米LNG業界がトランプ政権に反発 中国建造船への新ルールは「事実上不可能」
米国の液化天然ガス(LNG)業界の業界団体が、トランプ政権による中国建造船への新たなルールに強く異論を唱えています。輸送コストの急上昇や輸出の不安定化を招き、米国のLNG輸出競争力を損なうと警告しており、エネルギーと通商政策のせめぎ合いが鮮明になっています。
米LNG業界とトランプ政権の新ルール
米国の液化天然ガス(LNG)産業を代表する業界団体であるアメリカ石油協会(API)は、トランプ政権の新しい通商ルールに反発しています。このルールは、中国で建造された船舶が米国の港に入港する際に追加の手数料を課すもので、LNGの輸送船も対象となります。
ルールは、ジェイミソン・グリアー米通商代表(USTR)が4月17日に公表したもので、トランプ政権が進める一連の保護主義的な政策の一部です。政権側は、国内の製造業を復活させるうえで重要な施策だと位置づけています。
一方で、中国はこのルールについて、米国にとっても自らの利益を損なう逆効果な措置だとして批判しています。
APIが訴える「遵守は事実上不可能」
英紙フィナンシャル・タイムズによると、APIは最近、政権側に送ったロビー文書の中で、新ルールに強い懸念を示しました。その主なポイントは次の通りです。
- LNG輸送コストが大幅に上昇し、価格競争力が低下する
- 輸送手段が制限されることで、LNG輸出の安定性が損なわれる
- 結果として、米国のLNG輸出における世界的なリーダーシップが脅かされる
APIは、とりわけLNGについては新ルールを守ることが物理的に不可能だと強調しています。
米国にはLNG運搬船が存在しないという現実
APIが「不可能」とする理由は、LNGを運ぶ船の現状にあります。報道によると、現在、米国で建造されたLNG運搬船は1隻も存在していません。また、国内の造船所には、政権が設定した期限までに十分な数のLNG運搬船を建造できるだけの能力がないと指摘しています。
新ルールでは、LNGの輸送に米国建造の船を使う方向が求められており、実務上は「存在しない船を使え」と要求しているのに等しいというのがAPIの見方です。
3年の猶予と22年の移行期間でも足りない?
LNG業界は、新ルールの適用に関して、すでに3年間の適用開始の延期と22年間にわたる段階的な導入期間を勝ち取っています。それでもなおAPIは、LNG分野ではルールの完全な遵守は不可能だと訴えています。
報道によれば、政権が定めた最終期限は2029年とされており、それまでに必要な船舶と造船能力を整えるのは現実的ではないというのが業界側の主張です。
エネルギー市場と通商政策、そのはざまで
LNGは、多くの国や地域にとって発電や産業に欠かせないエネルギー源となっており、米国のLNG輸出動向は国際エネルギー市場にも影響を与えます。輸送コストの上昇や供給の不安定化は、最終的に電力料金やガス料金にも波及する可能性があります。
今回の新ルールをめぐる対立は、次のような問いを突きつけています。
- 国内製造業の保護と、国際市場での競争力の維持をどう両立させるのか
- 特定の国で建造された船に追加コストを課すことは、長期的に見て自国のエネルギー産業にとってプラスなのか
- エネルギー安全保障と通商政策を、どのような優先順位で設計すべきなのか
トランプ政権の通商政策は、国内産業の保護を前面に掲げる一方で、グローバルに展開する企業やエネルギー産業にとっては新たな不確実性の要因にもなっています。LNGをめぐる今回の議論は、その縮図といえるかもしれません。
今後、APIをはじめとする業界団体と政権側の協議がどのように進むのか、そして新ルールが最終的にどのような形で実施されるのかは、国際エネルギー市場にとっても注目すべきポイントとなりそうです。
Reference(s):
LNG trade group says impossible to follow Trump rules on Chinese ships
cgtn.com








