イラン核協議が「より深刻で率直に」 オマーン仲介で米国と間接交渉
イランのアッバス・アラグチ外相は、オマーンの首都マスカットで続いている米国との間接協議について「これまでよりはるかに深刻かつ率直になった」と述べました。2015年の核合意をめぐる駆け引きが、2025年のいまも新たな段階に入っていることを示しています。
イランと米国、オマーン仲介で核合意再建を協議
今回の協議は、オマーンが仲介する形でマスカットで行われているイランと米国の間接交渉です。目的は、2015年に結ばれた核合意「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action=JCPOA)」を立て直すことにあります。
米国は、ドナルド・トランプ氏の最初の大統領任期中の2018年に、この核合意から一方的に離脱しました。その後、イランは合意で定められた核活動の制限について、順次履行を減らしてきました。2025年現在、離脱から7年が経ちますが、合意の再建をめぐる攻防は続いています。
マスカットでの今回の協議は第4ラウンドで、およそ3時間にわたって行われました。これまでに、4月12日と26日にマスカットで、4月19日にローマで協議が行われており、今回はそれに続く最新のラウンドです。
アラグチ外相「議論は前進しているが、より複雑に」
アラグチ外相は、イラン国営放送のIRIBテレビのインタビューで、協議の雰囲気の変化を強調しました。これまでの一般論中心のやり取りから一歩踏み込み、具体的な提案や案文をめぐる議論へと移っていると説明しています。
外相は、協議を「前進している」と評価する一方で、扱う論点が増え、問題の複雑さも増していると認めました。そのうえで、イラン側と米国側の双方が、協議を継続することで一致したと明らかにしています。
ペゼシュキアン大統領、核インフラ解体要求を一蹴
こうした中、マスード・ペゼシュキアン大統領は、米国が求めているとされるイランの核インフラ解体に明確に反対しました。
ペゼシュキアン大統領は、「これは受け入れられない。イランは平和的な核の権利を放棄しない」と述べ、イランの核計画はあくまで民生目的だと強調しました。また、アリー・ハーメネイー最高指導者が出した、核兵器開発を禁じる宗教令(ファトワー)にも言及し、核兵器を追求しないという立場をあらためて示しました。
米国側は「核施設の全面解体」を要求
マスカットでの協議に先立ち、米国のスティーブ・ウィトコフ特使は、イランに対し核計画の「完全な解体」を求める姿勢を改めて打ち出しました。対象には、ナタンツ、フォルドウ、イスファハンといった主要な核施設も含まれるとされています。
さらに、マルコ・ルビオ国務長官を含む米国の当局者は、イランは自国で濃縮ウランを生産するのではなく、輸入に頼るべきだとの考えを示しています。これは、イラン国内の核インフラそのものを削減・制限したい米国側の意図を反映したものといえます。
「平和的利用」か「拡散懸念」か 食い違う核の見方
ペゼシュキアン大統領は、イランの核活動が「平和的目的」に不可欠だと繰り返し強調しています。具体的には、放射性医薬品(がん治療などに使われる医療用の放射性物質)や医療、農業、産業といった分野への応用を挙げました。
大統領は「私たちは交渉に真剣であり、合意を求めている。平和を望むからこそ話し合うのだ」と述べ、地域の平和と安全保障へのコミットメントを強調しています。
一方で米国は、イランの核活動が核兵器開発につながるのではないかという懸念を強く持っています。核の平和利用の権利そのものは国際的にも認められていますが、その裏側で軍事転用のリスクをどう抑え込むかが、双方の見解が鋭く対立するポイントとなっています。
JCPOAとは何か 2015年合意のポイント
2015年にイランと主要国が結んだJCPOAは、イランがウラン濃縮活動や遠心分離機の台数、保有できる濃縮ウランの量などに厳格な上限を設ける代わりに、経済制裁の緩和を行うという枠組みでした。
- イラン側:核活動を大幅に制限し、国際原子力機関(IAEA)による監視を受け入れる
- 相手国側:制裁解除を通じて、イラン経済への圧力を緩和する
しかし、2018年に米国が一方的に離脱し、制裁を再発動したことで、合意は事実上機能不全に陥りました。その後イランは、合意上の制限を段階的に超える形で核活動を拡大しており、その水準をどこまで巻き戻すかが、現在の交渉の核心の一つになっています。
なぜ今の協議が重要なのか
今回のマスカット協議が注目される理由は、単なる米イラン関係にとどまらず、地域と世界の安全保障に直結しているからです。とくに、次のような点が国際ニュースとしての重要性を持っています。
- 核拡散のリスク:イランの核活動の行方は、核不拡散体制全体への信頼に影響します。
- 中東地域の安定:湾岸地域の緊張は、エネルギー市場や海上輸送にも波及し得ます。
- 米国の対外政策:2018年の離脱からの方針転換をどう描くかは、他の合意や同盟国との信頼にもかかわります。
日本語で国際ニュースを追う読者にとっても、イラン核問題は「遠い国の話」ではありません。エネルギー価格や安全保障、さらには国際ルールの信頼性といった形で、間接的に日常生活にも影響しうるテーマです。
今後の焦点:どこで折り合いをつけるのか
アラグチ外相が述べたように、協議は「より具体的」な段階に入りましたが、合意に至る道のりは平坦ではありません。今後の主な焦点として、次のようなポイントが考えられます。
- 核活動の許容範囲:イランが維持できる核施設や濃縮レベルをどこまで認めるか。
- 検証と透明性:核活動が平和目的にとどまることを、どのような監視メカニズムで保証するか。
- 制裁緩和のタイミング:イラン側の履行と、米国などによる制裁緩和をどう段階的にリンクさせるか。
- 地域の安全保障:イランと周辺国の対立や不信をどう和らげるか。
ペゼシュキアン大統領は「平和を望むからこそ話し合う」と語り、協議継続への意欲を示しています。一方で米国側は、核インフラの大幅な縮小や解体を求める強い姿勢を崩していません。
核の平和利用と安全保障リスクをどう両立させるのか。2015年の合意から10年が迫る今、イラン核問題はあらためて「国際ルールと現実政治の折り合い」を考えさせるテーマになっています。
Reference(s):
cgtn.com








