米国株、小幅安 インフレ鈍化と中国・米国の貿易協議を消化
米国株式市場は米国時間の水曜日、小幅安で取引を終えました。予想を下回る2025年5月分のインフレ指標と、中国と米国の貿易協議の行方を投資家が同時に織り込みながら、慎重な取引となりました。
主要3指数はそろって反落、値動きは限定的
ダウ工業株30種平均は前日比1.10ポイント安の42,865.77と、ほぼ前日終値水準で引けました。S&P500種株価指数は16.57ポイント(0.27%)安の6,022.24、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は99.11ポイント(0.50%)安の19,615.88と、いずれも小幅ながら反落しています。
セクター別では、消費関連株(コンシューマー・ディスクリーナリー)が1.02%安、素材株が0.98%安と下げを主導しました。一方で、原油価格の上昇を背景にエネルギー株は1.49%高と堅調で、ディフェンシブと呼ばれる公益事業株も0.05%高と小幅ながら上昇しました。
予想下回るインフレ、CPIが示したもの
この日の取引序盤、米労働省が発表した2025年5月分の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことを受けて、株価は一時上昇しました。総合CPIは前月比0.1%上昇と、市場予想の0.2%上昇を下回る伸びにとどまりました。
変動が大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは、前年同月比で2.8%上昇と4月から横ばいでした。前月比でも0.1%上昇と、4月の0.2%から伸びが鈍化しています。インフレの勢いがやや落ち着きつつあることを示す内容と言えます。
米銀大手バンク・オブ・アメリカの米国担当エコノミスト、スティーブン・ジュノー氏はリポートで「堅調な5月の雇用統計と今回のCPIを組み合わせると、厄介なスタグフレーション(景気停滞とインフレ高進が同時に起こる状態)に陥るリスクは低下した」と評価しました。
一方で、米エコノミストのクラウディア・サム氏は米メディアのインタビューで「今回のインフレ指標だけでは、年末時点でインフレがどこまで落ち着いているかはまだ判断できない」と慎重な見方も示しています。そのうえで、トランプ政権の現在の通商政策の経済への影響は、なお進行中だと指摘しました。
利下げ観測がじわり 国債利回りは低下
インフレの伸び鈍化を受けて、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利下げに踏み切るとの観測がやや強まりました。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出するFedWatchツールによると、9月の利下げ確率は前日の53.5%から57.2%へと上昇しました。
金利観測の変化を受けて米国債市場では買いが入り、10年物国債利回りは4.41%まで低下しました。一般的に、利回りの低下は借り入れコストの低下期待につながり、株式市場にとって追い風となりやすい一方、今回の株式の反応は限定的でした。
中国・米国の貿易協議、市場の反応は限定的
同じ日には、ロンドンで行われていた中国と米国の貿易協議が終了しました。協議は「前向きな一歩」とも受け止められましたが、具体的な合意内容が明らかになっていないこともあり、市場の反応は総じて落ち着いたものにとどまりました。
投資家の間では、インフレと金融政策の行方に加え、中国と米国の貿易関係が世界経済や企業業績に与える影響を慎重に見極める姿勢が続いています。
ハイテク株に売り、半導体は明暗
個別銘柄では、時価総額の大きい「メガテック」と呼ばれるハイテク株が総じて軟調でした。アップルとアマゾン・ドット・コムはいずれも約2%下落し、エヌビディア、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、メタ・プラットフォームズもおおむね1%前後の下げとなりました。
半導体関連では明暗が分かれています。半導体大手ブロードコムは3.38%高と買われた一方、インテルは6.46%安とS&P500採用銘柄の中で下落率トップとなり、前日に記録した大幅高のほとんどを失いました。競合のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も、翌日に予定されている自社のAI関連イベント「Advancing AI」を前に1.7%安と調整しました。
このほか、マイクロソフトとテスラは小幅高にとどまり、ハイテク全体としては利益確定売りに押される展開となりました。
日本の投資家にとってのチェックポイント
今回の米国株の動きは小幅にとどまりましたが、インフレと金融政策、そして中国と米国の貿易協議という3つのテーマが、今後も世界の市場を左右することを改めて示しています。日本から米国株や投資信託を通じて投資している人にとっても、注目すべき材料が多い局面です。
今後を見通すうえで、特に意識しておきたいポイントは次のとおりです。
- インフレ指標:CPIや雇用統計など、FRBの判断材料となる経済指標がどの方向に向かっているか。
- FRBのスタンス:利下げのタイミングや回数に関する市場の織り込みと、FRB高官の発言の変化。
- 中国・米国の貿易協議:ロンドンでの協議後、関税や規制をめぐる政策がどのように具体化するか。
- ハイテク・半導体株:生成AI(ジェネレーティブAI)関連需要を背景にした成長期待と、足元のバリュエーション(株価水準)のバランス。
インフレ鈍化は株式市場にとって追い風となり得ますが、貿易政策や地政学的な要因など、不確実性はなお残っています。短期的な株価の上下に振り回されすぎず、どの要因が長期的な企業価値に影響するのかを意識してニュースを追うことが、これからの投資判断に役立ちそうです。
Reference(s):
U.S. stocks dip as investors weigh inflation, China-U.S. trade talks
cgtn.com








