トランプ米大統領が南ア大統領に「白人虐殺」陰謀論を提示 会談は異例の緊張 video poster
米国のドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスで南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領と会談した際、南アで「白人虐殺」が進んでいるとする陰謀論を持ち出し、南ア側が強く否定する一幕がありました。この国際ニュースは、人種と政治、そして誤情報が外交に与える影響を考えるうえで重要な出来事となっています。
ホワイトハウス会談で何が起きたか
水曜日にホワイトハウスの大統領執務室(オーバルオフィス)で行われた会談で、トランプ大統領は南アフリカでは白人が標的にされた「虐殺」が起きている、土地が不当に取り上げられていると主張しました。さらに、その根拠だとして動画や印刷した多数の記事を突然取り出したとされています。
通商条件の改善や二国間関係の緊張緩和を期待してワシントンを訪れたラマポーザ大統領は、こうした主張をその場で否定しました。南アでは犯罪が存在するものの、その被害者の大半は黒人であり、白人南アフリカ人が人種差別的な政策のために国外へ逃れているという見方は誤りだと反論しました。
メディアが見た「白人虐殺」陰謀論
複数の米メディアは、このやり取りを「異例の無礼さ」だと伝えています。会談でトランプ大統領が提示した多くの情報は、過去に繰り返し否定されてきたと報じられています。
CNNは、会談で持ち出された陰謀論の「ほとんどすべてがすでに論破されている」と指摘。そのうえで、南アフリカの一部の人々は、これらの情報をアフリフォーラムという白人アフリカーナー系のロビー団体の宣伝だと見ていると伝えました。同団体は白人ナショナリスト的だと批判されているとされています。
土地改革と「白人差別」批判
両国の対立の背景には、南アフリカの土地改革があります。ラマポーザ大統領が今年1月にエクスプロプリエーション法(土地収用法)に署名して以来、トランプ大統領はこの土地改革が同国の白人に対する差別だとたびたび批判してきました。
ここ数か月の間に、トランプ政権は米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)の資金提供を取りやめ、南アでは白人に対する「ジェノサイド(集団殺害)」が進行していると主張してきました。こうした主張は南ア政府が一貫して否定しています。
援助凍結と大使退去で冷え込む関係
今年3月には、米国が当時の南アフリカ大使エブラヒム・ラスール氏を国外退去処分とし、関係悪化に拍車をかけました。退去措置は、ラスール氏がマプングブエ戦略反省研究所が主催したオンライン討論会でトランプ政権について語った後に取られました。
討論会でラスール氏は、トランプ大統領が国内外の権力層に対する攻撃として「優越主義」を動員していると述べています。
南アフリカ政府の反論と「情報戦」への懸念
南アフリカ政府は、トランプ政権による非難に対し、強い言葉で反発しています。同国の国際関係協力省は今年2月の声明で、米国による援助凍結の大統領令について「事実に基づいておらず、南アが経験してきた植民地支配とアパルトヘイトという深い歴史を無視している」と批判しました。
声明はさらに、南アを誤って描き出そうとする偽情報と宣伝のキャンペーンが展開されているように見えると警鐘を鳴らしました。こうした物語が米国の意思決定者の間で支持を得ていることは遺憾だとも述べています。
G20欠席が示すメッセージ
米国のマルコ・ルビオ国務長官は火曜日、南アフリカで年内に開催予定の20か国・地域(G20)首脳会合にトランプ大統領は出席しないと明らかにしました。
ルビオ氏は上院外交委員会の公聴会で、今年のG20を南アが主催するにあたり設定した議題の一部は、現政権の優先事項を反映していないと説明。外務省レベルでも大統領レベルでも参加しない決定は、そうした問題意識によるものだと述べました。
日本の読者への問いかけ
今回の一連の動きは、陰謀論や誤情報が大国の外交判断に影響を与えうること、そしてそれが相手国との信頼関係を大きく損なう可能性を示しています。植民地支配や人種隔離政策という重い歴史を抱える南アフリカにとって、自国の現状が単純化された物語として消費されることは、国内の和解や改革にも影を落としかねません。
日本に暮らす私たちにとっても、遠い国の出来事ではなく、次のような問いを投げかけています。
- 他国についてのニュースやSNS上の言説を、どの情報源に基づいて判断するのか。
- 歴史や社会の複雑さを踏まえずに語られる「分かりやすい物語」を、どこまで鵜呑みにしてよいのか。
- 国際ニュースを読むとき、当事国の声や公式声明にどれだけ目を向けているか。
今回の米南ア関係の緊張は、国際ニュースを読み解く際の情報リテラシーの重要性を、あらためて考えさせる出来事だと言えます。
Reference(s):
Trump confronts South African president with conspiracy claims
cgtn.com







