トランプ氏がG7サミットを前倒し退出 イスラエル・イランと通商で浮かぶ溝
2025年6月にカナダ・アルバータ州カナナスキスで開かれたG7首脳会議で、米国のドナルド・トランプ大統領が予定より1日早く帰国しました。イスラエルとイランの緊迫した情勢と通商問題をめぐり、主要7カ国(G7)の足並みの乱れが改めて浮き彫りになった形です。
イスラエル・イラン情勢でG7の温度差
サミットは本来週末から始まる予定でしたが、2日間の日程に短縮され、6月16日(月)に公式開幕しました。その初日、トランプ大統領は当初の予定より早い月曜夜にワシントンへ戻ると表明しました。理由として挙げたのが、イスラエルとイランの間で激しさを増す紛争です。
トランプ氏は「すぐに戻らなければならない。とても重要だ。皆さんも状況を見ているだろう。できるだけ早く戻らなければならない」と述べ、サミットを切り上げる判断を正当化しました。
一方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、英国のキア・スターマー首相ら欧州の首脳は、中東情勢、とりわけイスラエルとイランをめぐるG7としての共通の立場を取りまとめたい考えでした。
米CNNによると、トランプ氏はイスラエルとイラン双方に自制を促す「緊張緩和」を呼びかける共同声明への署名に難色を示し、応じなかったとされています。これにより、サミットの初日から首脳間の分断が鮮明になりました。
EU首脳は「イスラエルの自衛権」と「イランの核保有阻止」を強調
サミット開幕前の日曜夜には、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と欧州理事会のアントニオ・コスタ議長が共同記者会見を開きました。二人は、イスラエルには自らを守る権利があること、そしてイランが核兵器を保有することは認められないという姿勢を改めて示しました。
こうした欧州側のメッセージと、共同声明への署名を見送ったトランプ氏の対応とのギャップは、イスラエル・イラン情勢に対するG7内のアプローチの違いを象徴するものです。中東の安全保障はエネルギー供給や世界経済にも直結するテーマであり、その扱い方をめぐるG7の足並みは、2025年を通じて注目される論点になりました。
通商問題でも対立 カナダとの「異なるコンセプト」
今回のG7サミットでは、中東情勢だけでなく、通商問題もトランプ大統領との協議の中心となりました。カナダのマーク・カーニー首相との会談後、米加間の安全保障と貿易をめぐる包括的な枠組みについて記者団から問われたトランプ氏は、「保留されているわけではない。単に『異なるコンセプト』があるだけだ」と述べました。
トランプ氏は「私には関税のコンセプトがあり、マークには別のコンセプトがある。きょう中にその核心を探ってみる」「マークの案はより複雑だが、とても良い案でもある。両方を検討し、どのような結論になるか見ていきたい」と語り、関税を軸とした自身の通商観をにじませました。
ここでも、単一の合意文書を重視するG7的な合意形成より、二国間交渉を通じて自国の条件を引き出そうとするトランプ政権のスタイルが際立ったと言えます。
英国とは二国間通商協定を正式合意
一方でトランプ氏は、英国との二国間通商協定については成果をアピールしました。この協定は5月に概要が発表されていたもので、今回のG7サミットの場で正式に妥結したとされています。
新たな米英通商協定は、双方の幅広い品目にかかる関税を引き下げる内容とされ、トランプ氏は「多くの雇用と多くの所得を生み出す」と強調しました。G7という多国間の枠組みの場で、あえて二国間協定の実績を示すことにより、トランプ政権が重視する「ディール」(取引)の政治スタイルを国内外に印象づけた形です。
ロシアのG8復帰をめぐる発言
トランプ氏はまた、かつてG8の一員だったロシアが排除されたことについて、「ロシアをG8から外したのは間違いだった」と述べました。さらに、もしロシアが席を外されていなければ、ウクライナでの紛争は起きていなかったかもしれない、と示唆しました。
ロシアの扱いをめぐるトランプ氏の発言は、過去にも国際的な議論を呼んできましたが、今回もG7の今後の対ロシア戦略をどう考えるのかという問いを改めて突きつけるものとなりました。
議題は「世界経済」と「エネルギー安全保障」に集約
カナナスキスでの2025年G7サミットは、当初想定されていた日程や議題を見直し、「世界経済」と「エネルギー安全保障」に優先的に焦点を絞ったスリム化されたアジェンダが日曜日に公表されました。サミット自体も2日間に短縮され、月曜日に正式にスタートしました。
しかし、現実にはイスラエル・イラン情勢、米国が主導する通商交渉、そしてロシアの位置づけなど、複数の難題が首脳会談の空気を左右しました。トランプ氏の早期帰国という予想外の展開は、G7が直面する課題の重さと、米国の動きが国際協調に与える影響力の大きさを改めて示したといえます。
2025年のG7が投げかける問い
イスラエルとイランの対立は、中東地域の安全保障だけでなく、エネルギー市場や世界経済の安定にも直結する問題です。また、米加・米英の通商交渉は、ルールに基づく多国間貿易体制と、関税や二国間協定をテコにした交渉型の通商政策とのせめぎ合いを映し出しています。
2025年6月のG7サミットは、こうしたテーマに対する主要国のスタンスの違いを表面化させました。トランプ大統領の前倒し退出と共同声明への不参加は、その象徴的な出来事だったと言えるでしょう。
今後、G7がどこまで結束を保ちつつ、中東情勢やエネルギー安全保障、通商ルールの再構築といった課題に向き合っていくのか。2025年のカナナスキス・サミットは、その行方を占う一つの試金石となりました。
Reference(s):
Trump leaves G7 summit early, splits emerge on Israel-Iran and trade
cgtn.com








