カンボジアとタイ、国境問題で「前向き」協議 共同調査で緊張緩和へ
カンボジアとタイが、国境問題をめぐる共同委員会の会合を終えました。両国は「オープンで前向き」と表現される雰囲気の中で協議を行い、共同調査チームの派遣など今後の具体的な進め方で合意しました。一方で、4カ所の係争地の扱いをめぐっては、国際司法裁判所(ICJ)と二国間協議という二つのアプローチの違いが浮き彫りになっています。
国境問題を話し合う合同国境委員会とは
今回開かれたのは、カンボジアとタイの合同国境委員会(Joint Boundary Commission=JBC)の会合です。会合は首都プノンペンで2日間にわたって行われ、カンボジア側は国境問題を担当する国家国境事務局の大臣ラム・チェア氏が、タイ側は外務省顧問のプラサス・プラサスウィニッチャイ氏が、それぞれJBC議長として共同議長を務めました。
両国政府が発表した声明によると、会合は友好的で理解に満ちた雰囲気の中、「オープンで前向きな議論」の精神で行われたとされています。国境線の画定という、時間も労力もかかる課題について、対話の枠組みが機能していることを示すメッセージといえます。
共同調査チームを派遣へ:現場で国境線を確認
今回のJBC会合で両国が合意した大きなポイントが、共同調査チームの派遣です。発表によると、カンボジアとタイは、すでに合意済みの国境標識の位置を実際の現場で確認し、そのラインに沿って国境を引き直すための共同調査を行うことで一致しました。
タイ外務省は別の声明で、JBCが国境画定の進展と国境付近の緊張緩和に大きな役割を果たしていると評価し、今回の会合を「タイ・カンボジア間の国境画定の進捗を示す重要な節目」と位置付けています。タイ側は、今後の特別JBC会合を9月にタイで開催する計画だと当時の声明で示しました。
4カ所の係争地はICJへ? アプローチが分かれる両国
一方で、今回のJBC会合では、カンボジアとタイの間で争いが続く4カ所の国境地域については議題になりませんでした。この点は、今後の大きな焦点となりそうです。
カンボジア側は会合と同じ日付で、4カ所の係争地をめぐる問題について国連の国際司法裁判所(ICJ)に付託するよう求める正式な書簡を提出しました。ラム・チェア氏はタイ側に対し、この案件をICJに共同で付託するよう呼びかけましたが、タイが応じない場合でも、カンボジア単独で手続きを進める考えを示しています。
これに対し、タイ外務省の報道官ニコーンデート・バランクーラ氏は記者会見で、タイはICJの強制管轄権をこれまで一度も認めていないと改めて説明しました。そのうえで、「既存の二国間メカニズムと外交的な話し合いこそが、問題を解決する最も効果的で適切な手段だ」と強調し、ICJではなく二国間協議の枠組みでの解決を重視する姿勢を示しました。
つまり、カンボジアは国際裁判所を通じた法的な決着を模索し、タイは二国間の話し合いによる解決を重視するという構図が浮かび上がっています。どちらのアプローチが主導権を握るのかが、今後の大きなポイントです。
5月の銃撃事件を受けた協議:最前線の緊張緩和へ
今回のJBC会合は、今年5月28日に国境付近で発生した両国兵士による銃撃の後に開かれました。この銃撃は短時間で収まりましたが、カンボジア側の兵士1人が死亡する結果となりました。
国境線が完全に画定していない地域では、日常的なパトロールや誤解、小規模な衝突が大きな政治問題に発展するリスクがあります。今回のように共同調査チームを派遣し、標識や線引きを現場で確認していく作業は、現地での偶発的な衝突を避けるうえでも重要です。
読者が押さえておきたい3つの視点
今回のカンボジア・タイ間の国境協議をめぐって、読者として押さえておきたいポイントを3つに整理します。
- JBCは「緊張を管理する装置」でもある
JBCは単なる技術的な委員会ではなく、国境で起きる緊張や事件が拡大しないよう管理する役割も担っています。対話の枠組みが機能していることは、国境地域の安定にとって意味があります。 - ICJか二国間協議か:解決ルートをめぐる違い
カンボジアはICJを通じた法的な解決を求め、タイは二国間の協議メカニズムを重視しています。どのルートを選ぶかは、単なる法技術の問題ではなく、主権や外交戦略に関わる選択でもあります。 - 「現場」と「外交」をどう結びつけるか
国境での発砲という現場レベルの緊張と、JBCやICJといった外交・法的枠組みは、本来一体で考える必要があります。最前線での小さな火種をどう抑えつつ、長期的な国境画定を進めるのか——そのバランスが東南アジアの地域安定にも影響しうるテーマです。
カンボジアとタイの国境問題は、一見すると遠い地域のニュースに思えるかもしれません。しかし、国境線の引き方や紛争解決の方法は、多くの国や地域に共通する課題でもあります。今後のJBCの議論や、ICJへの付託の行方を追うことは、国際秩序や紛争解決のあり方を考えるうえでも、重要なケーススタディとなりそうです。
Reference(s):
Cambodia, Thailand conclude 'open, positive' talks over border issues
cgtn.com








