グリーンランド諜報報道で米臨時大使を召喚 デンマークが懸念表明
グリーンランド諜報報道で米臨時大使を召喚 デンマークが懸念表明
デンマーク外務省は、米紙ウォールストリート・ジャーナルがグリーンランドでの米諜報活動強化を報じたことを受けて、今週木曜日、コペンハーゲンで米国のデンマーク臨時大使を召喚し説明を求めました。グリーンランドの自治政府も「同盟国への敬意を欠く」と強く反発しており、北極をめぐる安全保障と同盟関係のバランスが改めて問われています。
米臨時大使を召喚 「王国の立場を明確に伝えた」
デンマーク外務省によると、召喚されたのは在デンマーク米国大使館のジェニファー・ホール・ゴッドフリー臨時大使です。会合はコペンハーゲンで行われ、グリーンランド政府の代表も同席しました。
外務省は声明で、会合の主な焦点はウォールストリート・ジャーナルに掲載された記事『U.S. Orders Intelligence Agencies to Step Up Spying on Greenland』だったと説明しています。
同紙は今週火曜日に、複数の関係者の話として、米国の情報機関がグリーンランドとデンマークにおいて、グリーンランドという北極の島に関する米国の戦略的利益と足並みをそろえる人物を特定するよう指示を受けたと報じました。
デンマークのラーシュ・ルッケ・ラスムセン外相は、会合後に取材に応じ、「会合の目的は、王国としての立場を完全に明確にすることだった。臨時大使もその重みを真剣に受け止めていたという印象だ」と語りました。
ただしラスムセン氏は、記事の真偽そのものが確認されたわけではないと強調しています。「会談で何が語られたかの詳細は明かせないが、紙面で読んだ内容を私たちが非常に重く受け止めていることを米側に伝えるのが目的だった。記事の正確さについて確認を得たわけではない」と述べ、情報の扱いに慎重な姿勢を見せました。
報道が伝えた「グリーンランドでのスパイ強化」
問題となっているウォールストリート・ジャーナルの記事は、米情報機関がグリーンランドとデンマークで米国の戦略的利益に沿う人物を特定するよう命じられたと伝えています。標的とされるのは、グリーンランドという北極の島をめぐる米国の長期的な関心と利益を共有する人物だとされています。
こうした報道は、グリーンランドを含む北極地域が米国にとって「戦略的利益」に直結する場所として位置づけられていることをうかがわせます。同時に、同盟国の国内でどこまで諜報活動が許容されるのかという、微妙な問題も浮かび上がらせています。
グリーンランド自治政府「完全に受け入れがたい」
報道に対して、グリーンランド自治政府からは強い言葉が相次いでいます。
グリーンランドのイェンス=フレデリク・ニールセン首相は、デンマークの公共放送DRの取材に対し、「米国によるヌーク(グリーンランドの首都)でのスパイ行為は完全に受け入れがたい。同盟国に対して敬意を欠くものであり、全く正常ではない」と述べ、強く非難しました。
デンマーク外務省の会合には、グリーンランド政府の代表が参加しており、今回の問題がコペンハーゲンだけでなくヌークにとっても重大な懸案となっていることをうかがわせます。
「王国」の中のグリーンランドと対外・安全保障
グリーンランドは、かつてデンマークの植民地でしたが、1953年にデンマーク王国の不可分の一部となりました。その後1979年にはホームルール(自治政府)が導入され、自治権が拡大してきましたが、外交と防衛の権限は引き続きデンマークが握っています。
今回のように、対外関係にかかわる問題でグリーンランド自治政府の代表がデンマーク外務省の場に同席したことは、王国の枠組みの中で、グリーンランドの声をどのように反映させるかという実践の一端とも言えます。
一方で、外交・防衛の最終的な責任はデンマークにあるため、グリーンランドの強い感情と、コペンハーゲンが同盟国との関係を維持しようとする現実的な対応との間に、微妙なバランスも見て取れます。
同盟と諜報の境界線はどこに?
今回の一連のやりとりからは、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 米国の情報活動に関する報道が、同盟国の政府レベルでの直接の申し入れにつながったこと
- デンマーク外務省が、記事内容の真偽とは切り離して「懸念」を明確に伝えたと説明していること
- グリーンランド自治政府が、同盟関係に対する敬意という観点から、強い言葉で懸念を示していること
同盟国同士であっても諜報活動はしばしば行われるとされますが、それが公に報じられたとき、国内世論や自治政府、中央政府の間でどのような軋轢が生まれるのか。グリーンランドをめぐる今回の動きは、その難しさを静かに映し出しているようです。
Reference(s):
cgtn.com








