WHO「ガザのアル・アマル病院は事実上機能停止」 深まる医療危機
ガザ南部の重要な医療拠点であるアル・アマル病院が、激しい軍事活動の影響で「事実上、機能していない」状態にあると世界保健機関(WHO)が2025年6月に明らかにしました。集中治療室を持つ病院がほぼ失われる中で、重症患者の行き場が急速に狭まり、人道危機の深刻さがあらためて浮き彫りになっています。
アル・アマル病院に何が起きているのか
アル・アマル病院は、パレスチナのガザ地区で今も稼働している数少ない病院の一つとされてきました。しかし、2025年6月初旬、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、この病院が「激しい軍事活動」により「事実上、サービスを提供できない」状況に追い込まれているとX(旧Twitter)に投稿しました。
テドロス事務局長によると、病院へのアクセスが妨げられ、新たな患者がたどり着けない状態が続いています。その結果、本来なら適切な治療を受ければ助かったかもしれない「予防可能な死」が増えていると訴えました。
- 病院周辺の軍事活動でアクセスが遮断
- 新規患者の搬送が難しく、治療機会を失うケースが増加
- 「予防可能な死」が拡大しているとWHOが懸念
残された集中治療はナセル医療センターのみ
アル・アマル病院が事実上機能停止となる中、ガザ南部ハンユニスで集中治療室(ICU)を持つ施設は、ナセル医療センター(ナセル医療コンプレックス)のみになったとテドロス事務局長は指摘しています。
現地では、2つの救急医療チームが、限られた物資のもとで活動を続けています。1つは地元の医療チーム、もう1つは国際的な医療チームで、病院に残された患者のケアに全力を尽くしているとされています。しかし、医薬品や医療資材が極端に不足する中で、その活動には大きな制約がかかっています。
ガザ南部では、2025年6月9日、ナセル病院近くの地域が攻撃を受け、周辺から煙が立ち上る様子も報じられました。医療施設周辺での攻撃は、患者や医療従事者の安全だけでなく、地域全体の医療体制にも直接的な打撃となります。
封鎖と物資不足が続く医療現場
WHOは6月5日の時点で、ナセル医療センターとアル・アマル病院が、押し寄せる負傷者を十分に治療できていないと警告していました。その背景として、2カ月にわたる完全封鎖により、医薬品や医療物資が深刻に不足していたことを挙げています。
封鎖が長期化すれば、手術に必要な薬剤や輸血、集中治療に欠かせない機器の部品など、あらゆるものが足りなくなります。応急処置だけでなく、慢性疾患の治療や出産など、日常的な医療行為も滞りやすくなり、医療ニーズは雪だるま式に膨れ上がります。
報道によると、イスラエル当局はその後、一部の人道支援物資の搬入を認めていますが、必要とされる規模にはほど遠い量にとどまっているとされています。医療用の物資や燃料など、病院の機能維持に不可欠な支援がどこまで確保できるかが、大きな焦点となっています。
現場で奮闘を続ける医療チーム
アル・アマル病院には、地元と国際社会から派遣された2つの救急医療チームが残り、限られた資源で患者の治療を続けています。テドロス事務局長は、彼らが「病院敷地内に残されたわずかな医療物資を使いながら、残っている患者のために最善を尽くしている」と投稿しました。
医療スタッフは、自身も危険にさらされながら、通常なら複数の専門チームや充実した設備が必要な重症患者を、最低限の器具と薬だけで支えています。こうした状況では、誰を優先して治療するのかという重い判断を迫られる場面も少なくありません。
私たちが考えたいポイント
ガザの医療危機を巡る今回のWHOの発信は、単に一つの病院の問題にとどまりません。紛争地で医療が機能不全に陥ると、戦闘による負傷者だけでなく、持病を抱える人や妊産婦、子どもたちなど、社会の最も弱い立場に置かれた人々が真っ先に影響を受けます。
- 医療施設と医療従事者をどう守るべきか
- 封鎖や物資制限が「予防可能な死」を生まないために、国際社会は何ができるか
- 現場で奮闘する医療スタッフを、情報面・支援面からどう支えるか
ガザで何が起きているのかを知ることは、遠く離れた私たちにとっても、紛争と人道危機にどう向き合うかを考えるきっかけになります。ニュースを追いながら、自分なりの問いを持ち続けることが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








