イスラエル、ガザ全域掌握も視野に拡大作戦 人道支援の管理巡り波紋
イスラエルがパレスチナ武装組織ハマスへの軍事作戦をさらに拡大し、ガザ地区全域の掌握と人道支援の管理を自ら行う可能性が浮上しています。国際ニュースとして注目されるこの動きは、長期化するガザ情勢と停戦交渉の行方に大きな影響を与えそうです。
今週承認された拡大作戦とは
イスラエルの当局者によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の安全保障内閣は今週月曜日、ハマスに対する軍事作戦を拡大する新たな計画を承認しました。この計画の下では、イスラエルがガザ地区全域を掌握し、人道支援物資の流れも直接管理する可能性があるといいます。
ある政府報道官はオンラインの説明で、予備役兵の追加招集は「ガザ地区を占領するためではなく、作戦を拡大するためだ」と説明しました。しかし、別の政府高官は、この拡大作戦がガザ地区の全領域を事実上掌握し、住民を南部へ移動させた上で、人道支援物資がハマスの手に渡らないよう管理する内容だと語っています。
防衛当局者は、この作戦は来週予定されているトランプ米大統領の中東訪問が終わるまでは開始されないと説明しています。
段階的に進む計画 ガザの三分の一から全域へ
イスラエルの公共放送カンは、計画の詳細を知る当局者の話として、この新たな作戦は段階的に進められ、完了までに数カ月を要する見通しだと伝えています。まずはガザ地区の一部に重点を置き、その後、範囲を広げていく構想だとされています。
イスラエル軍はすでにガザ地区のおよそ3分の1に相当する地域を制圧し、住民を退避させています。そこには監視塔や監視拠点が設置され、軍はこれらの地域を「安全保障ゾーン」と位置づけています。今回の拡大作戦は、こうしたゾーンをさらに広げ、最終的にはガザ全域に及ぶ可能性があると見られています。
防衛当局者は、ガザ周辺のこれらの安全保障ゾーンは、ガザに隣接するイスラエル側の地域社会を守るために不可欠であるとして、「維持する方針だ」と強調しました。
当局者によれば、この拡大作戦にはギデオン・チャリオッツ作戦(Operation Gideon Chariots)という名称が付けられており、作戦目標が達成されるまで停止しないとしています。
人道支援の流れが大きく変わる可能性
現在、ガザ地区への人道支援物資の配分は、国連機関や国際NGOなどの支援団体が担っています。ところが、防衛当局者は、拡大作戦が始まれば、この配分業務を民間企業に移管し、ガザ南部のラファで支援物資を配る仕組みに切り替える方針を示しました。目的は、支援物資がハマスの手に渡るのを防ぐことだと説明されています。
イスラエルは、米国が仲介した停戦合意が崩壊した後、2025年3月にガザでの軍事作戦を再開しました。それ以降、同国はガザへの支援物資の流入を大幅に制限しており、国連や国際機関は、約230万人のガザ住民が深刻な食料危機に直面し、差し迫った飢餓の危険があると警告しています。
支援の配分を国際機関から民間企業に切り替える案については、支援の中立性や透明性が確保されるのか、人道支援そのものが軍事作戦とより密接に結びついてしまうのではないか、といった懸念が今後高まる可能性があります。
停戦への「窓」とトランプ大統領の訪問
防衛当局者は、トランプ米大統領が来週、中東地域を訪問する期間中に、停戦と人質解放のための合意に達する「機会の窓」が開かれていると述べています。その一方で、「人質合意がまとまらなければ、ギデオン・チャリオッツ作戦は大きな強度で始まり、その目標がすべて達成されるまで止まらない」とも語り、軍事行動の拡大を強く示唆しました。
これまで、米国が支援した停戦合意によって戦闘が2カ月間停止していましたが、その合意が崩壊した後、イスラエルは攻勢を再開しました。今回の発言は、停戦交渉が再び難航すれば、戦闘のエスカレーションが避けにくい状況にあることを示しています。
ハマス側は「包括的な合意」以外を拒否
こうしたイスラエル側の計画に対し、ハマス側は強く反発しています。ハマス幹部のマフムード・マルダウィ氏は、イスラエルの圧力を「圧力と脅迫」だと批判したうえで、「完全な停戦、ガザからの全面撤退、ガザ地区の再建、双方の全ての囚人の解放を含む包括的な合意以外には応じない」と述べました。
イスラエル側がガザ全域の掌握や安全保障ゾーンの維持を前提とする一方で、ハマス側は全面撤退を停戦の条件に掲げており、両者の立場の隔たりは大きいことが分かります。
イスラエル軍はコメントを控える 一方で国内支持は低下
これまでの戦闘を通じて、イスラエル軍はガザの長期占領には慎重だとされてきました。軍は今回の政府高官や政治家の発言についてコメントを控えており、実際にどこまでガザを掌握する意向なのかは明らかではありません。
しかし、停戦交渉が停滞する中で戦争が長期化し、イスラエルは国際社会からの圧力にさらされています。国内でも、ガザでの作戦への支持は徐々に低下しているとされ、新たな大規模作戦が世論や政治にどのような影響を与えるのかが注目されています。
日本の読者が注目すべきポイント
ガザ情勢をめぐる今回の報道は、日本からは地理的に遠い出来事のように見えるかもしれませんが、中東の安定やエネルギー市場、国際秩序にも関わる重要な国際ニュースです。今後、次の点に注目すると状況が追いやすくなります。
- トランプ米大統領の中東訪問前後に、人質解放と停戦に向けた合意が成立するかどうか
- ギデオン・チャリオッツ作戦が実際に開始される場合、その範囲がガザ全域に及ぶのか、それとも限定的なものにとどまるのか
- ガザへの人道支援物資の搬入と配分がどのように変化し、住民の生活にどんな影響が出るのか
- 長期化する戦闘が、イスラエル国内の政治や世論、そして周辺地域との関係にどのような波紋を広げるのか
ガザ情勢は、軍事、外交、人道の三つが複雑に絡み合う問題です。今後も新しい動きがあれば、その意味を一つひとつ丁寧に読み解きながら、日本語で分かりやすくお伝えしていきます。
Reference(s):
Israel may seize all of Gaza in expanded operation, officials say
cgtn.com








