トランプ政権が学生ビザ新規予約を停止 SNS審査強化で留学生に波紋
米国のドナルド・トランプ大統領の政権が、世界の在外公館に対し、学生ビザと交換訪問者ビザの新規面接予約の受付を一時停止するよう指示しました。SNS(交流サイト)での発信内容を対象にした審査を大幅に拡大する準備とされ、2025年12月8日時点で、海外から米国留学をめざす人々に不安と波紋が広がっています。
学生ビザの新規面接予約を「一時停止」
ロイター通信が入手したとされる国務省内部の公電によると、トランプ政権は各国の米大使館や領事館に対し、学生ビザおよび交換訪問者ビザの新規面接予約を当面停止するよう求めました。対象となるのは、学生・交換訪問者向けのいわゆるF・M・Jビザです。
公電を出したのは、米国務長官のマルコ・ルビオ氏とされています。ルビオ氏は、学生と交換訪問者のビザ申請者に対するSNS審査の指針を見直しており、その結果を踏まえて新たなガイダンスを出す予定だと説明。そのため、それまでの間は、新規の面接枠の設定を止めるよう各公館に求めました。
すでに予約済みの面接については、現行ルールのもとで予定通り実施してよいとされる一方、まだ予約が入っていない空き枠は取り下げるよう指示しています。つまり、今後新たに面接予約を入れたい人は、当面は枠が表示されない、もしくは大幅に限られる可能性があります。
SNS審査拡大で現場の業務も見直しへ
公電では、学生と交換訪問者のビザ申請者に対する「拡大されたSNS審査」を実施するには、領事部門の業務プロセスや人員配置の見直しが不可欠になると指摘しています。SNS上の投稿歴や交友関係を確認するには時間と労力がかかるため、1件あたりの審査負担が重くなることが想定されます。
そのため領事部門には、今後の面接枠の設定では、個別案件ごとの業務量や必要なリソースを慎重に見積もるよう求めています。また、在外公館が限られた人員で運営されていることから、引き続き米国民向けの各種サービスや、移民ビザの審査、不正防止の業務を優先するよう指示が出されています。
国務省報道官のタミー・ブルース氏は、公電そのものの存在についてはコメントを避けましたが、「米国に入国しようとする人が誰なのかを見極めるために、学生であれそれ以外であれ、使える手段はすべて使い続ける」と述べ、徹底した審査姿勢を強調しました。
背景にある「厳格な移民政策」とガザ戦争
今回の動きは、トランプ政権が打ち出してきた厳格な移民政策の一環とされています。政権は近年、国外退去処分(強制送還)の件数を増やし、学生ビザの取り消しなども含めた在留資格の見直しを進めてきました。
とくに、パレスチナ支援やガザ地区での戦闘をめぐるイスラエルの行動への批判が焦点となっています。政権高官は、学生ビザや永住権(グリーンカード)を持つ人であっても、その言動が米国の外交政策に対する脅威になると判断されれば、国外退去の対象になると説明しています。また、パレスチナ支持の行動を「ハマス支持」と結びつけて非難する発言も見られます。
これに対し、トランプ氏を批判する人々は、こうした動きが米国憲法修正第1条で保障される言論の自由への攻撃だと主張しています。とくに大学キャンパスでは、学生や教員が政治的な意見を表明することが伝統的に認められてきたため、移民・ビザ政策がどこまで表現の自由に介入しうるのかが大きな争点になっています。
具体的事例:タフツ大学の学生拘束とハーバードへの圧力
ロイター通信によると、米マサチューセッツ州のタフツ大学に在籍するトルコ(Türkiye)出身の学生は、大学のガザ戦争への対応を批判する論説記事を共著で発表した後、ルイジアナ州の移民収容施設に6週間以上にわたって拘束されました。連邦裁判所の判事が保釈を認めたことで、学生は解放されたとされています。
また先週、トランプ政権はハーバード大学が新たに留学生を受け入れる資格を取り消す動きに出ました。約6800人とされる留学生は、ハーバード全体の在籍者の約27%を占めています。政権側の動きは、米国で最も歴史が長く、資金力も大きい名門大学の財政基盤と国際的評価を揺るがしうるものです。
ハーバード大学は、政権側から求められた大幅な方針転換に対して反発してきたとされ、今回の措置はその姿勢に対する圧力だと見る向きもあります。大学の自治と学問の自由、そして連邦政府による監督権限の線引きが、改めて問われています。
日本を含む海外の留学生への影響
今回のSNS審査拡大と新規面接予約の停止は、特定の国や地域だけを対象にした措置とは説明されていません。そのため、日本を含む世界中の留学生志望者や交換留学生、さらには研究者や短期プログラムの参加者にも広く影響が及ぶ可能性があります。
特に気になるのは、ビザ申請時にどこまでSNS上の活動がチェックされるのか、という点です。公電の内容からは、少なくとも以下のような変化が予想されます。
- SNSアカウントや過去の投稿内容が、これまで以上に詳細に確認される可能性がある
- 中東情勢やガザ戦争、イスラエル・パレスチナ問題に関する投稿が、外交政策との関係で注視される懸念がある
- 審査に時間がかかることで、ビザの発給時期が読みづらくなり、入学・渡航スケジュールに影響する可能性がある
一方で、在外公館は米国民向けサービスや移民ビザ、不正防止業務を優先するよう指示されていることから、非移民の学生ビザ・交換訪問者ビザの審査は後回しになりやすく、面接枠の「取りづらさ」が長期化する可能性もあります。
これから米国留学を検討する日本の学生や社会人にとっては、①ビザ申請のスケジュールに余裕を持つこと、②自らのオンライン上の発信がどのように見られうるかを意識すること、③最新のビザ情報を在日米大使館・領事館などの公式発表で随時確認することが、これまで以上に重要になりそうです。
ビザ制度と言論の自由は両立できるか
トランプ政権は、治安確保や外交政策の維持の観点から、入国審査を含むあらゆるツールを最大限活用すると強調しています。一方で、学生や研究者の在留資格を通じて言論や政治的立場に圧力をかけることは、大学の自治や市民的自由を損なうのではないかという懸念も根強く存在します。
今後、国務省がどのような形でSNS審査の新ガイダンスを公表するのか、そして大学・学生・市民社会がそれにどう向き合うのかが注目されます。米国のビザ政策が、学問の自由と安全保障のバランスをどこに見いだすのか。その行方は、日本を含む世界の留学生や研究者にとっても他人事ではありません。
2025年の年末に向けて、米国への留学を志す人は、単に大学の合否だけでなく、ビザ政策や言論空間の変化も含めて「留学先としての米国」をどう評価するのかを、あらためて考えるタイミングを迎えています。
Reference(s):
Trump administration halts scheduling of new student visa appointments
cgtn.com








