米国がシリア制裁を事実上解除 トランプ政権の新方針
米国のトランプ政権が、長年続いてきたシリアへの経済制裁を「事実上解除」すると発表しました。内戦で大きな被害を受けたシリア再建に向け、米国がどこまで関与するのか、新たな局面に入っています。
一般ライセンスGL25で何が変わるのか
今月、米財務省は「一般ライセンス25(GL25)」と呼ばれる新たな許可を発行し、これまでシリア制裁規則の下で禁じられてきた多くの取引を認めると発表しました。
声明によると、GL25は次のような主体との取引を包括的に認可します。
- 暫定シリア政府(アフメド・アル=シャラー大統領が率いる政府)
- シリア中央銀行
- 国営企業(石油・ガス関連企業など)
- シリアン・アラブ航空
- ダマスカスのフォーシーズンズ・ホテル など
財務省は、GL25が「シリア制裁規則により禁止されてきた取引を認可し、実質的にシリア制裁を解除するものだ」と説明しています。
「アメリカ・ファースト」と再建支援
この措置について財務省は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」戦略に沿って、新たな投資と民間セクターの活動を後押しする狙いがあると強調しました。トランプ大統領は今月初め、壊滅的な内戦からの再建を支援するため、シリアへの制裁を見直す方針を表明していました。
シーザー法の180日間免除とは
同時に、マルコ・ルビオ国務長官は、対シリア制裁を定めるシーザー法に基づく制裁の一部を180日間停止する免除措置も発表しました。声明によれば、この免除には次の目的があります。
- 投資やインフラ事業が制裁によって妨げられないようにすること
- 電力・エネルギー、上下水道など基礎インフラの整備を可能にすること
- 人道支援活動を円滑にすること
ルビオ長官は「今回の措置は、大統領が描くシリアと米国の新しい関係に向けた第一歩だ」と述べ、トランプ大統領が制裁緩和に続くシリア政府の行動を期待していると強調しました。
トランプ大統領がシリア側に求めた条件
ホワイトハウスによると、トランプ大統領は先週、シャラー大統領と会談した際、制裁緩和と引き換えにいくつかの条件を提示しました。その主なポイントは次の通りです。
- シリア国内にいるすべての外国人戦闘員に対し、撤退を求めること
- トランプ氏が「パレスチナ人テロリスト」と呼ぶ人物の国外退去
- 過激派組織ISIS(「イスラム国」)の再興を防ぐため、米国と協力すること
ルビオ長官は「トランプ大統領は、制裁緩和に続いてシリア政府が具体的な行動をとることを明確に求めている」と述べ、今回の緩和措置が条件付きであることをにじませました。
2011年の制裁とアサド政権崩壊までの流れ
米国による対シリア制裁の多くは、2011年に内戦が始まった際、当時のバシャール・アル=アサド政権と主要幹部を対象に導入されました。その後、長期にわたる戦闘と経済混乱により、シリアのインフラと社会は深刻な打撃を受けました。
そうしたなかで、シャラー氏が率いる民兵組織は12月にアサド政権を打倒し、同氏が暫定政府の大統領に就任しています。
今回のGL25では、かつて「アブ・ムハンマド・アル=ジャウラーニ」という名前で制裁対象となっていたシャラー氏本人も、取引が認められる個人・団体の一つとして明記されています。
シリア再建と地域情勢への影響
米国の制裁が事実上解除されることで、シリアには次のような変化が見込まれます。
- 海外からの投資や貿易の再開が進み、インフラ再建の資金調達がしやすくなる
- 国営企業や銀行が国際金融システムにアクセスしやすくなる
- 航空や観光など民間セクターの活動が徐々に回復する可能性
一方で、制裁緩和は180日間の免除など、時間的にも条件的にも限定されたものです。シリア側が外国人戦闘員の撤退や治安対策でどこまで具体的な行動をとるのか、また米議会や周辺国がこの方針をどのように受け止めるのかは、今後の焦点となります。
内戦後のシリア再建に向けて、「制裁」という手段から「条件付き関与」へと舵を切り始めた米国。今回の決定が、地域の安定とシリアの人々の生活改善につながるのか、引き続き慎重に見ていく必要があります。
Reference(s):
The U.S. issues orders easing Syria sanctions after Trump pledge
cgtn.com








