米製造業は本当に人手不足? トランプ関税と働き手のギャップ video poster
2025年現在、トランプ米大統領が輸入品への関税を引き上げたり引き下げたりしながら、米国製造業の黄金時代を取り戻そうとしています。しかし、こうした貿易摩擦が本格化する前から、米国では製造業の求人がおよそ50万件も埋まらない状況が続いていました。人々は本当に製造業で働きたいと思っているのでしょうか。
関税で国内生産を呼び戻す狙い
今回の関税政策は、自動車や衣料品、コンピューターなど、かつては国内で作られていた消費財を再び米国内で生産しやすくすることを狙ったものとされています。輸入品に関税というコストを上乗せすることで、米国内の工場で作る方が有利になるようにする発想です。
トランプ大統領は、製造業の雇用を増やし、中間層の暮らしを支える産業を復活させる、と繰り返し訴えてきました。国境をまたいで組み立てられてきたサプライチェーンを見直し、国内に生産拠点を戻すことが、経済と安全保障の両面で重要だという考え方です。
それでも埋まらない約50万件の製造業求人
しかし、関税によって企業が米国内に戻ってきたとしても、それだけで工場に人が集まるとは限りません。貿易戦略が始まる前の段階で、すでに約50万件の製造業の求人が埋まっていなかったとされています。仕事はあるのに人が来ないというミスマッチが、構造的な問題として存在していたことになります。
これは単なる景気の問題というより、働き手の意識やスキルの変化、地域経済の偏りなど、いくつもの要因が重なった結果だと考えられます。関税という一つの政策手段だけで、こうしたギャップを埋められるのかどうかが、あらためて問われています。
人々が製造業を選びにくい理由
なぜ多くの人が製造業で働くことに慎重なのでしょうか。背景には、例えば次のような要素が指摘されています。
- 工場勤務は肉体的にきつく、交代制や長時間労働のイメージが根強い
- デジタル産業やサービス産業と比べて、キャリアの見通しが描きにくいと感じる人がいる
- 現代の製造業には高度な技能が求められる一方、その教育や訓練が十分に行き届いていない地域がある
こうした要因が重なると、求人が増えても応募者が集まりにくくなります。賃金や福利厚生、働き方の柔軟性、職場の安全性など、総合的な条件が問われる時代になっているとも言えます。
関税だけでは解決しない構造的な課題
輸入品への関税は、国内の工場にとって追い風になる可能性がありますが、それだけで人材の不足を解消することはできません。生産拠点が戻ってきても、必要な技能を持つ人材が地域にいなければ、設備を稼働させることは難しいからです。
そのため、職業訓練や再教育、移民政策、地域インフラへの投資など、幅広い政策を組み合わせる必要があります。関税はあくまできっかけにすぎず、実際に工場で働く人々の生活やキャリアの選択にまで踏み込んだ議論が求められています。
日本やアジアが学べるポイント
製造業の人手不足と、政府の産業政策とのギャップというテーマは、米国だけの話ではありません。日本を含むアジアの国々でも、工場の自動化と人材不足が同時に進む中で、若い世代がものづくり現場をどう捉えるかが大きな課題になっています。
米国で約50万件もの製造業の求人が埋まっていないという状況は、賃上げだけでは解決しきれない「仕事の中身」や「働く意味」の問題を浮き彫りにしています。私たち自身も、どのような仕事を将来世代に魅力ある選択肢として残していくのかを考える必要がありそうです。
現場から伝えられる声とこれから
中国の国際メディアであるCGTNの記者、オーウェン・フェアクラフ氏は、こうした米国製造業の現場を取材し、関係者の声を伝えています。工場で人材確保に苦労する経営者や、製造業への就職をためらう若者の姿からは、統計だけでは見えないリアルな葛藤が浮かび上がります。
関税で工場を呼び戻すだけでなく、その工場で誰がどのように働くのか。米国の議論は、人口減少や産業構造の転換が進む日本社会にとっても、無関係ではありません。ニュースをきっかけに、自国の産業と働き方の未来を静かに見直す時間を持ってみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








