トランプ米大統領の州兵動員に待った カリフォルニアと連邦政府の攻防
移民取締り強化への抗議が続くアメリカで、トランプ米大統領がカリフォルニア州の意向に反して州兵を動員した問題をめぐり、連邦地裁が「州に指揮権を戻せ」と命じる仮処分を出しました。州と連邦、そして司法の力関係が改めて問われています。
ロサンゼルスに約4000人を動員、何が問題視されたか
発端は、移民政策の強化に抗議するデモがロサンゼルスで激しさを増していたことでした。トランプ米大統領は、カリフォルニア州兵と米海兵隊あわせて約4000人をロサンゼルスに展開させるよう命じました。
通常、州兵は各州知事の指揮下にありますが、連邦法に基づいて「連邦化」されると、大統領が指揮を執ることができます。今回のケースについて、サンフランシスコの連邦地方裁判所のチャールズ・ブライヤー判事は、トランプ氏の動員は合衆国憲法修正第10条(州に権限を留保する規定)に反し、大統領に与えられた法的権限を逸脱していると判断し、州に指揮権を戻すよう一時的な差し止め命令(仮処分)を出しました。
カリフォルニア州の反発:州兵を「移民摘発」に使うな
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、州の同意なしに州兵を連邦レベルの移民取締りに使うことに強く反発し、動員の差し止めを求めて連邦政府を提訴しました。その後、州は緊急の申し立てを行い、州兵が移民摘発の現場で連邦当局を支援すること自体を禁じるよう裁判所に求めました。
ニューサム知事側が重視したのは、次のような点です。
- 州兵は本来、治安維持や災害対応など、州レベルの任務にあたる部隊であること
- 連邦政府が一方的に州兵を移民取締りに動員すれば、州の自治権が侵害されかねないこと
- 移民政策をめぐる対立が、街頭の抗議や社会の分断をさらに深める懸念があること
連邦政府の論理:大統領の裁量に司法は介入できるか
サンフランシスコで行われたおよそ1時間の審理で、米司法省の弁護士は「州兵や海兵隊の展開に関する大統領の判断は、裁判所が後から口を出すべきものではない」と主張しました。連邦法の執行、とりわけ国境管理や移民取締りは連邦政府の中核的な権限であり、大統領には治安維持のため広範な裁量があると位置づけた形です。
この主張の背景には、「安全保障に関する判断は選挙で選ばれた行政府トップに委ねるべきだ」という考え方があります。一方で、こうした主張が無制限に認められれば、州や市が自分たちの意思に反する軍事・治安措置を受け入れざるをえなくなる危険も指摘されています。
ブライヤー判事の判断:違法性を指摘しつつも慎重姿勢
ブライヤー判事は、州兵を連邦化できる条件を定めた法律の要件を、トランプ米大統領が満たしているかどうかに強い疑問を示しました。その一方で、「軍隊が実際に連邦法の執行に直接関わっている」という明確な証拠がない段階で、軍による法執行を全面的に禁じる命令を出すことには慎重な姿勢も見せました。
結果として、判事はカリフォルニア州に州兵の指揮権を戻すよう命じる一方、その命令の効力を翌日の正午までいったん停止し、連邦政府側が控訴できる時間的余地を残しました。米紙ニューヨーク・タイムズは、この仮処分を「トランプ氏による数千人規模の州兵展開計画に対する鋭い批判だ」と評し、全米で1週間近く続く政治的対立や抗議行動の象徴的な出来事だと伝えました。
6月20日の公判と控訴審、今後の焦点は
連邦地裁は、今回の制限を恒久的なものにするかどうかを判断するため、当時、6月20日に本格審理を行う予定としました。トランプ政権は判決直後に第9巡回区控訴裁判所への控訴を申し立てました。
この一連の動きは、次のような論点を投げかけています。
- 移民政策をめぐる対立が、州と連邦の関係をどこまで揺るがしうるのか
- 治安維持やデモ対策に軍や州兵を用いる政府の判断を、司法はどこまで制約できるのか
- 政治的な分断が深まる中で、憲法や法律のルールをどのように共有していくのか
日本から見ると、アメリカ国内の問題に見えるかもしれません。しかし、移民政策や治安対策をめぐる緊張は、多くの国で共通するテーマでもあります。今回の事例は、「安全」と「権利」のバランスをどう取るのかという問いを、私たち自身に静かに投げかけているといえます。
Reference(s):
Judge orders Trump to return control of National Guard to California
cgtn.com








