イスタンブールでのロシア・ウクライナ和平協議、開催は不透明なまま
2025年5月15日にトルコ・イスタンブールで提案されたロシア・ウクライナ和平協議は、開催のわずか約48時間前になっても、実際に開かれるのかどうか不透明なままでした。本記事では、その時点で見えていた各当事者の立場を整理し、この「イスタンブール会談」が意味していたものを考えます。
プーチン大統領が持ちかけた「直接会談」案
発端は、その直前の日曜日でした。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナとの「直接会談」を今週木曜日、5月15日にトルコ最大の都市イスタンブールで行うことを提案しました。
プーチン大統領は、この会談を「持続的な平和」を実現し、ロシアとウクライナの紛争の「根本原因を取り除く」ことを目指す場にしたいとしています。
この提案に対し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は前向きな反応を示し、トルコのレジェプ・タイイプ・エルドアン大統領も開催受け入れに同意しました。さらに、米国のドナルド・トランプ大統領も出席を申し出るなど、複数の首脳が関与する可能性が浮上しました。
それでも、会談予定日の2日前になっても「本当に開催されるのか」ははっきりせず、国際社会の注目が集まっていました。
ロシア:準備は進めるが「誰が出るか」は未定のまま
火曜日、ロシア大統領府(クレムリン)は声明を通じて、イスタンブールでの会談に誰が出席するのかは、プーチン大統領が「適切だと判断した時点で」発表すると明らかにしました。プーチン大統領自身が出席するかどうかについては、コメントを避けています。
大統領報道官のドミトリー・ペスコフ氏は、記者団から質問を受けると、次のような趣旨の説明を行いました。
- ロシア側は交渉に向けた準備を続けている
- ゼレンスキー大統領が求めているプーチン大統領本人の出席については、現時点でコメントしない
- ロシア代表団の顔ぶれは、プーチン大統領が発表すると決めたタイミングで公表する
つまりロシアは、「準備はしている」とメッセージを送りつつも、肝心の出席者や交渉の中身については、できるだけ自由度を残したい思惑をにじませていました。
ウクライナ:条件は「プーチン氏との直接会談」
一方のウクライナ側は、会談の「顔合わせ」に強くこだわっていました。ウクライナ大統領府の顧問は、ゼレンスキー大統領はプーチン大統領本人との会談には応じるが、ロシア代表団の他のメンバーとのみの協議には応じない考えを示しました。
ゼレンスキー大統領は、その日の夜のビデオ演説でも、前線でロシア軍の攻撃が一日を通して続いたと指摘しつつ、トルコでの会談提案に対してモスクワ側から返答がないことへの違和感を語りました。
大統領は、ロシア軍による砲撃や攻撃が続く中で、プーチン大統領との直接会談を呼びかけているにもかかわらず、「モスクワは一日中沈黙を守っている」と述べ、その沈黙を「非常に奇妙だ」と表現しています。
前日の月曜日には、ゼレンスキー大統領はトルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、トルコでの会談が戦争終結に向けてどのような助けとなり得るか、主要な論点を協議したとしています。大統領はメッセージアプリ上で、トルコが「最高レベル」で外交努力を支える用意があることへの感謝も表明しました。
またゼレンスキー大統領は、トランプ大統領が会談に参加する可能性についても歓迎の意向を示しました。ウクライナの人々は、トランプ大統領がトルコでの会談の場に加わることを歓迎するだろうと述べ、エルドアン大統領には「本当に最高レベルの会談を主催できる」と期待を寄せています。
プーチン大統領とゼレンスキー大統領が最後に直接顔を合わせたのは2019年12月であり、その後2年以上を経て両国の武力衝突が始まりました。今回のイスタンブール会談案が実現すれば、それ以来初めての直接対話となる可能性がありました。
トルコと米国:仲介の舞台づくり
今回の構図の中心には、開催地となるトルコと、出席を申し出た米国の存在があります。
トルコのエルドアン大統領は、提案された会談をイスタンブールで受け入れる考えを示し、ゼレンスキー大統領との協議では、トルコが最高レベルで外交を支える用意があると伝えました。会談が実現すれば、トルコはロシアとウクライナの両首脳を同じテーブルにつかせる場を提供することになります。
さらに、トランプ大統領が出席に意欲を示していることは、この会談に追加の重みを与え得る要素です。ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領とエルドアン大統領が同じ場にいることが、「多くのことを変えうる」と期待を表明しています。
それでも残る「開催されるのか」という問い
会談予定日の約48時間前の時点で見えていたのは、次のような状況でした。
- ロシアは交渉準備を進めているとしつつ、出席者やプーチン大統領の参加について明言を避けている
- ウクライナは、プーチン大統領本人との直接会談でなければ応じないという立場を崩していない
- ウクライナ側の説明によれば、前線ではロシア軍の攻撃が続き、モスクワはトルコでの直接会談提案に公式な反応を示していない
- トルコは最高レベルでの仲介に前向きで、米国もトランプ大統領の出席という形で関与の可能性を示している
このように、複数の首脳が関わる可能性がありながらも、肝心のロシア側の出方が最後まで見えにくい構図となっていました。プーチン大統領が直接テーブルにつくのか、それとも別の形の代表団が派遣されるのかは、この時点では判断材料がほとんどありませんでした。
一方で、ウクライナ側が前線での攻撃継続を指摘しつつも、トルコや米国と連携しながら直接会談を模索していることは、戦場と外交テーブルのあいだで揺れる現実を象徴しているとも言えます。
イスタンブールでの和平協議案は、戦闘が続く中でも外交的な出口を探る動きが続いていることを示しました。しかし、その開催が直前まで不透明だったという事実は、深くこじれたロシア・ウクライナ関係を修復することの難しさも浮かび上がらせています。
2025年を振り返るとき、このイスタンブール会談案は、「もし実現していたら何が変わっていたのか」という問いを私たちに投げかける出来事として記憶されるかもしれません。
Reference(s):
Will Thursday's Ukraine-Russia peace talks in Istanbul happen?
cgtn.com








