を求める旅の途中で多くの命を失っています。報告書によれば、バングラデシュへの越境や海上移動の途上での遭難などにより、期間中に少なくとも3,100人以上のロヒンギャが死亡しています。
「移住が選択である社会」に向けた提言
IOMのエイミー・ポープ事務局長は、今回の数字について、故郷に安全や仕事の機会がなく「とどまる」という選択肢が奪われている人々が、命の危険を承知で移動を選ばざるを得ない現実の「悲劇的な証拠」だと述べています。
ポープ事務局長は、各国と国際社会に対し、地域社会の安定と雇用機会を生み出すための投資を行い、移住が「生き延びるための最後の手段」ではなく、あくまで「一つの選択肢」となるような環境づくりを呼びかけています。また、故郷にとどまることがもはや不可能な人々に対しては、安全で合法的かつ秩序ある移動経路を整備し、命を守る枠組みを強化する必要性を強調しました。
報告書の著者であり、IOMの行方不明移民プロジェクトを統括するジュリア・ブラック氏は、多くの移民が制度や支援のすき間に落ち込み、記録されることなく命を落としていると指摘します。特に戦闘が続く地域や災害被災地ではデータの空白が大きく、実際の犠牲者数は把握されている数字をさらに上回る可能性が高いとしています。
私たちがこのニュースから考えられること
今回の報告書は、ニュースで断片的に目にする遭難事故や国境での悲劇が、例外的な出来事ではなく、世界各地で続く構造的な人道危機の一部であることを示しています。
移民・難民をめぐる議論は、受け入れか否かという二者択一に陥りがちです。しかしIOMが投げかけているのは、そもそも人々が命をかけて国境を越えざるを得ない状況をどう変えていくのか、そしてそれでも移動を選ぶ人々の権利と安全をどう守るのかという問いです。
遠く離れた地域の出来事のように見えるかもしれませんが、グローバルな人の移動は、労働市場、経済、安全保障、人権など、私たちの日常とも密接につながっています。数字の背後にある一人ひとりの人生と選択に思いをはせながら、国際ニュースとしてのこの報告書をどのように受け止めるかが問われています。
Reference(s):
UN says over 72,000 migrants dead, disappeared globally since 2014
cgtn.com








