国際ニュース:米国で続く反アジア憎悪 AA/PIの過半数が被害、支援削減の波紋
米国でアジア系や太平洋諸島系の人びとに対する憎悪や差別が依然として深刻であり、その一方で被害者支援に使われてきた連邦政府の資金が大幅に削減されつつあることが、新たな報告書で明らかになりました。
2024年の大統領選挙年、AA/PIの過半数がヘイト被害
米国の市民団体「Stop AAPI Hate」がまとめた年次報告書「State of Anti-Asian American and Pacific Islander (AA/PI) Hate」の第2版によると、アジア系アメリカ人・太平洋諸島系(AA/PI)の成人の53%が、昨年の2024年、大統領選挙で政治的な対立が激しくなった年にヘイト行為を経験したと答えました。2023年の49%から増加しており、反アジア憎悪が根強く続いている実態が浮かび上がります。
ここでいうヘイト行為には、日常生活での差別的な言動や扱いに加え、職場や学校、公共機関などによる制度的な差別も含まれています。
- AA/PI成人の53%が2024年にヘイト被害を経験(2023年は49%)
- 18〜29歳では74%がヘイト行為の被害を経験
- 被害の主な内容はハラスメント(48%)と制度的差別(24%)
若い世代ほど高い被害率
特に深刻なのが若い世代です。18〜29歳のAA/PIのうち、実に74%が何らかのヘイト行為を経験したと答えています。街中やオンライン空間、学校や職場など、生活のあらゆる場面で差別に直面している様子がうかがえます。
報告書によると、最も多い被害は、からかい、侮辱、脅しなどのハラスメントで全体の48%を占めました。次いで、採用や昇進、サービスの提供などで不利な扱いを受ける「制度的な差別」が24%に上っています。
ストレスと不安、広がる心理的影響
ヘイト行為は、単なる一時的なトラブルではなく、心身の健康にも長期的な影響を与えています。
- ヘイトを経験した人の70%が「頻繁なストレス」を感じると回答
- 59%が「頻繁な不安」に悩んでいると回答
- 回答者全体の83%が「米国の人種をめぐる現状に懸念」を示した
多くのAA/PIにとって、ヘイトはニュースの中の出来事ではなく、日々の生活と心身の健康を脅かす現実になっています。
「ここにいる資格はない」と言われる日常
報告書には、個々の体験談も紹介されています。そこでは、政治的な思惑に支えられた反移民感情が、どのように日常のヘイト行為として表れているかが具体的に描かれています。
たとえば、見知らぬ人から出身地や国籍を執拗に問いただされたり、「どこから来たのか」「自分の国に帰れ」などと言われたりするケースです。中には、強制送還をほのめかす脅しを受けたり、露骨な人種差別的な罵倒を浴びせられたりする例も報告されています。
こうした言動は、単なる失礼な発言ではなく、「あなたはここに属していない」というメッセージを繰り返し投げかけることで、被害者の安心感やアイデンティティを深く傷つけるものだと指摘されています。
声を上げられない人が多数、支援も十分届かず
報告書はまた、ヘイト被害を受けても多くの人が声を上げられていない現状も明らかにしました。
- 2024年にヘイトを経験したAA/PIの40%は、家族や友人を含め「誰にも話さなかった」
- 77%は、警察や行政など「公的機関には一度も通報していない」
また、ヘイト被害に遭った人のうち、38%は「支援が必要だったが受けられなかった」と回答。さらに、何らかの支援を受けた人のうち68%は、「少なくとも一つの支援はニーズを満たさなかった」と感じています。
つまり、支援の窓口にたどり着けない人が多いだけでなく、たどり着いても、提供される支援が十分ではないという二重のギャップが存在していることになります。
連邦資金の大幅カットが重なるタイミング
この報告書の公表とほぼ同じタイミングで、米司法省(DOJ)は公共の安全に関する助成金を8億1,000万ドル以上削減する決定を行いました。この助成金は、ヘイトと闘い、暴力を防止し、被害者を支援する数百のコミュニティ組織を支えてきたものです。
削減対象には、Stop AAPI Hateに対する200万ドルの助成金も含まれていました。この資金は、新型コロナウイルスのパンデミック以降、反アジア憎悪と暴力が急増したことを受けて、2年前に議会が拠出を決めたものです。
Stop AAPI Hateの共同創設者であるマンジュシャ・クルカルニ氏は声明で、「新たなデータは、公的機関がAA/PIコミュニティのニーズに応えられていないことをはっきり示しています。それにもかかわらず、私たちのコミュニティを守るために重要な役割を果たしてきた組織への支援を、DOJのような連邦機関が引き下げている」と懸念を表明しました。
サンフランシスコを拠点とする同連合体は、こうした資金削減について「トランプ政権による違法な資金カット」であり、AA/PIの安全とウェルビーイングを脅かす人種差別や外国人排斥と闘う上で、「不当であるだけでなく、きわめて逆効果だ」と強く批判しています。
日本の読者にとっての問いかけ
今回の報告書は米国社会の現状を伝えるものですが、同時に、日本に暮らす私たちにも問いを投げかけています。移民やマイノリティに向けられる視線、オンライン上の言葉、困っている人が支援にアクセスできる仕組みは十分かどうか――。
数値や事例が示すのは、ヘイトが「個人の問題」ではなく、政治的な言説や制度とも結びついた社会全体の課題だということです。差別や排除を容認しない社会をどうつくるのか。米国でAA/PIが直面している現実は、日本を含む世界各地で共有されるテーマを浮かび上がらせています。
Reference(s):
Anti-Asian hate persists in U.S. as federal support funding slashed
cgtn.com








